2024年08月09日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア食品輸入禁止措置がロシア産水産物の国内市場への供給拡大・漁業発展のインセンティヴとなる]]
ロシアは、2014年にクリミア半島を併合したことに対して、西側諸国が一連の制裁を講じたため、この対抗措置として関係国からの水産物製品の輸入禁止を継続している。
食品禁輸措置の導入は、ロシア漁業の発展に強力なインセンティヴを与え、食料安全保障に貢献することとなった。
この10年間でロシアの水産物製品輸入量は35.3%減少し65万6,000トンとなった。
長期的なダイナミクスは波打っているが、年平均下落率は3%で、禁輸措置の最初の3年間において、その量は100万トンから51万2,000トンとなり、ほぼ1/2に減少、2021年には70万トンに増加したが、現在、再び活発な衰退期が到来している。
2023年、ロシアの水産物自給率は163%に達しており、たとえば、ニシンは、世界最大の生産国であるにもかかわらず、2014年まで、欧州の水産加工原料を輸入するほうがロシアの食品加工業者にとって価格も含め利便性があったが、現在は国産原料に重点を置いており、2013年から2022年にかけ輸入量は半分以下の7万1,000トンに減少した。
また、食品禁輸措置はロシア漁業者のスプラット(шпрот:シュプロット)資源の開発にもインセンティヴを与えた。
現在、ラトビア産のスプラット製品は、ロシア国産製品に置換されており、昨年、2023年、ロシア漁業者が当該資源漁獲量を増加させ、キルカ(Килька:スプラットの一種)を2万7,400トン、スプラットを5万200トン漁獲している。
この10年間でロシアの水棲生物資源漁獲量は100万トン増加して530万トンとなり、養殖漁業生産量は2倍以上の40万トンに達している。
食品禁輸措置は、この養殖漁業の発展にも強いインセンティヴを与えた。
新たなニッチ市場が出現したため、養殖業者は高価格帯のカキ、イガイ(ムール)の事業を本格的に開始し、これらは昨年2023年、8万4,000トン生産された。
現在、小売業界やHoReCaで使用されるカキの70%を国産が占めている。
さらに、養殖サーモンは昨年2023年、2018年の2.4倍となる15万8,600トンが生産されており、調査によると、ロシアの消費者は国産品を優先し、“ムルマンスク・サーモン”(タイセイヨウサケ)や“カレリア・サーモン”(トラウト)を選択している。