社会を見て、聞いて、感じる。

人生そのものがフィールドワーク。

8月15日(水) 娘のハーフバースデー

2018年09月11日 21時34分22秒 | 2018年

 朝、妻から「今日はちーちゃんのハーフバースデーだよー」と言われた時は、一瞬「?」となった。そうか、生後半年のお祝いもするものなのか。

 確かに、赤ちゃんにとっての半年間は成長に次ぐ成長で溢れている。体重は倍増するし、手合わせ、寝返り、ハイハイ、お座り、つかまり立ちというように、色々なことが出来るようになる。離乳食も始まり、どんどん色々なものが食べられるようにもなる。感情表現も見る見るうちに豊かになっていくし、自我の芽生えも感じられるようになる。最近は動きも活発になり、おむチェン(私はおむつ交換のことをこう呼んでいる)や入浴の時に随分苦労するようになった。そして、こうした成長や変化の全てを目の前で体感できることが、本当に幸せだと感じる。

ようやく寝返りが出来るようになった頃。ベビーベッドで横を向き、テレビを見ている。

うつぶせ状態から首、手、足を上げられるようになった。力がついてきた証拠だ。

ずりばいで自由に動き回れるようになり、色々なものに興味を持つようになった。

ベビーサークルを購入。おもちゃ遊びもするようになる。ちなみに、現在はこの倍くらいの広さにしたが、それでも不満そうだ。

何をしているのかと思いきや…

テレビをご覧になっているのですか。

では、一緒に見ますか。

ちゃんとしたハイハイが出来るようになってきたと思ったら、もうつかまり立ち開始。危なくて目が離せなくなる。

手も足も、だいぶ大きくなりました。そういえば、前歯も上下生えてきました。

 ハーフバースデーのお祝いに、妻が離乳食でケーキ(っぽいもの)を作った。朝からごそごそやっているなと思ったら、随分とクオリティの高いものが出てきて驚かされる。ご飯、人参、小松菜で作られているとは思えない。ちなみに、最近は魚や鶏肉、小麦も無事にクリアして、残るは卵と牛乳である。この2つが大丈夫なら、食物アレルギーで大きく困ることはないのだが、どうだろうか。

寝室の壁を飾って記念撮影。漆喰の白さで、スタジオで撮ったかのようだ。塗っておいて良かった。

 自分が子どもを持つまでは想像も出来なかったことなのだが、我が子の成長というのは、どんなに些細なものであっても、とてつもなく大きな喜びをもたらしてくれる。例えば、初めて両手を合わせた時。それまでほぼ意思とは関係なく動いていた右手と左手が初めてリンクし、自分の身体の一部であることが理解できた瞬間の娘の表情、組んだ両手をまじまじと見つめる瞳。その様子を見たときの私の感動は、未だに鮮明に覚えている。おそらく、以前の私なら「は?それが?」と思うだろう。無理もないことだ。しかし、そんな小さなことがもたらす喜びが、格別なのだ。先々どう思うか、未来のことはわからないが、少なくとも現時点では、子どもを持ったことは大正解だったと思っている。あと、育休を取ったことも。


漆喰塗り(7月下旬から8月上旬にかけて)

2018年09月10日 23時17分07秒 | 2018年

 新横浜の新居に引っ越してから、1階の寝室(和室)とトイレの壁の古さがどうにも気になっていた。寝室は京壁といわれる昔の和室によくあったタイプの壁で、別に崩れているとかいうわけではないものの、何か所か黒ずんでいるところがあって、子どもが寝る場所だし何とかしたいなと思っていた。トイレは繊維壁といわれる種類の壁で、見た目もごちゃごちゃして気持ち悪いし、築39年分の臭いが浸みこんでいて不潔な感じがしていた。

 そこで、この2カ所の壁に漆喰を塗ることにした。まず、ネット上で素人でも濡れそうな漆喰素材を探したところ、「漆喰うま~くヌレール」という商品を見つけた。そして、その製造販売元である日本プラスター株式会社がやっている無料の漆喰教室(@上野)に参加して、漆喰の基本的な性質や具体的な塗り方を教えて頂いた。出来映えにどれだけこだわるかにもよるが、自分でも十分出来そうな感じだ。

 さっそく上記商品と必要な備品(こて、こて板、小さなヘラ、養生関係一式など)を購入して、寝室から塗り始める。とはいっても、塗る以前の段階で、部屋全体を養生するのに1日掛かった。その後も下塗りで1日、本塗りで2日と、合計で4日間を費やした。普通に集中してやれればもっと早く出来るのだろうが、妻と交互で娘の面倒を見ながらの作業なので、どうしてもスローペースになる。ただ、作業自体は慣れてしまえば簡単だし、何より楽しい。集中し過ぎて、気付いたら2時間くらいは平気で経っている。養生が甘くて柱が白くなっちゃったとか、畳に漆喰が落ちちゃったなんていうトラブルもありつつも、自分たちとしてはかなり満足のいく出来上がりとなった。

ビフォー(養生後)。

こんな感じで端っこから塗っていきました(下塗り)。

こちらは本塗り。

無事に終了。

アフター(養生撤収後)。

 トイレのほうは空間が狭いので大変で、私では身体が入らなくて手が届かないところが多く、妻が大活躍だった。おかげで、トイレの臭いも何となくじめじめした感じもなくなり、かなり清潔感が増した。ちなみに、こちらも養生から数えると4日掛かった。寝室に比べて塗る面積はかなり小さくなったものの、やはり難易度がかなり高かった分、時間は同じくらい掛かったのだ。 

 結論としては、自分で漆喰を塗ったのは大正解だった。職人さんにお願いするのに比べたらコストはかなり抑えられたし、楽しかったし、出来映えも満足のいくものになった。部屋は明るくなり、心なしか空気も良くなった気がする。特にトイレの効果は一目瞭然で、こんなに一変するのかと驚いた。寝室で娘が壁にすりすりしても気にならなくなったのも大きい。この調子で2階の使っていない和室もやってしまおうかとも思ったのだが、妻から止められたので、ペンディングにしている。確かに、いくらリーズナブルとはいっても漆喰もタダではないので、実際に使うことになってからでもいいだろう。

 ちなみにこの家は賃貸だが、大家さんからは「屋根と外壁以外は自由にDIYして構わない」と言って頂いている。普通の賃貸物件でこんなことをしたら大問題になると思うので、その点はご留意あれ。


7月30日(月)

2018年09月02日 19時57分07秒 | 2018年

 7時起床。温泉で汗を流してから、朝食。てっきりバイキングだろうと思っていたら、きちんとした洋定食だった。しかも、美味しい。スクランブルエッグも注文をしてから作ってくれたし、パンもスープも美味しい。これは嬉しい想定外だ。こういう朝ご飯を食べられると、朝から幸せな気持ちになれる。

 10時前にチェックアウトし、昨日に引き続いてビッグレッドファームへ伺う。その少し手前の放牧地で、ここもビッグレッドファームの敷地なのだと思うのだが、1歳馬たちが放牧されていた。車を止めて近づいてみると馬たちもすぐに寄ってきて、ちょっかいを出してくる。人間でいえばまだ幼稚園児くらいだから、好奇心が強く、人見知りもあまりない。私が離れようとすると甘え鳴きをして、離れてからもしばらくその場に留まってこちらを見ていた。本当に可愛い。もうすぐ競走馬としての本格的な訓練が始まると思うから、頑張ってね。どうか、まずは無事にデビュー戦を迎えられますように。

 ビッグレッドファームでは、これまでには誰もいなかった場所(放牧地)に馬がいた。1歳馬よりは大きいし、若い感じがするし、繁殖牝馬を外部の人間が入れるところに放牧するとは考えにくいとなると、デビューを控えた2歳馬ではないだろうか、というのが私の予想である。何となく、現役の競走馬に見られる気性の荒さもあるように思えたのだ。実際のところはどうなのだろう。

 いつもの放牧場では、今日もロサードとコスモバルクだけが放牧に出ていた。君たちは本当に外が好きなんだね。でも、相変わらずコスモバルクは虫と格闘していた。馬にも虫よけスプレーが使えればいいのだが。

 移動中、とある牧場で母馬ととねっこ(今年生まれた0歳馬)が仲良く放牧に出ていた。親子がぴったりと寄り添っていて、とねっこたちは草を食むだけでなく、たまにお母さんのお乳も吸っていた。とても微笑ましい光景で、いつまでも見ていたかった。競走馬が母馬と一緒に過ごせる期間は本当にわずかだから、この時間を大切に過ごしてほしい。

 カフェ「BENCH TIME」で休憩。ちなみに、このお店は昨晩訪れた「焼きとんひだか」のお隣にある。天然酵母と地元の新鮮な牛乳で作ったパンが有名なようなので、そのトーストをアイスミルクとのセットで頂く。さくさく感強めのトーストはマイルドな甘みも感じられて、りんごジャムとの相性も良い。素直に、美味しいと思えるトーストだ。セットドリンクに牛乳を選んだのも正解だった。次は、もっと本格的な料理も頼んでみよう。

 もう1軒行って見たいカフェがあったので、梯子する。静内の「syzygy cafe」へ。オーナーの娘さんが食物アレルギーだったことから、オーガニックにこだわったカフェになったそうだ。店内にはキッズスペースもあり、これもまたオーナーご夫婦の娘さんが小さい頃、周りに気を遣ってカフェに入りづらかった経験から、小さな子ども連れでも遠慮なく入れるように設置されたものだそうだ。そうそう、赤ちゃんを連れていると、どうしても泣いてうるさくしてしまったらと考えて、入れるお店がかなり限定されるんですよね。色んな意味でバリアフリーなお店なんだなー。

 注文は、本日の珈琲と自家製プリン。珈琲にはかなりこだわっているようで、深みがあって本当に美味しい一品だった。珈琲好きの妻を連れて来たら、きっと喜んでくれるだろう。プリンは、コクのある甘さが印象的だった。これはそう簡単に作れるものではない。店内の雰囲気も優しさに包まれて良い感じだし、このお店が新横浜にあればいいのに。

 日高地方を後にして2時間ほど車を走らせ、夕張を目指す。まずは、夕張市農協が運営する夕張メロン専用の販売所「夕張メロンドーム」へ行き、カットメロンを食べる。夕張メロンには結構厳密な等級があり、私は上から2番目の秀品を食べた(一番上の特秀は在庫がなかった)のだが、これが目を見張るほど美味しかった。こんなに甘くてみずみずしいのか。

 次に、新夕張駅に立ち寄る。この新夕張から夕張までのJR石勝線夕張支線は来年春での廃線が決まっており、廃線決定以降は俗に言う葬式鉄たちがたくさん訪れているらしい。私は、運が良ければ夕張行きの電車が見られるかなーと思って立ち寄ったのだが、そんなにうまくはいかなかった。そりゃそうだ。1日5本しか走っていないんだから。しかし、新夕張駅そのものがなかなか味のある駅で、散策しているだけで楽しかった。個人的には、ホーム下の通路が特にお気に入り。自然の冷たい空気で周囲とは気温が明らかに異なり、鍾乳洞にいるかのような感覚になる。

 「道の駅夕張メロード」でお土産用の夕張メロンを購入して配送手続きをしてから、メロンスイーツを頂く。夕張メロンそのものに、メロンアイス、メロンソフトクリームがのった夕張スペシャル(私が勝手に命名した)。これも美味しいし贅沢感もあるが、やはり先ほどメロンドームで食べたカットメロンに比べるとパンチは弱い。

 新千歳空港でレンタカーを返却し、新千歳18時00分発のJAL522便に乗り、羽田へ帰る。

 帰宅は20時半過ぎ。当初の予定よりも、2日間遅い帰宅である。当然、妻のご機嫌は斜めだ。まあ、台風に便乗して遊びまわったのだから、仕方ない。


7月29日(日)

2018年09月01日 21時57分05秒 | 2018年

 7時起床。朝食は取らずにホテルをチェックアウト。このホテルは朝食の美味しさがひとつの特徴なのだが、今日はなぜかあまりお腹が空いていなくて、断念した。

 浦河方面へ車を走らせ、JR日高本線の絵笛駅を見に行く。ホームに立って最初に思ったのは、「これが圭一の見た景色か」ということだった。圭一というのは、白川通さんの小説『天国への階段』の主人公・柏木圭一のことである。悲劇に見舞われ、復讐を胸に誓いながら、故郷であるこの浦河・絵笛の街を出ていく場面、大人になり、東京で実業家として成功を収めた後に帰ってくる場面など、ストーリーの節目で登場するこの場所に、一度来てみたかった。

 実際の絵笛駅は、小説の描写のとおり、牧場に囲まれた小さな小さな田舎駅だ。ただし、少しばかり荒廃している。というのも、2015年1月の高波被害による土砂流出の影響で、かれこれもう3年半、この絵笛を含む日高本線の大半の区間(鵡川~様似間)は不通になっている。更に、JR北海道は2016年の年末にこの区間の復旧断念(つまりは廃線)の意向を発表した。一応まだ完全に決まったというわけではないようだが、かなり高い確率で、この駅に列車が来ることはもうないのだ。小さくて愛らしいこの駅も、いつまでこうしてその姿を留めていられるだろうか。

 せっかく浦河まで来たので、「うらかわ優駿ビレッジAERU」へ伺う。ここは、ホテルも併設された乗馬などの複合レジャー施設で、かつて競馬界を賑わせた功労馬も繋養されている。現在は、ウイニングチケット(1993年の日本ダービー馬)とスズカフェニックス(2007年の高松宮記念優勝馬)がこの場所で暮らしている。以前はニッポーテイオーや私の大好きなサニーブライアンなども余生を過ごし、最近では今年の3月にヒシマサルがここで天寿を全うした。ここには現役の競走馬や種牡馬はいないので、通常の牧場と比べると更にのんびりとした雰囲気が流れており、このような場所で命を全うさせてあげることが、大きな功績を挙げた馬たちへの最大の敬意の表し方なんだなと感じる。

ヒシマサルの馬房には祭壇が設けられている。

 功労馬2頭は放牧中だった。ウイニングチケットは28歳と結構なおじいちゃんだが、足取りも軽く、草を食みながら放牧地を元気に歩き回っている。スズカフェニックスはまだ若いこともあって、私の姿を見つけると近寄ってきて愛想を振りまいてくれた。ただ、右後脚に少し腫れがあるようで、テーピングをしていた。馬にとって脚は本当に大切な部分なので、どうかお大事に。

ウイニングチケット。

スズカフェニックス。

 厩舎の近くには、ブチ柄のお馬さんもいた。カラトン君。すこぶる愛想がいい。こちらは功労馬ではなく、乗馬用のお馬さんだ。この見た目でこの愛想のよさなら、きっと人気があるだろうな。

 AERUの奥にあるJRAの日高育成牧場で開催されていた「うらかわ馬フェスタ2018」というお祭りへ行ってみる。企画そのものも面白そうだし、何より日高育成牧場に入れるチャンスはなかなかない。会場はとても広く、様々なイベントや展示、販売が行われていた。中でも私が興味深かったのは、蹄鉄作りの実演コーナー。鉄の棒を熱してとんかちで曲げていくところから、錐のようなものでくぼみを作って形を整えていくまで、職人さんの無駄のない正確な動き、これぞ職人技といったものを見られて感動した。それと同時に、競馬というものがいかに多くの人たちによって支えられているかということを実感させられた。その後、隣で行われていた蹄鉄のコースター作りに参加させて頂き、ちゃっかりお土産もゲットした。

 普段は調教用に使われているダートコースでは、「浦河競馬祭」として、様々な種類のレースが行われていた。サラブレッドだけでなく、アラブ種やポニー、純和種のレースもあって、面白い。私が見ている間には、ジョッキーベイビーズ北海道地区代表決定戦が行われていた。簡単に言えば、子どもたちよるポニーレースの北海道大会で、優勝すると秋に東京競馬場で行われる全国大会に出場することができる。「子ども(ポニー)でしょ?」とばかにしてはいけない。普段から日常的に馬に乗っている子どもたちの中から選りすぐりのメンバーが出て来ているわけで、実際に目の前で観てみると、スピードも迫力もすごかった。今回優勝したのは女の子だったのも印象的だった。女の子だが、出場メンバーの中で追い方の迫力はダントツだったと思う。彼女が将来プロの騎手になってくれたら、「俺はあの子がジョッキーベイビーズに出てた頃から目をつけてたんだ」と自慢できるのだが。まあ、何はともあれ、秋の全国大会、頑張ってください。怪我だけは気を付けてね。

こちらは大人のレース。

ジョッキーベイビーズ。

真ん中の白い馬に乗っている女の子が優勝した。騎乗フォームも綺麗だ。

 静内へ戻り、ホテルローレルの中にあるレストラン「北海」で昼食。お目当ては、ししゃものお寿司である。そのお寿司は、生と炙りを2貫ずつ、その他にエゾ鹿熟成肉のカツレツ定食を注文。ししゃもは、しっとりした食感と、独特の甘みがある。炙りになると、これに香ばしさがプラスされる。これが本当にあのししゃもなのか?と疑いたくなるほど、普段食べているししゃもとは違う。どうやら、私たちが普段食べているのはししゃもではなく、カペリン(通称:樺太ししゃも)という魚らしい。本物を食べてみてわかったのは、全然違う魚じゃん、ということである。こうなると、逆に寿司だけでなく、炙ったものを食べてみたいと思えてくる。それは次回のお楽しみにしよう。また、期待以上に当たりだったのが、エゾ鹿のカツレツである。濃厚な赤身肉だから、デミグラスソースとの相性がとても良いのだ。エゾ鹿の食べ方の正解は、カツレツなんじゃないだろうか。私のように赤身好きの人は、絶対に好きな味だと思う。

 午後の最初の訪問先は、「ランディングヒルズ静内」という公営(新ひだか町の町営)の乗馬施設。さすがはサラブレッドの一大生産地、町営の乗馬施設があるということに驚きだ。市民プール的な感覚で乗馬が出来るとは。料金もリーズナブルである。ただ、今回は乗馬はせず、馬たちの見学をさせて頂いた。常時なのかはわからないが、牧草をあげることが出来るようになっていて、見学だけでも楽しめる。また、厩舎の中を猫が自由に歩き回っていて、とても人懐っこくて「撫でて撫でて」と甘えてくるし、馬たちとも仲良くやっているようだった。馬と猫の組み合わせというのは、意外は意外だが、結構ほっこりするものである。

 続いては、ビッグレッドファームへ。日高へ来るたびに毎回訪れている牧場である。ちなみに、昨日札幌競馬場で応援したアルママの馬主もこのビッグレッドファームである(生産は千代田牧場だが)。また、この牧場は建物がお洒落で、普通の日本の牧場とは少し違う雰囲気があるように思う。岡田総帥は若い頃にアメリカで修行されていたから、もしかするとアメリカの牧場はこんな感じなのかもしれない。

 訪問したのが暑い時間帯だったこともあって、馬たちの大半は厩舎の中にいた。毎年のように訪れているのでほとんどの馬とは何度も会っているのだが、今回初めてグラスワンダーと会った。競馬ファンの中で、グラスワンダー、スペシャルウィーク、エルコンドルパサーの95年生まれ世代が最強だと言う人は多い。実際、その頃のレース映像を見ると胸が熱くなる。1998年はスペシャルウィークがダービーを勝ち、エルコンドルパサーがジャパンカップを勝ち(2着はあのエアグルーヴ)、有馬記念をグラスワンダーが勝った。1999年は、春の天皇賞をスペシャルウィークが勝ち、宝塚記念ではグラスワンダーがスペシャルウィークを破り、フランスのG1サンクルー大賞を勝ったエルコンドルパサーが凱旋門賞で2着に入り、その凱旋門賞で優勝したフランスのモンジューをジャパンカップでスペシャルウィークが破り、有馬記念ではそのスペシャルウィークの追撃をわずかに2cm凌いでグラスワンダーが連覇を達成…というように、今でも伝説になっているレースが目白押しである。更にいえば、そのグラスワンダーとエルコンドルパサーを98年の毎日王冠でぶっちぎったサイレンススズカもいた。少し話が逸れたが、グラスワンダーはその後、種牡馬としてもスクリーンヒーロー、モーリスと、優秀なサイアーライン(父系図)を築いている。間違いなく、日本競馬史を代表する名馬の1頭である。そんな馬に会えるというのは、本当に胸躍る体験である。ワクワクしながら馬房の中を覗くと、競走馬時代と変わらず凛々しい姿があった。ちらっと私のほうを見つつも、マイペースに牧草を食んでいる。本当にかっこいい馬だ。

ゴールドシップも相変わらず元気そうです。

おちゃめなアドマイヤマックス。

アイルハブアナザーは凛々しい。さすがは米国2冠馬。

ロサードくん、君はいつ来ても外でまったり過ごしているね。暑くないのかい。

コスモバルクは虫たちに追い掛け回されてイライラ。

 続いては、アロースタッドへ見学に行く。二十間道路牧場案内所で申込をして、現地へ伺う。ここへ来るのは初めてだ。

 アロースタッドには、最近まで現役バリバリだった馬たちがたくさん繋養されている。その中でも私の一番のお目当ては、ワンアンドオンリー。2014年の日本ダービー馬で、当時定年直前だった橋口元調教師を悲願のダービートレーナーにした馬である。その後は成績が低迷し、結局そのまま引退することになってしまったが、名前(最愛の人)の響きが好きだったこともあって、ずっと応援していた。私が結婚した年の有馬記念では、妻と一緒に記念馬券を買ったりもした。結構思い入れのある馬なのだ。初めて会ったワンアンドオンリーは、頭の良さそうな顔をしていて、現役時代と変わらぬかっこよさだった。

ワンアンドオンリーと同世代で、こちらは菊花賞を勝ったトーホウジャッカル。相変わらずイケメンだ。尾花栗毛のタテガミにこの表情は、もはや反則だろう。

UAEダービーを制し、米国3冠にも出走したラニ。ヘヴンリーロマンスの子どもだし、父タピットは米国のリーディングサイアーということで、初年度から大人気だそうだ。スタッフの方のお話によると、体重は600キロを超えているらしい。食べ過ぎはダメだよ。

マスクゾロ。つぶらな瞳が可愛い。重賞1勝の馬だが、外国産の面白い血統と、順調ならもっとやれたはずと思わせるポテンシャルから種牡馬入り。何とか頑張って欲しい。

 サラブレッド銀座通りを走り、少し休憩。ここから見える景色がたまらなく好きだ。何なら、老後はこの場所に家を建てたいくらい。

 夕食は、日高食肉センター直営の豚焼肉店「焼きとんひだか」へ。新冠町のサラブレッド壁画のすぐ隣にあるお店である。ロースやハラミ、ハツ、レバーと、好きなお肉を注文。最初の一口はロースを食べたのだが、その一口でこのお店は当たりだと思った。ここまで明らかに他とは違うお肉を食べたのは久しぶりだ。ロースだけでなく、他の部位も本当に美味しい。しかも、リーズナブルだ。これは、本当に良いお店を見つけた。

 今日の宿は、「新冠温泉レ・コードの湯ホテルヒルズ」。日帰り温泉にホテルがついた施設で、これが2回目の宿泊であるが、ここの温泉の泉質が大好きで、お風呂だけでいえばもう4回目くらいの訪問になる。今日も、温泉は素晴らしかった。ただ、直前の予約だったので喫煙の部屋しか空いておらず、ちょっと汚くて臭い部屋だったのが残念だ。タバコの臭いはともかく、もう少し部屋を綺麗に出来ないだろうか。