2024年02月28日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#77 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 ワシントンポスト紙 MD州計画 一時停止が懸命]
“Democracy Dies in Darkness”「民主主義は暗闇の中で死ぬ」
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
この中にあって、米国メリーランド州(知事:民主党ウエス・ムーア)の洋上風力発電プロジェクト計画を一時停止するのが懸命だと民主党支持紙“ザ・ワシントン・ポスト”が、2024年2月23日、論評している。
同紙は、メリーランド州の洋上風力発電プロジェクト変更法案が、コスト、料金支払者の保護、メリーランド州経済へのダメージについての懸念を引き起こす大きな変更を提案していると指摘している。
当該法案は、洋上再生可能エネルギー価格上限を3倍の252ドル/MW/h(時間)に引き上げることを提案しているが、これは市場価格の27ドルをはるかに超えており、価値の証拠や料金支払者への保護策はほとんど見当たらない。
国の補助金不足による開発事業者の撤退などの最近の動向は、洋上風力発電プロジェクトの短期的な財政的課題を浮き彫りにしている。
一方で長期的な価値を示す証拠はほとんど存在していない。
料金支払者の計算の複雑さと、将来の電力価格およびシステム全体の設計をめぐる不確実性を考慮すると、メリーランド州にとって洋上風力発電開発を再評価することが賢明だと言える。
国は高額なプロジェクトを急いで進めるのではなく、新しい技術などの代替案を模索すべきである。