基本の先にオリジナルがある。
舞踊の着付けの話です。
普段のきものの着付けと、歌舞伎や日本舞踊の着付けは、基本的に違うところも多くあります。
そんな着付けを学ぶのが「日本舞踊の着付け講座」です。
大道具、小道具、音響、照明、化粧、カツラ、そして衣裳と、表舞台を支える舞台裏の集団の仕事はどれひとつ取っても欠かせないものです。
舞台進行の狂言さんや演者の舞台をサポートする後見さんも舞台裏の屋台骨です。
その一翼を担う衣裳方の着付けは、江戸時代から続けられてきた大切な仕事。
幾多の先人たちが、舞台衣裳の着付けに携わって作り出された着付けの形。
重い衣裳を着崩れないように着せる技術は、先輩から後輩に受け継がれ、衣裳方の技術になってきています。
補整などに見られるように、時代とともに進化してきた面も多く、舞台栄えする衣裳は観客を魅了します。
どんな仕事でも基本があります。
基本に沿わないと、うまく仕事が運ばないから存在するのです。
ですから基本は、全てに優先して身につけておかないといけない訳です。
ある有名な衣裳方が、「私たち衣裳方は後輩に、つの出しは教えますが、手の内は教えません。」と言われていたのを思い出します。
『基本は教えるが、あとは見て盗め』とおっしゃっているわけです。
言い換えると、基本は技術であり、盗むものは技(ワザ)…と言ったほうが分かりやすいでしょうか。
「盗め」と言っている着付けの技は、彼自身が作り出してきたオリジナルで、教えるものではないのかもしれません。
基本の上に、幾たびも失敗を重ねて作り上げたベテランの衣裳方には、それぞれのオリジナル…つまり技があるわけです。
着付けで同じように悩み、考えている後輩が見たら、先輩の工夫が見えてくるわけでしょう。
その時に技が盗めるわけです。
最初からすごいワザが身につく訳ではありません。
まず基本をじっくりと身につくまで、考えていなくても体が動くまでくり返しやり続けましょう。
基本の延長線にしか、オリジナルは出来ないのだと考えています。