碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「白」を極めることは「色」そのものを捉え直すこと

2008年06月23日 | 本・新聞・雑誌・活字
原研哉さんは、無印良品のアートディレクションなどで知られるグラフィックデザイナーだ。以前、お会いしたのは、内閣府が開いた「政府広報」に関する公聴会の場だった。論理的かつ明晰な語り口で、政府広報全体に”デザインという思想”が欠けていることを、びしっとおっしゃていたのを覚えている。そんな原さんの新著のタイトルが『白』(中央公論新社)。

この本は、「白」にまつわる美学的エッセイだ。白と紙、白と活字との関係を探り、さらに「空白」についても考える。原さんによれば、白を極めることは色そのものを捉え直すことになるという。

本の造りも変わっていて、全体の半分は、日本語で書かれた文章の英訳なのだ。英文は、反対側(裏表紙側)から読んでいくことになるので、奥付は本の中央部に位置している。本自体のデザイン・装丁も美しいが、この併載されている英文もまた美しい。(和文英訳・英文和訳のテキストにもなるし)

原さんの作品で好きなものの一つに、集英社新書の装丁がある。表紙カバーの、「ひとり舟を漕ぐ人」のマークもいい。それから、制作に参加していた98年の「長野冬季オリンピック開会式・閉会式」。そのプログラムも原さんの作品だった。


原 研哉
中央公論新社

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デザインのデザイン
原 研哉
岩波書店

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