またしても訃報である。あのジェフ・ベックが亡くなった。享年78歳。細菌性髄膜炎らしい。報道によると、急に罹患して亡くなったようだ。文字通り急死だ。覚悟はしていたようでも、やはりショックである。謹んでご冥福をお祈り致します。
テレビ等の報道では、必ずと言っていいほど”3大ギタリスト"と紹介されていた事でも分かるように、ジェフ・ベックは昔から偉大なギタリストとして有名だった。僕もロックを聴き始める前からジェフ・ベックの名前は知っていた。何故かは分からないが。まともに聴いたのはBBAの「迷信」が最初と思うが、その後すぐ『ワイアード』が出て、僕ら当時の中学生はジェフ・ベックの虜になってしまった。いや、確かに、『ワイアード』の衝撃は凄かったのだ。特に「レッド・ブーツ」や「蒼き風」の2曲。この2曲がFMでかからない日はなかった、と断言してもいいくらい。ギター持ってた奴らは皆この2曲を一所懸命コピーしてた(笑)
僕はというと、皆と同じように、『ワイアード』の衝撃は受けていたし、翌年出たヤン・ハマーとの『ライブ・ワイアー』もFMで聴いて、カッコいいなぁと思ってたので、ジェフ・ベックは結構好きだったのだが、心酔するには至らなかった。それが変わったのは、遅ればせながら『ブロウ・バイ・ブロウ(ギター殺人者の凱旋)』を聴いてからである。
忘れもしない、僕が『プロウ・バイ・ブロウ』を初めて聴いたのは、1978年の4月頃のことだった。発表されてから約3年過ぎてたけど^^; いやもう、一発でKOされましたね。一曲目の「分かってくれるかい」のイントロのギターのカッティングにドラムのフィルが被ってくるあたりで既に昇天してたと思う(笑) それからは毎日のように『プロウ・バイ・ブロウ』を聴いてた。ちょうどフュージョンが流行り始めていた時期で、僕自身ハード・ロック離れを起こし始めていた頃でもあり、この手の音楽は実に新鮮だった、というのもあるが、とにかく中味が素晴らしかった。何から何までとにかくカッコ良くて衝撃だったのである。ギター・インストというのは特に珍しくなかったと思うが、ロック畑のベックがジャズ的なアプローチで、ジャンル分け不能、正にクロスオーバーなサウンドを提示したこと、それもロック系ミュージシャンだけで、そういうアルバムを作ってしまったこと、これは後から考えてみると、凄いことだったのだ。そう、あの頃のベックは凄い人だったのである。"3大ギタリスト"の中では、一番先鋭的な感覚を持っているように思えた。ただ、『ブロウ・バイ・ブロウ』関しては、ベックもさることながら、他のミュージシャン、特にドラムのリチャード・ベイリーのプレイに耳がいっていたような気もする。ちょうどドラムを始めたばかりだったしね。
その後ひたすらベックに熱中してたか、というと意外とそうでもなく^^;、数年経ってから、旧作を色々と聴いていくようになって、いつの間にかジェフ・ベックはフェイバリット・ミュージシャンになっていた。アルバムだと『ジェフ・ベック・グループ』が一番好きかな。1989年に久々に出た『ギター・ショップ』は、発売とほぼ同時に買って聴いたが、今イチだった。ギターは相変わらず唸りを上げているのにバックがとても冷めてるような気がした。『プロウ・バイ・ブロウ』や『ワイアード』みたいな、火花散るインタープレイの応酬、ようなのが感じられなかったのだ。そのせいかどうか知らんが、ベックはそれから約10年間沈黙する。
1999年に『フー・エルス!』で復活してからの、いわばデジタル・ロック路線以降のベックもずっと聴いてた。思い出すのは、2000年12月の来日公演で初めて生でベックを見たこと。感激したなぁ。思えば、あの時47歳くらい。実に若々しかった。万年青年って感じ。個人的には、ジャクソン・ブラウンとジェフ・ベックは見た目が変わらないミュージシャンの双璧である。
僕がベックを好きなのは、その音色、フレーズ、などにいちいち興奮してしまうからだ。ハードロックだろうがクロスオーバーだろうがデジタル・ロックだろうが、ベックはいつも変わらぬプレイを聴かせ、僕はそれを聴くたびに興奮させられている。いつだって気分が高揚してくるのである。『フー・エルス!』以降のアルバムも全て聴いているが(ライブは除く)、どれを聴いても同じ事を感じる。そのギターをミュージシャンたちが対抗しながら盛り上げていくのが理想。
という点では、復活後のデジタル・ロック路線にも多少は不満もあって、前述したけど、僕は他のミュージシャンとベックによる火花散る演奏が聴きたいのである。さすがに、テリー・ホジオと一緒にやったライブは、かなりテンション高い演奏が楽しめるけど、こういうのでなければ、ベックはボーカルがいる時の方がいい味出してると思うので、複数のゲスト・ボーカルを迎えた『エモーション&コモーション』や若手ミュージシャンと組んだ『ラウド・ヘイラー』といったアルバムの方が好きだ。とにかく、ベックがただ一人でギター弾いてるだけ、なんてのは面白くない。
最近では、ジョニー・デップと共演したアルバムを出したりして、かなり意外だったけど、デップと張り合ってテンシン高いプレイを聴かせているのかな、なんて思っていた矢先の訃報であり、なんというか、見た目のせいもあり、この人は死なない、みたいに思ってたので、その分ショックもデカい。年を取っても、大御所みたいにならずに、ひたすらギターを引き続けていた、その姿は正にミュージシャンの鑑である。
という訳で、また一人偉大なミュージシャンが天に召されてしまった。
ジェフ・ベックを偲んで、となると「哀しみの恋人たち」といった曲の方が雰囲気出るが、個人的にはこの曲好きなので。
Jeff Beck - Diamond Dust - London (1976) - YouTube
映像はないけどライブらしい。貴重かも。
安らかにお眠り下さい。合掌。
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