日刊ゲンダイに連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。
今週は、ドラマ「ゴーイングマイホーム」を取り上げました。
「ゴーイングマイホーム」
フジテレビは
初回視聴率13%を喜ぶべきだ
フジテレビは
初回視聴率13%を喜ぶべきだ
先週、連ドラ「ゴーイングマイホーム」(フジテレビ系、火曜夜10時)が始まった。脚本・演出を映画「誰も知らない」などの是枝裕和監督が務めているが、驚くべきホームドラマである。
登場するのは阿部寛と山口智子の夫婦をはじめ、ごく普通の人物ばかり。しかもそこで展開されるのは日々の仕事であり、子供の教育であり、親の世話だ。殺人事件も派手な恋愛も、泣かせる難病も出てこない。
それなのに彼らの日常から目が離せない。ドラマでありながらドキュメンタリーのようなリアル感があり、先が読めないからだ。
また、是枝演出による阿部や山口の演技の自然なこと。会話も実在の夫婦のようだ。そこにはドラマらしい大仰な言葉、ドラマで聞いたことのある言葉はない。
たとえばCM用の料理を手掛けるフードスタイリストである山口智子が笑顔で言う。「美味しそうと、美味しいは別なんだよ」。
聞けば、初回視聴率13%にフジテレビは不満を漏らしたとか。とんでもないことだ。
何しろ普段視聴者が目にする“お手軽”ドラマとは別物なのである。違和感を持ってもおかしくない。むしろ13%取ったことで、今どきの視聴者のレベルの高さを喜ぶべきだろう。
たとえ次回の視聴率が下がっても、この秋「大人が見るべき1本」として、口コミでじわじわと支持が広がるはずだ。
(日刊ゲンダイ 2012.10.17)