碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「子どもに見せたくない番組」は勲章か?

2008年05月17日 | テレビ・ラジオ・メディア
毎年この時期に発表されるのが、テレビの「ワースト番組ランキング」だ。これ、正確には、社団法人の日本PTA協議会が行う「子どもとメディアに関する意識調査」というアンケートの結果なのだ。この調査の中で「子どもに見せたくない番組」という項目があり、小学5年生と中学2年生の保護者に回答してもらっている。

実際には昨年度に放送されたものが並ぶわけだが、今回の結果としては・・・

「子どもに見せたくない番組」

1位 ロンドンハーツ
2位 めちゃ2イケてるッ!
3位 クレヨンしんちゃん
4位 エンタの神様
4位 志村けんのバカ殿様
6位 はねるのとびら
7位 リンカーン
8位 ライフ
9位 クイズ!ヘキサゴン
10位 ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!

というわけで、回答者全体の10.5%が選んだ「ロンドンハーツ」が5年連続のトップだ。「見せたくない」理由としては、「内容がばかばかしい」「言葉が乱暴である」「常識やモラルを極端に逸脱している」「いじめや偏見を助長する場面が多い」などが並ぶ。

「ロンドンハーツ」としては、週によって15%にも達する視聴率の番組を、不祥事でもない限り、「じゃあ、やめます」とは言わない。また、「子どもに見せたくないなら、見せないでください」とも言わない、というか言えない。多少露悪的なところもあるテレビ屋さんなら、「ワーストワンもまた勲章だ」くらいに思うだろう。

ただし注意したいのは、この調査では「見せたくない番組」に続いて、こんな設問が置かれていることだ。「このような番組が放送されていることについて、スポンサーにも責任があると思いますか?」

それに対して、保護者の71.7%が、責任は「ある」と答えているのだ。子どもたちの保護者は、スポンサー企業にとってユーザーであり、消費者であり、まさにお客さまである。「内容はともかく、視聴率を稼いでさえいてくれれば、広告効果としてはOK」というスタンスで、ずっといられるかどうか。

「もの言う消費者」が普通になってきた今、番組のスポンサー企業に対して、抗議などの直接アプローチが行われてもおかしくはない。もしも、視聴者=消費者がそうした行動に出たとき、テレビ側は「表現の自由」などの”ありがち”な言辞で、それに対処できるだろうか。

民放のテレビを支えているのは基本的に企業の広告宣伝費だが、ネット広告の大幅かつ急激な伸びを見ても、テレビがこれからも安泰などと考えている人はいないはず。「子どもに見せたくない番組」の称号を勲章や逆PRとする道もあるが、それだけでは危うい気がするのだ。