アーティストがアルバム製作をする場合、最も重要な曲(あるいは最も出来の良い曲)をどこに配置するか。これはアーティスト云々というより、聴く人によって印象は異なるだろうから、結局人それぞれなんじゃないの、なんて結論が出て終わってしまうのだが、こんな面白いネタをそれだけで終わらせてしまっては勿体ない(爆) なので、今回はそのネタを僕なりに掘り下げてみる事にする。どうでもいいじゃんそんなこと、という声が聞こえてくるがいいのだ。僕がやりたいからやるのだ(自爆)
事の発端はfxhud402さんが、うちの「みんなの名盤」コーナーに投稿して下さった「2丁目...じゃなく2曲目の名曲」というレポートである。fxhud402さんは、アルバムの2曲目にこそ名曲が多い、という観点から「2曲目の名曲」をいくつか紹介している。それに対し、MFCの掲示板で喜楽院さんがfxhud402さんの意見に頷きつつも「やはり最重要曲は一曲目なのでは?」と疑問を投げかけ、続いて忍者さんが「B面の一曲目こそ重要だと思う」との見解を述べた。どれも傾聴に値する意見である。となると、世間で名盤と呼ばれているアルバムはどのタイプが一番多いのか? A-1重視なのかA-2重視なのか、それともB-1重視なのか。やや無謀だが、それを今回は検証してみたい。
ちなみに、僕の意見はというと、実はA面ラストに隠れた名曲が多いんです、なんてやや的外れな事を言っている(爆) なので、僕の意見は無視して進めていく(笑)
さて、どのアルバムで検証するのが良いのか。やはり、ここではクイーンをサンプルとして検証するのが一番分かりやすいだろう(爆)と思われるので、それで進めていこう。クイーンの全アルバム中、CD時代の『イニュエンドゥ』『メイド・イン・ヘブン』及びベスト盤、ライブ盤、サントラ盤を除いた12枚のアルバムの中から、A-1、A-2、B-1をピックアップし、検証を試みた。で、断っておかねばならないのは、“重要曲”の定義である。それこそ人によって意見が違うだろうが、ここでは便宜上“重要曲”とは、1)第一弾シングルになった曲 2)アルバムタイトル曲 とさせて頂く。
戦慄の王女
A-1 炎のロックンロール
A-2 ドゥーイング・オール・ライト
B-1 ライアー
さすがファーストアルバム、実に狙いがはっきりしている。A・Bそれぞれの面のトップに印象的な曲を配して、アルバムへの興味を煽る作戦といっていいだろう。新人のデビューアルバムは、A面一曲目に“重要曲”を持ってくる例が多い。クイーンのファーストも「つかみはOK」という事で、A-1重視型と言えるだろう。
クイーンII
A-1 プロセッション
A-2 父より子へ
B-1 オウガ・バトル(人喰い鬼の戦い)
ううむ、このアルバムの場合は、A・Bそれぞれが独立した世界、といってもいいので、他のアルバムとはA-1やB-1の果たす役割がやや異なる。聴き手を引きずり込むというより、全体を構成する一曲というべきか。しかし、「オウガ・バトル」のは実に強烈だったので、このセカンドアルバムはB-1重視型と勝手に決めさせて頂く。本当は「フェアリー・フェラーの神技」に2曲目大賞あげたい(爆)
シアー・ハート・アタック
A-1 ブライトン・ロック
A-2 キラー・クイーン
B-1 神々の業
このアルバムもコンセプチュアルに作られている為、全体の中の一曲という印象が強い。だからといって、並べ替えては台無しなのだが。度肝を抜かれるオープニングではあるが、続けて「キラー・クイーン」が登場するのが実に心憎い。“重要曲”だし。よって、このアルバムはA-2重視型とする。
オペラ座の夜
A-1 デス・オン・トゥー・レッグス
A-2 うつろな日曜日
B-1 予言者の歌
こちらも、アルバムの流れ重視で曲順が決まったという感じ。しかし、一回針を上げてレコードをひっくり返して針を落とした所へ流れてくる「予言者の歌」、これほどドラマチックなB-1を僕は知らない。なので、B-1重視型とする。文句あるか。
華麗なるレース
A-1 タイ・ユア・マザー・ダウン
A-2 ユー・テイク・マイ・ブレス・アウェイ
B-1 愛にすべてを
これまでのコンセプト重視が薄れてきたアルバムであるので、分析(?)もしやすい。A-1とA-2でガラッとムードを変えてしまって、ここいらの聞かせ方は見事。“重要曲”をB-1に配しているとはいえ、構成としては典型的なA-1重視型と思うけど、どうでしょ?
世界に捧ぐ
A-1 ウィー・ウィル・ロック・ユー
A-2 伝説のチャンピオン
B-1 ゲット・ダウン・メイク・ラブ
至上最強のA-1・A-2コンビと言っていいだろう。これ以前のクイーンだったら、この2曲をもっと後の方に置いたと思うだけど、どう思います? ま、全世界で歌われているA-2があるのだが、最初に聴いた時のインパクトが卒倒するくらい凄かったので、A-1重視型。
ジャズ
A-1 ムスターファ
A-2 ファット・ボトムド・ガールズ
B-1 デッド・オン・タイム
このオープニングもインパクトは強烈。これは文句なしにA-1重視型だろう。ただ、ガラッと局面が変わるB-1も捨てがたい。こっちも人気曲だし。
ザ・ゲーム
A-1 プレイ・ザ・ゲーム
A-2 ドラゴン・アタック
B-1 ロック・イット
先行シングルが2曲も入って、やや寄せ集めっぽい雰囲気もあるアルバムだが、A-1は間違いなく“重要曲”。だが、それ以上に強烈なのはA-2だろう。私見だが。なので、A-2重視型とする。
ホット・スペース
A-1 ステイング・パワー
A-2 ダンサー
B-1 プット・アウト・ザ・ファイア
このアルバムも、A-1で度肝を抜いた。その印象で最後までひっばられるので、やはりA-1重視型か。A-1以外の曲は大した事ないという意味では決してありません。
ザ・ワークス
A-1 Radio Ga Ga
A-2 ティア・イット・アップ
B-1 マシーン・ワールド
ロジャーが手がけたエレポップテイストの曲が、A・B両面の一曲目に置かれているのが、実に興味深い。クイーンの新生面としてアピールしよう、という意図があったのだろう。てな訳で、A-1重視型。
カインド・オブ・マジック
A-1 ワン・ビジョン(ひとつだけの世界)
A-2 カインド・オブ・マジック
B-1 リブ・フォーエバー
これも寄せ集め的な感触はある。A-1は先行シングルだし。そんな中で、やはり光るのがA-2であり、シングルでもありタイトル曲でもあり、って事でA-2重視型。
ザ・ミラクル
A-1 パーティ
A-2 カショーギの船
B-1 ブレイクスルー
さあ、これは困ったぞ。アルバム中、最も有名でない2曲がオープニングである。かといって、B-1重視というには、ちと弱い。しかし、初めて聴いた時、なんなんだこれは、と言ってる間に冒頭の2曲が終わって、タイトル曲が流れてきた時の感動は大きかったので、つかみとしては成功しているといっていいのだろう。噛ませ犬みたいな感はあるが。で、A-1重視型。
さて、こうしてクイーンを例に検証してみると、(個人的見解がほとんどとはいえ)A-1重視型が12枚中7枚とダントツに多い。という事は、クイーンはA-1に重きを置くA-1重視型アーティストという事になる。冒頭で聴き手を掴んで、そのまま最後まで引っ張っていくタイプ、という事かな。だから何なんだ、という気もするが。僕の知る限りでは、ツェッペリン(「胸いっばいの愛を」「移民の歌」「ブラッグ・ドッグ」「永遠の詩」「アキレス最後の戦い」等)やパープル(「スピード・キング」「ファイアボール」「ハイウェイ・スター」「ウーマン・フロム・トーキョー」「紫の炎」「嵐の使者」等)もこの傾向が強い。ブリティッシュ・ロック界の伝統なのだろうか。
個人的には、A-1がつまらんアルバムの大半は面白くない、という印象もあり、やはりアーティストが一番神経を使うのはA-1ではないか、という気もする。反面、いいのはA-1だけで他はスカ、というのも多々あるが。シングル曲をA-1に置いて聴き手を誘っておき、B-1あたりに自信曲を持ってくるケースも多い(例:フォリナー)が、これが出来るという事は、一枚のアルバムで目玉となる曲を複数用意出来るという事でもあり、才能あるミュージシャンである事の証明ともいえる。ま、捨て曲なし、なんてアルバムは、A-1もA-1もB-1も、良い曲ばかりなんだけどね(笑)
そんな訳で、皆さんもご贔屓のバンドやアーティストで、どこに重要曲が置かれているか、検証してみて下さい。楽しいですよ(爆)
最後になるが、自説の「A面ラストに名曲多し」、これを先に挙げたクイーンのアルバムで検証するとどうなるか。
マイ・フェアリー・キング
ルーザー・イン・ザ・エンド
ナウ・アイム・ヒア
シーサイド・ランデブー
ユー・アンド・アイ
秘めたる炎
レット・ミー・エンターテイン・ユー
愛という名の欲望
アクション・ディス・デイ
マン・オン・ザ・プラウル
心の絆
インビジブル・マン
う~む、やっぱり地味ながらも名曲が多いぞ(笑) この中で、“Aラス”大賞を選ぶなら、やっぱし「ユー・アンド・アイ」かな(爆)
なら佳曲は最終曲に多いとは
いえませんかねぇ。
神々の業、手をとりあって、
セイブミー、悲しい世界、
アンダープレッシャーとか
まあ、終わり良ければ・・・って
ことかなあ。
ストーンズやキンクスも最終曲は
なかなかの曲が多いと思うのですが
いかがでしょう?
私もA-1にインパクトのある曲が多いと思いま~す!でもA-1はコンサートでも最初にやるイントロダクション的な曲でA-2にメイン曲を、というのもあるし、ラストは余韻の残る名曲をというパターンも結構あるような気が。
複数の曲の配置で自然と決まってくる場合もあるでしょうし・・・
どちらにしてもそのアーティストの好みや考え方を反映していて面白いですね。
またレコードだとB面から聴けるので、B-1にもインパクト強いのが多くなるという物理的(?)要因もあるのでは。
CDだとランダムに聴けるけど、レコード時代は聴く曲順も決まってて、一枚聴くとストーリーを感じましたね。
『ゲーム』がA-2重視型って、ビックリしすぎて勢いよく鼻息もらしちゃいましたよ(笑)
私の“Aラス”大賞は、うーん、いちばん聴いてて飽きない!ってことで「ルーザー・イン・ジ・エンド」かな~♪
>なかなか面白いですね
おや、いつになく冷静なコメントですね(笑)
>なら佳曲は最終曲に多いとは、いえませんかねぇ
おっしゃる通りですね。佳曲というか、どうしても感動的な曲が多くなるような気がします。
クイーンに関して言うなら、ラスト曲としては「神々の業」と「手をとりあって」が2大名曲かと。「マイ・メランコリー・ブルース」もいいなぁ。
ストーンズならラスト曲大賞は「地の塩」でしょうか。
♪naonaoさん
>実はクイーン狂だったんですねぇ
今まで隠しておりましたが(爆)そうなんです。naonaoさんも世代的には、結構聴いていたのではありませんか?
>私もA-1にインパクトのある曲が多いと思いま~す
やはり、つかみですもんね。ただ、おっしゃる通り、一曲目はイントロダクション、2曲目がメイン、という構成も多いので、もしかすると、A-1とA-2はセットで捉えた方がいいのかもしれません。
>一枚聴くとストーリーを感じましたね。
LPの良い所はそこですね。CDはダラダラと流れてしまうような気がします。
♪ドロたん
>クイーン色の濃い話題なんて、あんまりにも久しぶりすぎて新鮮でした
しばらく、クイーンネタから遠ざかってましたからね。最初はフォリナーでいこうか、と思いましたが、クイーンの方が分かりやすいかな、と(笑)
>ビックリしすぎて勢いよく鼻息もらしちゃいましたよ
おや、ご不満でも(爆) あのアルバムは、曲順には凝ってないように思われるので(でも、A-2からA-4の流れは素晴らしい)、色々な解釈が可能ですね。
>「ルーザー・イン・ジ・エンド」かな~
うむ、これも捨てがたいんです。「ユー・アンド・アイ」とどっちにするか、実は凄く悩みました(笑)
だって、ラスト曲のネタ、前に考えようかな、なんてちろっと思ったのだけど、やめたんですもん(苦笑)
やっぱ投稿は、おいこらでしょ(爆)
>ストーンズならラスト曲大賞は「地の塩」でしょうか
私はフィンガープリントファイルに。
ちなみにキンクスならセルロイドヒーローズといいたいとこだけど、ここは
アーサーに。あ、マスウェルもいいな。A-1大賞はスクールデイズ。
これは譲れん(爆)
>やっぱ投稿は、おいこらでしょ
ラスト曲ネタでも“おいこら”でいけると思いますが(笑) 「なんでこの曲がラストなんだ、Aラスと入れ替えろ」な名曲とか(爆)
>私はフィンガープリントファイルに
おお、それもあった。あと「ムーンライト・マイル」に「クレイジー・ママ」に「オール・アバウト・ユー」に、って全部じゃん(爆)
>A-1大賞はスクールデイズ
激しく同意します(笑)でも、「アラウンド・ザ・ダイアル」ってのもありますが(爆)
で、これをぶち破ったのがやはりビートルズ。
なんせサージェント・ペパーズはB-1が「ウィズイン・ユー、ウィズアウト・ユー」だからなぁ。
そういえばMFCオーナーさんの好きなマドンナもA-1、B-1主義者では?(サードまでは特に)
>これをぶち破ったのがやはりビートルズ
なるほど、やはり。サージェント・ペパーズもさることながら、デビューアルバムの一曲目が「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」というのも、時代を考えると画期的だったのかもしれませんね。
また、キンクスのデビューアルバムでは、「ユー・リアリー・ガット・ミー」がAラスです。これもセオリー無視か(笑) やはりこの2バンド、登場した時から既に只者ではなかった事の証明でしょうか。
>マドンナもA-1、B-1主義者では
現在に至るまで、A-1重視という傾向があります。ただ、1stと2ndの場合、結果的に後にシングルヒットしたため“重要曲”になった、という感じですが。
>人それぞれですね
全くです。それだけに、このネタをここまで引っ張った意味があると思います(意味不明)
>アルバムのメリハリがなくなった気がします。
これも、まったくもって同感です。