碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

鬱という字は書けないが、ウツは怖くない、かも

2008年06月28日 | 本・新聞・雑誌・活字
最近、「鬱」についての本が何冊か出ているのは偶然じゃないと思う。五木寛之さんと香山リカさんによる新刊『鬱の力』 (幻冬舎新書)にも書かれているように、今は「鬱の時代」に入っているのかもしれない。政治も経済も状況はよくならないし、地震など天変地異はあるし、凄惨な事件も続発している。まあ、明るく暮らしたくても結構しんどいのが現実で、「一億総ウツ時代」もリアルになってきた。

この新書本は対談形式だから、とても読みやすい。でも、語られていることは軽くない。「うつ病」は治療すべきだが、「鬱」は人間本来の感情だという。五木さんによれば、鬱をエネルギーとしてとらえ、嫌がったり排除したりせず、享受することで見えてくるものがあるそうだ。ちょっと安心する。

作家の三浦朱門さんの新著『うつを文学的に解きほぐす』(青萠堂)には、妻で作家の曽野綾子さんとウツの関係や、友人である作家の北杜夫さんの躁うつ病の話などが出てくる。

三浦さんご自身は医師ではないが、まさに「文学的」なウツの分析が面白い。原因として挙げられるのは、誰にもありそうな成長期の体験や、大人になってからの人間関係、社会に出てからの職業や社会生活への適応など。これを読むと、ウツもごく普通のことじゃないかと思えてくるのだ。

鬱の力 (幻冬舎新書 い 5-1)
五木 寛之,香山 リカ
幻冬舎

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うつを文学的に解きほぐす―鬱は知性の影
三浦 朱門
青萠堂

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<減煙コーナー>
まだ減煙は続いている。昨日もまた、決めた本数(7本)で乗り切ってしまった。さすがにこの本数になると、「ちょっと吸いたいなあ」という時、水を飲んだりする必要がある。これも小説『優しい悪魔』に書かれていた通りだ。

とはいえ、今日は6本。相当きびしいのだが、「まあ、試してみるさ」である。