碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ドラマ『気骨の判決』

2009年08月24日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』のコラム「テレビとはナンだ!」。

本日(24日)発売の掲載分では、NHKのドラマ『気骨の判決』について書いた。


<戦争特番減少の中で光っていたNスペ『気骨の判決』>

かつては、毎年8月15日前後に各局が“終戦特番”を放送したものだ。それがいつの間にか、あまり見かけなくなった。

今年も、民放でいえばテレビ朝日が15日の午後帯で「原爆~63年目の真実」を再放送し、フジが「土曜プレミアム」枠で映画「硫黄島からの手紙」を流したくらいだ。

日本テレビもTBSも“通常運転”である。

そんな中で光っていたのが16日夜のNHKスペシャル『気骨の判決』だ。

昭和17年に行われた衆議院選挙。各地で政府や自治体など組織ぐるみの選挙妨害が横行し、結果、翼賛候補者が大量に当選した。

このドラマは鹿児島二区での「選挙無効」の判決を下した実在の裁判長・吉田久の“戦い”を描いたものだ。

まず、この時代に法律家としての筋を通した吉田の存在に驚く。上司や司法大臣からの圧力にも屈せず、静かに信念を貫く姿を小林薫が好演している。

次に、上からの指示で妨害や干渉を行った人々が「国策に従って何が悪い」と憤ることの怖さと悲しさ。ドラマは、当時の“空気”というものを丁寧に再現していた。

これを制作したのはNHK名古屋だ。これまでも『鬼太郎が見た玉砕』や『最後の戦犯』といった“終戦ドラマ”の秀作を送り出してきた。

戦争が加速度的に風化していくことへの楔として、テレビに何が出来るか。今後も挑戦が続きそうだ。
(『日刊ゲンダイ』2009.08.25付け)