碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

『相棒ー劇場版ー』と『映画でわかる世界と日本』。

2008年05月01日 | 映画・ビデオ・映像
学生時代、渋谷に住んでいた。NHKの近くだった。毎年、5月1日の朝は、代々木公園から聞こえてくるスピーカーのシュプレヒコールとそれに呼応する多くの人の喚声、そして上空を旋回するヘリコプターのプロペラ音で目が覚めた。代々木公園に何万人もの人が集まり、「メーデー」が行われていたのだ。

最近の学生の中にはメーデーを知らない者も多い。メーデーは、いわば「労働者の祭典」。労働者が集団で社会に対する様々な主張、アピールを行う機会でもある。
労働組合の組織が分裂した後は、5月1日という「連休の真ん中」の”動員”を敬遠する人も増え、連合系のメーデーは4月28日や29日に行っている。今は5月1日の代々木公園も静かなはずだ。

地元の、大きくて、しかも割と品揃えのいい書店に出かけた。書評本のチェックだ。その後、同じ建物の中にあるシネマコンプレックスに寄った。すると、ちょうど映画『相棒ー劇場版ー』が始まる直前だった。しかも毎月1日は、お一人様1000円の日。つい、チケットを買ってしまった。テレビ版の『相棒』はほとんど見ないが、映画版は悪くない、いや、なかなかいい、という評判を聞いていたからだ。脚本も、以前仕事をお願いしたこともある(実現しなかったが)戸田山雅司さんだし・・。

で、見ました。見てきました。かなり疲れました。ちょっと風邪気味ってこともあったせいか、話の筋になかなか乗れなかったのだ。会員制WEBサイトのSNSに掲載された「処刑リスト」といった今どきの設定も「ふ~ん」という感じで、背後にある謎と呼ばれるものも「まあ、そうだよねえ」。乗れないコチラが悪いのか、乗せないアチラが悪いのか。マラソン大会の大規模ロケなど、よくがんばっていたけれど、全体としては「テレビのスペシャルでもいいじゃない?」というのが感想だ。1800円だともっと怒っていたはず。1000円でよかったかも。(戸田山さん、ゴメンネ)


本日入手した佐藤忠男さんの新刊『映画でわかる世界と日本』。その帯にいわく、
<映画とは、社会を映す「鏡」である>。そういう意味では、確かに『相棒ー劇場版ー』も鏡の一つだ。風邪を直してから、何が映し出されていたか、じっくり考えてみよう。

映画でわかる世界と日本
佐藤 忠男
キネマ旬報社

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