ロシア漁業ニュースヘッドライン

北海道機船漁業協同組合連合会
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一般社団法人北洋開発協会

EU  ロシア産水産物に対する新たな制裁措置パッケージ検討 ドイツの出方が注目される  リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

2024-08-16 09:55:01 | 日記

2024年08月16日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[EU  ロシア産水産物に対する新たな制裁措置パッケージ検討 ドイツの出方が注目される]

EUがロシア産水産物に対する新たな制裁措置を夏季休暇明けに検討する可能性が伝えられている。

EU市場に冷凍食品(フライ製品)を広く供給するドイツ加工食品業界は、ロシア産スケトウダラを原料とする冷凍フィレに強く依存しており、同業界は政治的行動を準備している模様であると欧州業界紙が報じた。

この提案はバルト三国が起点で、特にリトアニアが当該措置の導入を主張しているとされている。

EUは、既に、2022年2月のウクライナ侵攻以降、ロシアの新規の輸出者リスト登録を停止、2024年から2026年の新たな自主関税割当(ATQ)制度から、ロシア産の主要なスケトウダラ等の白身魚を含め水産物製品を除外、輸入免税を停止、13.7%の標準関税を設定し、中国等、第3国が再加工した製品についてもこれを対象としている。   

EUがロシア産水産物輸入にさらなる制裁を課すことを決定した場合、加盟国の水産加工食品業者の経営は更に悪化することになる。

制裁措置のパッケージに水産物輸入禁止が含まれる可能性を受け、EU報道官は、現状と将来に関するいくつかの重要な点について説明を行った。

現状、ロシア産水産物をEUが輸入することは、以前の制裁により禁止されていた特定の甲殻類、キャビア、キャビア代替品を除き、引き続き合法であり、一方で、13.7%の標準関税が課せられている。

ロシア産水産物の輸入禁止を含む今後の制裁はEU理事会で決定され、全​​加盟国の全会一致の承認が必要になるが、その時期と詳細はまだ検討中となっている。

ノルウエーとフェロー諸島経由の輸入については、ロシア産として扱われ、既存の制限が適用される措置が講じられている。

これらの報道官の説明は、地政学的緊張が続く中で貿易関係を管理することの複雑さを強調し、EUの制裁政策の変更には慎重な検討が必要であることを浮き彫りにしている。

一方、このような状況下、2022年、ロシアとドイツを結ぶ海底の天然ガスパイプライン、ノルドストリームで起きた爆発について、ドイツの複数のメディアは、ウクライナ人の男が関与していたとして、検察当局が逮捕状を取ったと伝えている。

これまで、ロシアが関与した可能性を指摘する報道さえあった。

このタイミングでのノルドストリーム事件の展開が、ドイツの判断、ロシア産水産物の追加制裁措置の検討にどのような影響を与えるのか留意する必要がある。

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日本EEZ“またがり資源”韓国近海スルメイカ操業2024年度管理期間漁業種別TAC設定完了

2024-08-16 01:33:03 | 日記

2024年08月15日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[日本EEZ“またがり資源”韓国近海スルメイカ操業2024年度管理期間漁業種別TAC設定完了]

韓国海洋水産部は自国EEZでの新年度2024年度漁期(管理期間2024年7月-2025年6月)のスルメイカの漁業種別TAC設定を今般完了した。

大型トロール、西海トロール、そして西南海区中型二艘引き(実証試験枠)の操業が、東経128度以西に限定されており、かつ、これまで、近海網漁船の操業規制に関する情報がなく、海域利用の実態が不明だったが、先に、専門家の情報により、主漁場が西岸沖合であることが分かっている。

この中にあって、新年度2024年度漁期のTAC設定は、実証試験枠、留保枠をすべて含めると、前年度2023年度漁期の77.8%相当となる6万3,091トンで、韓国の東西沿岸沖合の比率は、ほぼ半々となっている。

一方、日本の科学研究機関は、これらの情報に目を向けず、更には遂に、2023年度漁期から、韓国西岸沖合での漁獲量情報を資源評価のために利用することなく完全に除外してしまった。

日本の科学研究機関は、西岸沖合での漁獲量を2022年度漁期まで1%未満-20%と推定していた。

しかし、韓国管理機関の情報をもとにすると、2017年度漁期から2023年度漁期までの間、西岸沖合での漁獲量のシェアは38.2%-79.4%で推移している。

これは、日本の科学研究機関が韓国のスルメイカの月別漁獲量を4月-10月が秋季発生群、12月-3月を冬季発生群、11月を半々と分類していたことによる不具合の発生と推察されるが、明確な説明は現時点で確認されていない。

 

*日本の自国EEZの2022年度-2024年度のTACは、漁獲シェアが高かった2007年当時のデータを参照し生物学的許容漁獲量(ABC)中60%を日本1国で獲れるとの前提で算定した値として、7万9,200トンが設定されているが、最終年度となる2024年度については、この間の資源悪化と、その対応としてのリスク低減を理由に、当初配分を2万9,000トン、残る5万200トンを国が留保することとなった。

 

韓国近海漁業 イカ 2023年度漁期(2024年7月-2025年6月)漁業種別TAC設定(単位:kg) 

 

漁業種

隻数

2024年度漁期(A)

2023年度漁期(B)

増減(A/B)

 
 

2024年7月1日-

2025年6月30日

2023年7月1日- 

2024年6月30日

 
 

大型トロール

40

13,621,000

18,500,000

73.6%

 
 

沖合イカ釣り

401

17,435,000

23,553,751

74.0%

 
 

中型トロール

35

8,172,000

11,100,000

73.6%

 
 

大型巻き網

18

2,724,000

3,700,000

73.6%

 
 

西海トロール(二艘引き)

36

8,172,000

11,100,000

73.6%

 
 

近海網(小規模漁業)

382

4,359,000

6,046,249

72.1%

 
 

留保枠

 

6,000,000

5,000,000

120.0%

 
 

正式TAC計

912

60,483,000

79,000,000

76.6%

 
 

西南海区中型二艘引き実証試験枠

9

2,608,000

2,075,000

125.7%

 
 

正式TAC+試験枠計

921

63,091,000

81,075,000

77.8%

 
 

2024年8月15日 作成 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

 

(参考)韓国スルメイカ2023年度漁期(管理期間2023年7月-2024年6月)漁獲実績

2023年度漁期(管理期間2023年7月-2024年6月)の韓国のスルメイカのTAC管理漁獲量は1万8,950トンで、前年度同期比68%、TAC設定7万9,000トン(実証試験枠を除く)に対する開発率は24%にとどまった。

主要漁業沖合イカ釣りの漁獲量は3,760トン、前年度同期比44%、TAC開発率が16%で終わった。

2020年度漁期から近海網漁船(小規模漁業)にもイカのTAC管理が導入されている。

近海網漁業は、2023年度漁期開始から報告日までに、前年度を11%上回る4,550トンを生産、主要漁業沖合イカ釣りを上回り、西海トロールに次いで韓国近海イカ漁業を牽引する存在となった。

2023年度漁期から西南海区中型二艘引きのTAC実証試験が開始されており、1,580トンを生産した。

これを正式TAC管理漁業種と合算すると生産量は2万530トンで、前年度同期比76%となった。

大型トロール、西海トロール、そして西南海区中型二艘引きが、東経128度以西に限定されている操業海域で約1万1,710トン、さらに近海網が4,360トンを漁獲しており、韓国スルメイカ漁業の実に8割の生産を西岸沖合漁場が占める実績を示した。

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