香西かおりさんはある意味で不思議な歌手という感じがします。一見、そんなにすごい歌唱力があるようにも、また声量があるようにも思えません。しかしながら、彼女ほど微妙な女性の感情をうまく表現できる歌手も他にそういないのではないでしょうか。
私の勝手な主観ではありますが、彼女の表現力にマッチした曲はすばらしく輝き、ミスマッチの曲は凡作に聴こえてしまいます。例えば「流恋草」はミスマッチと思いますが、個人の好き嫌いにつき、お好きな方は気になさらないでください。
さて、この4月発売の新曲は、彼女にぴったりマッチした素敵な曲です。しゃれたポップス感覚で、ちょっと斜に構えたような女心の表現がいいと思います。締めくくりのフレーズに「人ぞ恋しき」と文語文を持ってきているのが心憎いばかりです。これは昔に古典の授業で習った係り結びというやつで、口語文では失われてしまった日本語の表現技法です。
もともと演歌歌手の枠に納まりきらない魅力を持つ香西さんですが、この曲でますます輝きを増したように感じます。