「男髪結い師」と「女髪結い師」
髪結いの歴史は男髪結いが古く、自宅で開業するのを「髪結い床」と言っていましたが、出張で出かけていた髪結いもいました。男性はひんぱんに髪結い床に通っていたようです。
一方、江戸時代の女性は、一部の上層階級をのぞいて、「髪を自分で結うのは、当時としては嗜み(たしなみ)」だったために、自分で結っていました。
女髪結いの歴史はずいぶん遅れて、1700年代に始まることになります。
何度か「女髪結いの禁止令」が出ますが、「売色を行なう者がいた」ことや、「自分の髪を他人に結わせるのが贅沢と判断された」など、その原因も諸説があります。
漫画で見る限り、一般の職人に比べて、力仕事をしないためか、襦袢のような下着も身につけているように見えます。
鏡は高価だったために、手桶に満たした水の面に、自分を映す姿が印象的ですよね。
歌舞伎舞踊も描いています。
下は、鎌倉時代から伝わる「近江の国の怪力の女性…お兼」を北斎が描いたものです。絵の右上に…(近江國貝津ノ里 傀偎女 金子 力量)とある。裾長で、帯は前結び、袖は薙刀袖。 (現在の踊り衣裳は、この絵と異なります。)
この物語を題材にして、歌舞伎舞踊、長唄「近江のお兼」…「…色香白歯の團十郎娘…」と謡われるところから、別名「團十郎娘」とも言われる、強い女の踊りが生まれました。
踊りの内容
場所は、近江八景・堅田付近…お兼が出てきて、高下駄で手綱を踏んで暴れ馬を止めます。そのあと、暴れ者の琵琶湖の漁師を相手に大立ち回り。クドキから盆踊りへすすみ、最後に晒しの布を両手で振って幕となります。
下の写真は、私共の衣裳方が着付けた、長唄「近江のお兼」です。
衣裳は、この形が現在の定番になっています。
晒しを振る時は高下駄を履きます。
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ももち文化センター、二日間で五講座を
毎月行われている、「舞踊と振袖の着付け専門特別講座」は、早良区の「ももち文化センター」で、10月5日(水)、6日(木)の二日間、五講座を開催致します。(下記、参照)
なお当日は、初心者の方から着付けのプロまで、幅広い層がお勉強にお越しになります。
日本舞踊の着付けや、振袖のプロの着付けにご興味のある方のご見学は自由です。
ご遠慮なくお越しくださいませ、
なお、お問合せは、090-4489-9745 いちき までお電話いただければ幸いです。
今月の小倉講座はお休みにさせて頂きます。
10月7日(金)は小倉講座の予定でしたが、指導講師が佐賀県の花柳流「をどりの会」(会主・花柳鶴貴三先生)の舞台裏の着付けを担当いたしますので、お休みにさせて頂きます。
来月からは通常通りの講座になりますのでご了承くださいませ。
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江戸時代の漫画が勉強になる➠馬の乗馬
富嶽三十六景を描き、西欧のドガやモネなどに大きな影響を与えたといわれる葛飾北斎。
1760年(宝暦10年)、江戸本所割下水に生まれ、1849年(嘉永2年)4月18日、浅草聖天町「偏照院境内」の仮住まいで90歳で亡くなるまで、100回以上の引っ越しをくり返した稀有の変わり者の画家です。
富嶽三十六景以外で、特に人気のあるのが「北斎漫画」です。
動植物はもちろん、市井の生活を見事に描いた素晴らしいもので、衣裳や江戸時代の生活研究にも事欠きません。
これから時々、北斎漫画の紹介をこの紙面で掲載していこうと思います。
まず最初は「乗馬の図」です。
よく見るとわかって頂けると思いますが、馬の右側から乗り降りしています。これは身分の上下を問わず変わりません。
しかし明治維新後、西欧式の軍隊以降、馬の左側から乗るようになったのです。
時代劇の映像で、馬の左から乗るような侍がいたら、時代考証の担当者や監督がわかっていないということかもしれません。
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着付師が学ばなければならない、「きものの常識」
今日から「附下げ・留袖コース」を学ぶ W さん。
過日「振袖専科」のお免状も取得された美容室のオーナーです。
今日は、「附下げ・留袖コース」1回目のお稽古で、TPOもお勉強されました。
ところで、着付師が着付けをする場合、帯の高さひとつとっても常識があります。
最近の着付けを見ると、常識を知らないで帯を締めているのには驚かされます。
振袖や留袖、男の袴などの帯の位置にも、長い時間の中で試され淘汰され、生き残ってきた歴史的な意味があるわけです。
着付けだけお稽古しても、帯の位置を知らないで結んだら大きな失敗をすることになるわけです。
しかも昨今、周りの方も「きものの常識」をご存じないために、失敗した着付けに、周りも・着付師自身も気付かないのです。悲しい現実ではあります。
●なぜ振袖の帯は高く締めなければならないのか。
●なぜ留袖の帯は振袖より低いのか。
●なぜ男の角帯は腰骨で決めなければならないのか。
帯結びひとつとっても、「きものの理論と常識」を知らないと結べません。
きものに関わる人(プロ)が学ばなければならないことは山ほどあるのです。
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10月9日に周南市文化会館で17演目
平成28年10月9日(日)、山口県周南市の文化会館で、「第16回周南邦舞連盟・舞踊公演」が開催されます。
この公演には、小倉の「舞踊と振袖の着付け専門特別講座」でお勉強させて頂いている仲間のお一人が出演されます。
「きつけ塾いちき」は、前日まで佐賀県立美術館ホールの、「花柳鶴貴三会」の着付けに伺っていますので、周南の舞踊公演に行けないのが残念です。
この公演の衣裳担当は「小林衣裳店(京都)」、かつら担当は「酒井かつら店(京都)」。小道具は「小丸屋(京都)」。
いずれも日頃お世話になっている、一流のスタッフの皆さまです。
公演の成功を心から願っています。
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