(あきばれを/とほうにくれて/すなはま)
高校時代に読んだものの中で、強い印象を受けた一つは、ヘルマンヘッセの「シッダールタ」だろう。
お釈迦様の悟りの世界を、フランス人の小説から知る、というのも面白い。それからは、東洋哲学や禅などの本を手当たり次第に読んではみたが難し過ぎて、ヘッセ以上に分ることはなかった。
何が分かったかと言うと、「自分は、俗世間に生きていて、自分は俗物である」ということ。別の意味では、「俗物であることが自慢になった」とも言える。
そして、そういう悟りの世界がこの世にある、ということを知ったことが、生きる上に心強い励みになった、と言える。
この句は、生きることに全く自信のなかった20才の私が、石川県の羽咋(はくい)の浜をとぼとぼ歩いている、回顧の句だ。打ちつける波や砂の感触は、今でも鮮明に記憶している。
紅くなり始めたドウダンツツジ(満天躑躅)