なるほど、と思った。
プールの中にデッキチェアを置くとは、確かにアイデアである。
足を水に浸しながら寝転がるのは、なかなかの快感だ。
その体勢のまま、日本より持参の『開高健エッセイ選集 白いページ』(光文社文庫の新刊)を、ひたすら読みふける。
その中に、「読む」と題する文章があった。
モーム、グリーン、そしてイヴリン・ウオーなどに触れながら、ふいに「いま私はサイゴンにいる」と開高さん。
これは73年に書かれたものであり、そこから8年前、つまり65年当時のヴェトナムの回想へと入っていく。
「ワシントンとモスコオとペキンはそれぞれこの国をどう取引しあったのか」という文章からは、開高さんの嘆息が聞こえるようだ。
そして、結びの一行は、どこか今日のような・・・
「空はうるんで、暑くて、青いのだが。」