2023年11月16日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#68 洋上風力発電と漁業 海外の経験 デンマーク オーステッド 相次ぐPJ撤退 経営陣刷新]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
洋上風力発電開発事業者として世界最大クラスのデンマークの”オーステッド”(Ørsted)社は、米国でのプロジェクトに次いで、ノルウエーでのプロジェクトからも撤退する。
”オーステッド”は、投資家の信頼回復を目的に今般、経営陣の刷新を行った。
財務責任者のダニエル・レルプと最高執行責任者のリチャード・ハンターが退任、それぞれ、欧州事業の最高責任者であるラスムス・アーボーと、取締役会のメンバーであるアンドリュー・ブラウンが暫定的に着任する。
2021年からオーステッドの最高経営責任者を務めるマッズ・ニッパーは、“新しくてこれまでとは異なる能力”が必要だと述べた。
デンマーク政府が50%以上を所有する同グループの株価は今年2023年に入って約55%下落している。