碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

月から地球を見たひとたち

2009年01月27日 | 映画・ビデオ・映像
アポロ11号が、人類初の月面着陸を成功させたのが1969年7月。今からちょうど40年前のことだ。

この“史上空前の挑戦”であり、“史上最大の冒険”だったプロジェクトを描いたドキュメンタリー映画『ザ・ムーン』を観た。

ぶっ飛んだ(笑)。

何が凄いか。

まず、NASAの<蔵出し>だという、お宝映像である。これでもか、という感じで大盤振る舞いされている映像が、圧倒的な力を持っているのだ。

69年当時、私は中学生。テレビにかじりついて月面からの生中継を見ていた。それ以来、大きくなるにつれて、「アポロ」関係の写真や映像をたくさん見てきたし、テレビの仕事でまとめて見る機会もあった。

しかし、そんなものは、膨大なNASA映像のほんの一部の、そのまた端っこだったということだ。

月へ向かう途中の船内はもちろん、コントロール・センター内部の様子も、そして月面で撮影された映像も、すべて驚きの連続だった。カメラを通じて「月に行った」感じさえする。中には、月面での“ドライビングショット”まであるのだ。

月面。そこから見える地球。美しさと静けさ。<実写>の強さを思い知った。

この映画の、もう一つの凄さ。それは、登場する10人の宇宙飛行士たちである。

作品全体が、彼らへのインタビューとNASAの記録映像の二つの要素で出来上がっている。実はとてもシンプルなのだ。

それだけに、映画の中の、宇宙飛行士の存在は大きいのだが、まあ、彼らの何とカッコいいこと!

彼らの多くが「アポロ計画」の最中に30代だったから、現在は70~80代だ。一般的には「おじいさん」のはずだが、とてもそんなふうには呼べない。

顔がいい。刻まれた年輪もいい。何より<語る言葉>が素晴らしいのだ。

シナリオ、台本といったものがあって、役者がしゃべっているのではないか、と思うほどだ。

事実と回想、それに対する自分の考え、感想など、特別なことを話しているわけではなく、自身の体験を語っているだけなのに、含蓄のある、深い、そのまま名言集に載りそうな言葉の連続である。さすが、本物の「ライトスタッフ(正しい資質)」。

NASAの蔵出し映像と宇宙飛行士たちのインタビューが緻密に構成され、史上最大の冒険が、リアルなものとして目の前で展開される・・・。

この映画には、うーん、参りました。

ザ・ムーン~映画「ザ・ムーン」オリジナル・サウンドトラック

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