(さわやかや/やけどのあとが/きえている)
ある日、親戚の家に行った時、叔母がテーブルに菓子を出して「沢山お食べ」と私に言ったそうだ。私は、咄嗟にそのお菓子を掴んだ。その時、満州の軍隊帰りの父が私の腕を掴み、「一番最初に手を出すものではない」と言って、私の手の甲にタバコの火を押し付けたそうだ。たぶん3,4才の頃だろう。
この話は、幾度となく母から聞いたもので、記憶にないし、傷痕もない。
今になって思うと、こうやって今日まで、私がなんとかやって来れたのは、あの時の父の「タバコの火」のお陰ではなかったか。
マツムシソウ(松虫草)