碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

梅雨の晴れ間に町歩きがしたくなる日

2008年06月17日 | 本・新聞・雑誌・活字
昨日(16日)の日中は、まだ梅雨が続いているとは思えないような、気持ちのいい天候だった。こういう日に、研究室や会議室にこもっているのは、ほんと残念。ぶらりと散歩、町歩きができたらいいと思う。テレビ朝日の地井武男さんの「ちい散歩」みたいなのでいいから。

まあ、その代わりってのは無理だけど、町歩き気分になれる本を眺めてみる。

まずは、『首都圏 名建築に逢う』(東京新聞出版局)。東京駅から箱根の冨士屋ホテルまで50の名建築が並んでいる。この本の最大の魅力は、全編を飾る細密彩色画だ。芸大出身の画家たちが描く建物は、いずれも美しさと温かみに満ちている。また歴史やエピソードを交えてその魅力を語る文章も的確で、実際に見に行きたくなってくる。

首都圏 名建築に逢う
東京新聞編集局
東京新聞出版局

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次は、同じ建築でも、ちょっとマニアック。大山顕さんの『団地の見究』(東京書館)だ。熱狂的団地マニアである大山さんの手にかかると、江戸川区にある何でもない団地が「ボディのノーブルな造形とロイヤルカラーの色づかい」だと絶賛され、西葛西という一般的にはやや地味な印象の町も、かつて栄華を極めた団地が眠る「団地界の王家の谷」となってしまうから楽しい。48棟分の団地写真と、大山さん独特の解説を楽しむ偏愛本である。

団地の見究
大山 顕
東京書籍

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そして、最近何度か見直しているのが、阿久悠さんの詞と、佐藤秀明さんの写真&エッセイを収めた『路地の記憶』(小学館)だ。夏の夕暮れ、道端で車座になる子どもたち。秋の日差しを背に、石段でまどろむ猫。季節により、町によって、様々な貌をもつ路地には、生活感と旅情とが同居している。阿久悠さんが逝ってしまった今、二つの才能による二度と出来ないコラボレーションだ。

路地の記憶
阿久 悠,佐藤 秀明
小学館

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