『日刊ゲンダイ』のコラム「テレビとはナンだ!」。
本日(24日)発売の掲載分では、NHKのドラマ『気骨の判決』について書いた。
<戦争特番減少の中で光っていたNスペ『気骨の判決』>
かつては、毎年8月15日前後に各局が“終戦特番”を放送したものだ。それがいつの間にか、あまり見かけなくなった。
今年も、民放でいえばテレビ朝日が15日の午後帯で「原爆~63年目の真実」を再放送し、フジが「土曜プレミアム」枠で映画「硫黄島からの手紙」を流したくらいだ。
日本テレビもTBSも“通常運転”である。
そんな中で光っていたのが16日夜のNHKスペシャル『気骨の判決』だ。
昭和17年に行われた衆議院選挙。各地で政府や自治体など組織ぐるみの選挙妨害が横行し、結果、翼賛候補者が大量に当選した。
このドラマは鹿児島二区での「選挙無効」の判決を下した実在の裁判長・吉田久の“戦い”を描いたものだ。
まず、この時代に法律家としての筋を通した吉田の存在に驚く。上司や司法大臣からの圧力にも屈せず、静かに信念を貫く姿を小林薫が好演している。
次に、上からの指示で妨害や干渉を行った人々が「国策に従って何が悪い」と憤ることの怖さと悲しさ。ドラマは、当時の“空気”というものを丁寧に再現していた。
これを制作したのはNHK名古屋だ。これまでも『鬼太郎が見た玉砕』や『最後の戦犯』といった“終戦ドラマ”の秀作を送り出してきた。
戦争が加速度的に風化していくことへの楔として、テレビに何が出来るか。今後も挑戦が続きそうだ。
(『日刊ゲンダイ』2009.08.25付け)