碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ありふれていないドラマ『ありふれた奇跡』

2009年01月09日 | テレビ・ラジオ・メディア
「いいなあ、何だかいいなあ」と思いながら見ていた。

昨夜放送されたドラマ『ありふれた奇跡』の第1回目。

山田太一脚本の連ドラ、というだけで、もう泣きそうだ(オーバーだけど)。

この「いいなあ、何だかいいなあ」という感じは、登場人物たちの会話を聞いているときに沸き起こる。

加瀬亮と仲間由紀恵の会話。塩見三省と陣内孝則の会話。やりとりされる言葉が、その人物自身から出てきている。一方的ではなく、言葉と一緒に気持ちの“受け渡し”も為されていることが伝わってくる。

生きている人物の、生きている言葉。

仲間由紀恵も、(普段が下手ってわけじゃないけど)いつもより上手い役者さんに見えるではないか。

駅のホームで死のうとしていた陣内だけでなく、彼を助けた加瀬と仲間もきっと“ワケあり”なのだろう。

いや、人は、誰も皆、ワケありなのだ。

山田太一ドラマには、いわゆる「特別な人」は出てこない。特別じゃない人も特別なのだ、特別じゃない人生なんてない、と教えてくれるのが山田太一ドラマである。

倉本さんの『風のガーデン』に続いて、これが山田さん<最後の連ドラ>だ。これまた来週以降も見てしまう1本に決定。


山田さん脚本の旧作も見たくなる。このタイミングで、TBSが『岸辺のアルバム』や『ふぞろいの林檎たち』を再放送してくれたらいいんだけどなあ。

いや、それだけじゃなく、NHKは芸術祭優秀賞受賞の『ながらえば』をはじめ『夕暮れて』や『男たちの旅路』といった名作を流す。そして、テレビ朝日は、テレビ大賞優秀番組賞を受賞した『終りに見た街』を再放送する。

3ヶ月間、各放送局が会社の枠を超えて、<山田太一クール>を現出させるのだ。

いいなあ、いいだろうなあ。

岸辺のアルバム (光文社文庫)
山田 太一
光文社

このアイテムの詳細を見る