創立以来、35回目の認定式!
1980年(昭和55年)に創立されて以来35年間、「地域にきもの文化を伝えるため」に、活動を続けてまいりました。
毎年、「講師資格認定証授与式」を開催してまいりましたが、今回の認定式も35回目を数えます。
認定式が終わった後は、認定者へのお祝いの行事として、「きものフェスティバル」が行われます。
今年の時代風俗衣裳の課題は、「十二単着付けショー」。
海外でも活躍する、全国的にも有名な、和太鼓「響座」の出演も決まりました。
「振袖着付けショー」や「花帯ショー」など、華やかな企画も目白押しです。
11月に向けて、今日から講師会議で打ち合わせ。
厳粛な「認定証授与式」のあとで開かれる「きものフェスティバル」は、ショーの細かい取決めや出演依頼、モデルの決定など、決めるべき問題が山積しています。
11月5日の開催日まで、折りに触れて会議を積み重ねます。
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浴衣から十二単まで
私たち「きつけ塾いちき」には、一般に言われる「きもの着付け教室」があります。
例えば、「ゆかた」、「普段着」、「正装」、「振袖」などの着付けがそうです。
もう一つの特徴は、一般の着付けとは異なるものがある事です。
それが、「宮廷衣裳の着付け/十二単」と「衣裳方/歌舞伎衣裳と日本舞踊の着付け」です。
幅広い分野からお越しいただいています。
この、十二単と日本舞踊の着付けは、市来学院長が30年以上に亘って、京都と東京の専門家の門を叩き、学び続けてきた独自の財産です。
九州での十二単の需要は少ないので、ショーとしての役割があるだけですが、「歌舞伎衣裳/日本舞踊の着付け」は、現在多くの生徒さんが学んでいます。
受講生の構成は、初心者・主婦のみなさん・他校の学院長・日本舞踊のお師匠さん・着付け教室の講師・美容師・ブライダル関係のスタッフなど、巾ひろい分野からお越しいただいています。
伝えたい…集団の技/個人の技
日本舞踊着付けの教室で学ぶのは、舞台裏の着付けで役立つ、基本的で実践的な技術です。
この技術は「集団の技」といえます。
一方、現場で着付けを続けて、腕が上がっていくと、各チームで独自のやり方が生まれてきます。
私たちの集団では、そんなに多くありませんが、東京の松竹衣裳や、京都の小林衣裳や上嶋衣裳の衣裳方のチームでは、補整のやり方から違います。
それは、現場で各チームが作り上げた「個人の技」なのです。
暗転の暗い舞台の袖で、3分~3分半で着付ける「早変わり」などは、相方と息が合ってこそ出来るもの。
独自のやり方が生まれるのは必然です。
どれが正しいとかではなく、高みに生まれた独自の着付け法です。
これらの技術は、現場で磨かないとなかなか身に付きません。
難しい面もありますが、「集団の技」と「個人の技」。少人数でも次の世代に、どうしても伝えたい技術なのです。
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師匠は「山田五十鈴」さんの衣裳方
松竹衣裳の衣裳方、故・岸田先生から30年近く、いろいろな事を教えて頂いていました。
帯の結び方もそのひとつです。
岸田さんは、最後の大女優と言われる、故・「山田五十鈴」さんの衣裳方で、衣裳の買い付けまで任せてもらえるベテランでした。
出身は山田五十鈴さんと同じ京都。
帯を一巻きしたら最後…動かしたらアカン!
その岸田さんが、次のようなことを教えてくれたのを思い出します。
「帯を女優さんに一巻きして、手先の長さが違ったからといって、帯をずらしたりしたら、『チョット、衣裳方を変えて!』と言われてしまうんです。ですから、手先を間違えないで、一巻きしたら絶対に動かしたらアカン…」
同じ、松竹衣裳にいた江戸っ子の根津昌平さんも同じことを言っています。根津さんは、あの花柳章太郎さんと、初代・水谷八重子さんの衣裳方でした。
根津さんの著書の中で、若い時の失敗談として、概略次のような文章が出てきます。
「帯を締め過ぎると…荷造りじゃないんだから。ゆるいと…気持ちが悪いと言われる。帯結びでグズグズしていると、帯をひったくって自分で締め始める。…お前みたいな衣裳付きなんかいらない…ということですよ。」
プロの着付けの厳しさを教えてくれています。
着付けの技術は盗むものでした。
私たちの師匠、岸田さんとは、一週間に一・二回は電話でお話を聞き、お勉強させて頂いていました。
そんな中で、教えて頂いたのは、
「技術は教えもらっても身に付かない。見て覚え、盗んでこそ本物が身に付く」ということでした。
一方、根津さんも、
「『教えてもらいたければ、一升もってこい』と言われて一升持って行っても別に教えてくれるわけじゃない。
先輩が着せるのを後ろから見ているだけ。…やることが早くって、手際が良い。…これはいまでもいえることですが、要するに、相手から技を盗むしかないんです。」(根津さんの文章から)
私は、今も昔も、同じだと思うのですが…いかがでしょうか。
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この帯結びの手先は何センチ?
帯結びのおけいこをすると、受講生から「手先は何㎝ですか?」とよく聞かれます。
「これくらいです」と手先をつかんでいうと、定規を持ってきて計る人もいます。
でも、「これくらい」なのです。
半巾帯、角帯、袋帯、どんな帯でも「これくらい」です。
角帯の「貝ノ口」の手先でも、その厚みや硬さによって、手先は微妙に違います。
舞踊の着付けの場合、同じ貝ノ口でも、真面目な商家の番頭さんと、小粋な遊び人とでは結ぶ位置と形が違うのです。
ですから手先の長さも、「これくらい」なのです。
踊りでよく結ばれる「つの出し」でも、初々しい町娘と芸者では形と大きさがずいぶん違います。
また、狭い座敷と、千人以上の舞台で踊る「つの出し」は、その大きさや形が違ってきます。
ですから、あくまでも「手先の長さはこれくらい」なのです。
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新たな帯結びも学んで…
鹿児島の「きつけ塾いちき」は、来年の成人式に向けて、振袖の着付けのおけいこが始まりました。
題して「振袖特訓」。
プロの着付けを自分のものにするため、積極的に学ぶ方のために行われています。
今日は「昼の部」と、「夜の部」に分かれて技術のお勉強をしました。
使わないと落ちてしまうプロの技術
今年の成人式から7か月。ベテランでも、日頃着付けをしていないと自分の手が忘れかける時期。
この時期から訓練を始めておかないと手が忘れるのです。
むかし、ベテランの看板書きの職人さんが、お休みの日でも筆を使っていたのを思い出します。
スポーツでも、さぼっていると記録を守れません。
着付けも、身体が覚えるまで使わないと落ちてしまう、デリケートな技術なのです。
自分できものを着れる技術と、料金を頂いて着付けをさせて頂く技術は根本的に違います。
がんばって、プロの技術を学びましょう。
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