2021年11月04日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[サハリン州 太平洋サケマス増殖事業 稚魚飼料 指定メーカ製品輸入停止解除も厳しい検査]
サハリン州業界は、太平洋サケマス増殖事業における稚魚飼料が当局により輸入停止となり、その後、解除されたものの、厳しい検査体制が敷かれることになり困難に直面している。
サハリン州サケマス増殖事業協会はロシア動植物衛生監督局に飼料製品の輸入停止問題の解決を求めた。
ロシア動植物衛生監督局は、検査により、輸出国当局の飼料製品輸出企業活動に関する管理不備を指摘、2021年10月27日より、デンマークからの飼料製品の輸入停止措置をとった。
その後、同年11月3日、ロシア動植物衛生監督局は、新たな命令を発し、当日から問題となっているデンマークの企業を含め、デンマークからの輸入停止措置を解除したが、ロシアに到着した製品は強化された検査・監視の対象になるだろうと説明している。
サハリン州の増殖事業企業・施設への飼料供給は、デンマークの“アレル・アクワ”(Аллер Аква)社がほぼ独占状態だった。
しかし、ロシア動植物衛生監督局は、デンマーク企業からの飼料製品輸入に一時的制限を課した。
2021年漁期から2022年に向けた事業において、稚魚飼料は350トン以上必要となるが、現在、ロシア国内在庫は116トンとされている。
サハリン州サケマス増殖事業協会キリル・プロスクリャコフは、“アレル・アクワ”社の供給体制が受注生産であることを考えると時間的猶予はないと語り、同社の飼料について、使用実績が20年間におよび、2度-3度の低水温での摂餌に対応した地元の孵化場の需要に適した製品であって、代替メーカの製品は、それぞれ他の施設用に向け独自に配合されたものであることから、それらを調達流用することは技術的に不可能だと加えた。
サハリン州の孵化場は現在68施設が活動を行っており、飼料調達問題から25施設が閉鎖に追い込まれる可能性がある。
プロスクリャコフは、これらの孵化場が飼料を調達できず稚魚が斃死した場合、その先、年間約2万3,000トンの資源、2021年の市場価格で63億ルーブル相当の損失が発生することになると説明した。
サハリン州漁業者協会会長マキシム・コズロフも事態は非常に深刻だとしている。
ロシア動植物衛生監督局局長セルゲイ・ダンクベルトに対する問題解決に向けた要請は、業界ばかりでなく、州政府も行っている。
サハリン州水産部長イワン・ラドチェンコは、同州の孵化場が毎年約10億尾の稚魚放流を行っており、これらの再生産のための活動は、産業にとって極めて特別な役割を果たしていると指摘している。
なお、ロシア動植物衛生監督局は、同年11月11日、通信を利用して業界団体らと会議を開催し、当該問題について話し合いの場を設定したと明らかにしている。