碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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就職戦線と、ランボーのビルマ戦線

2008年05月30日 | 映画・ビデオ・映像
研究室の4年生たちで、現在も就職活動中のメンバーは多い。とはいえ、「仕事」「働くこと」に対して明確なイメージを持っている者、まだ現実感があまりなさそうな者、いろんなタイプがいる。

今日は、あえて本当に基本的な話をした。企業にとって採用試験とは何なのか、といったことだ。乱暴に言ってしまえば「一緒に仕事をする仲間を探している」わけで、エントリーシートも、筆記試験も、面接も、そのために行っている。それによって、学生たちがどんな人間なのかを何とか知ろうとしているのだ。できれば、自分たちがやっている仕事が好きであって欲しいし、自分たちの会社も愛してくれる人がいい。だって、採用担当者たちは、実際にその会社で働き、そこでの仕事で生きてるんだから。

就職(活動)と恋愛は似ている、というのが持論だ。やはり「誰でもいいけどキミも好きだ」と言われて喜ぶ女性はいないだろう。「本気で好きなんだよね」とか「ワタシだけだよね」とか思ったりするはずだ。「どこが好き?」と聞かれて、「なんとなく」じゃあ、きっと振り向いてはくれないと思う。「どこが好きか」「なぜ好きか」「ずっと好きか」などと問われても、一人前の男子なら、ちゃんと言葉で答えなくてはならない。

・・・てなことを、内定がまだ出ていない学生諸君に話したけど、伝わったかな?


映画『ランボー 最後の戦場』を見てきた。就職戦線もまだまだ熱いが、復活したランボーの戦いも、かなり熱いものだった。

舞台はビルマ(現ミャンマー)。現実をかなり反映させた彼の地の惨状があり、捕らわれた民間人がいて、ランボーは決死の救出を敢行する。まあ、リアルな虐殺シーンがどーんとあり、「全編が銃撃と殺戮」てな具合に言われそうだが、それが見せたかっただけの映画ではないと思った。脚本・監督・主演のスタローンは、ビルマで行われていることに本気で怒っているのだ。

ちょっと気になったのが、映画の中で登場人物たちはずっと「ビルマ」と言っている。スタローンはインタビューでも「あえてビルマという国名を連呼した」と述べていた。しかし、日本語の字幕スーパーでは、すべて「ミャンマー」になっていた。そりゃまあ、日本政府は軍事政権が決めた「ミャンマー」という国名を使うことで、なし崩しに”承認”しちゃったことになっているが、わざわざ「ビルマ」という”消された国名”を使い通したスタローン監督の意思を、字幕が裏切ってはいないだろうか。どんなもんだろう。

これで、「ロッキー」に続いて、「ランボー」も完結・打ち止めとなるようだ。『ロッキー』シリーズも最後まで付き合ったし、この『ランボー』シリーズも見とどけることができた。内容うんぬん以前に、そんな感慨がある。おつかれさん、ランボー。

ランボー 最後の戦場 (ハヤカワ文庫 NV マ 2-99)
シルベスター・スタローン他 横山啓明
早川書房

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