碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ギャラクシー賞「報道活動部門」のこと

2008年05月08日 | メディアでのコメント・論評

2007年4月から2008年3月までに放送された番組を対象に選ばれる、第45回「ギャラクシー賞」の入賞作品が決定した。「ギャラクシー賞」を主催しているのは放送批評懇談会。放送の世界における賞には、他にも「芸術祭賞」「民放連賞」「ATP賞」などがあるが、放送批評や放送評論のプロたちが選ぶという点で独自の位置を占めている。

「ギャラクシー賞」にはいくつかの部門がある。「テレビ部門」「ラジオ部門」「CM部門」、そして最も新しいのが「報道活動部門」だ。「テレビ部門」や「ラジオ部門」は、あくまでも番組を”単位”として評価する。しかし、実際には報道番組やドキュメンタリー番組といった「1本の番組」という枠で絞ってしまうと、収容することができない「報道活動」が日々行われている。「報道活動部門」は、そこを評価するために設置された。現在、その選奨委員を務めさせていただいている。

ギャラクシー賞「報道活動部門」の今回の入賞作品は次の6本。

●STVニュース「北海道・ニセコ町の果実酒問題」をめぐる一連の報道(札幌テレビ)
●製紙各社の”エコ偽装”における一連の報道(TBS)
●地域回復をめざす報道活動 人情物語 向こう三軒両どなり(テレビ金沢)
●「どですか!」生き生きまいらいふ(名古屋テレビ)
●国の実態調査を実現させた「ネットカフェ難民」キャンペーン報道(日本テレビ)
●イチオシ!「徹底検証 政務調査費」(北海道テレビ)

来月3日に行われる贈賞式で、この中から「大賞」や「優秀賞」などが選出される。


そして、以下は、放送批評懇談会が発行している雑誌『GALAC ギャラク』の6月最新号に寄せた、「報道活動部門」についての文章だ。


  “報道マインド”にあふれた情報番組!

 ギャラクシー賞報道活動部門の面白さは、その間口の広さと柔軟性にある。まず番組という単位でくくっていない。コーナーでの報道やキャンペーン報道にも注目している。また、報道番組というジャンルにも縛られない。情報番組、ワイドショー、いやバラエティ番組の中での取り組みも審査対象だ。そういう目で見渡すと、身近なところで「報道活動」を発見できる。
 私は今年3月まで北海道千歳市にある大学に在籍していたが、おかげで6年にわたって道内の様々な自社制作番組、オリジナル番組に接することができた。その中の1本、北海道文化放送『のりゆきのトークDE北海道』を紹介したい。今年の秋15年目に突入するこの番組は、月曜から金曜の毎日午前10時55分~11時25分の90分生放送。司会は「北海道で知らない人はモグリ」といわれる佐藤のりゆきさん。その隣で番組を支えているのが水野悠希アナウンサーだ。主婦層を主なターゲットとした情報番組、もしくは情報ワイドといった内容で、番組の軸となるのが約50分の特集コーナーである。
 実は、この特集コーナーが侮れない。普段はグルメ、旅、生活情報などが紹介されるのだが、週に一度は報道系・時事問題系企画がガツン!と来るのだ。たとえば、昨年から今年にかけて放送されたものを一部ピックアップしてみよう。

<食の安全>
「ミンチ偽装事件 裏切られた食の信頼」
「白い恋人から見えた賞味期限のカラクリ」      
「北海道にも激震!続報中国製ギョーザ問題」
<年金>     
「届いたらどうするの?ねんきん特別便」
「ところで年金っていくらもらえるの!? 」
「年金破たん最悪のシナリオ」
<医療>             
「病院が変わる!? 統合医療って何!? 」
「気になるタミフルの影響」                        
「えっ!医療費ってまた上がるの?」
<政治・経済>
「参院選終わって、どうなる北海道・日本」 
「なぜだ?どうする?値上げドミノ!」
「ガソリン暫定税率廃止に賛成?反対?」

ざっと眺めても、いわゆる「報道番組」の特集に負けないラインナップだが、こうしたテーマをVTRと生のスタジオを組み合わせた50分という<長尺>で扱っているのだ。
 中でも印象に残っている1本は2月28日に放送された「サミットを知る男に聞く!?北海道民の素朴な疑問」で、スタジオには外務省の河野雅治審議官を招いていた。河野氏はサミットに出席する首相を背後でサポートする、いわばサミットのプロだ。「登山者の安全を確保しつつ山頂(サミット)まで導く」という意味から、河野氏のような役割は各国共通で「シェルパ」と呼ばれている。特に開催国のシェルパは議題から円卓会議の座り位置まで、サミットの全てに責任をもつ。
 番組では街頭インタビューでサミットに対する道民の「素朴な疑問」を収集。河野氏がそれに答えていた。話題は食事のメニュー、服装、同伴者、警備の費用から北海道への影響、さらにサミットの意義にまで及んだ。司会の佐藤のりゆきさんは「今後、中国やインドが参加する可能性は?」と問い、「過去のサミットで決議したことが、その後検証されていないのではないか」と揺さぶる。硬軟とり混ぜた巧みなインタビュー術が審議官の本音を引き出していった。もちろん平日午前の番組であるから、分かりやすさとユーモアも忘れない。結果、この日の『トーク』を見た人たちは、あの時点で「最も深くサミットを理解した日本人」だったと思う。
 こうした“報道マインド”にあふれた情報番組、情報ワイドは全国にあるはずだ。ぜひ報道活動部門への積極的参加をお願いしたい。