2023年11月27日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[カムチャツカ企業と漁業庁の“投資クオータ”をめぐる審理がモスクワ仲裁裁判所で始まる]
原告をロシア漁業庁とし、被告をカムチャツカ地方最大手水産会社“ヴィチャズ・アフト”(Витязь-Авто)とする“投資クオータ”利用等をめぐる審理がモスクワ仲裁裁判所で始まった。
2018年5月、陸上水産加工場の建設と基準を満たす運営が義務付けされた“投資クオータ”第1弾の資源利用契約をロシア漁業庁と“ヴィチャズ・アフト”が締結した。
“ヴィチャズ・アフト”は、陸上水産加工場を竣工させ2020年1月に操業を開始したが、当該クオータで利用した資源の70%以上を製品にしなければならない規則を守らなかった。
2022年12月、ロシア漁業庁は、2年間、この規則を遵守しなかったとして“ヴィチャズ・アフト”に対し18億ルーブルの罰金を求め、これが訴訟に発展した。
“ヴィチャズ・アフト”はロシア国内の経済危機を理由に一部活動を停止した経緯がある。
“ヴィチャズ・アフト”は、漁労から加工、流通小売まで行う垂直統合型ビジネスを行ってきたが、加工部門の一部を停止し、小売店舗を閉鎖した。
新型コロナウイルスのパンデミック以前となる2020年初めまであった小売7店舗は、後に3店舗となり、そして、全て閉店となっていることが同年末に確認された。
しかし、2023年5月、*前農業大臣アレクサンドル・トカチョフの親族が経営するクラスノダール登記の企業がこれを買収したことが伝えられている。
“ヴィチャズ・アフト”は、サケマス、スケトウダラ等を中心に1日あたり120トンの加工処理施設を運営、小売店では、プレミアムの“Mirandel”と大衆向け“Kamvita”の2つのブランドをもって、魚卵、スモーク、フィレ等、様々な製品を販売してきた。
“ヴィチャズ・アフト”の代表者は、加工部門の一部停止と小売店舗閉鎖の最終的意思決定を導き出したものは、ウクライナの事情による一連の制裁措置だと説明し、高金利、自国通貨の変動、他国との関係により、自社ブランドに対する需要減少と生産コストの上昇、とりわけエネルギー・コストの増加を指摘した経緯がある。
2023年9月には、カムチャツカ地方仲裁裁判所が、やはり“投資クオータ”にアクセスした同地方の漁業・水産加工業大手“ソクラ”(Сокра)社に対する、債権者としてのロシア貯蓄銀行“ズベルバンク”(Сбербанк)による破産申し立てを2023年5月に受理、これらを含めた10億ルーブルを超える債権請求を正当なものと認めている。
同行が2021年に“ソクラ”社に38億ルーブルの融資を行ったと伝えられている。
破産管財人にかかる法廷審理が2023年12月4日に予定されている。
報告担当者:原口聖二:*アレクサンドル・トカチョフ
(Александр Ткачёв)
1960年12月23日生まれ クラスノダール地方ヴィセリキ出身。
1983年クバン高等技術専門学校を卒業し、地元の飼料工場に技師として就職、主任技師を経て、1986年ヴィセリキ地区党委員会第一書記になる。
1990年ヴィセリキ飼料工場支配人に選出される。
1993年同工場が民営化に伴い株式会社“アグロコンプレクス”になると同社社長に就任。
1994年クラスノダール地方議会議員を経て、翌1995年ロシア連邦議会下院国家会議代議員に選出され、この間、下院の常任委員長やクバン農業協同組合長などを歴任する。
2000年経済学博士号取得。
2001年-2015年 クラスノダール地方知事。
2015年-2018年 ロシア農業大臣。