2024年08月16日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[EU ロシア産水産物に対する新たな制裁措置パッケージ検討 ドイツの出方が注目される]
EUがロシア産水産物に対する新たな制裁措置を夏季休暇明けに検討する可能性が伝えられている。
EU市場に冷凍食品(フライ製品)を広く供給するドイツ加工食品業界は、ロシア産スケトウダラを原料とする冷凍フィレに強く依存しており、同業界は政治的行動を準備している模様であると欧州業界紙が報じた。
この提案はバルト三国が起点で、特にリトアニアが当該措置の導入を主張しているとされている。
EUは、既に、2022年2月のウクライナ侵攻以降、ロシアの新規の輸出者リスト登録を停止、2024年から2026年の新たな自主関税割当(ATQ)制度から、ロシア産の主要なスケトウダラ等の白身魚を含め水産物製品を除外、輸入免税を停止、13.7%の標準関税を設定し、中国等、第3国が再加工した製品についてもこれを対象としている。
EUがロシア産水産物輸入にさらなる制裁を課すことを決定した場合、加盟国の水産加工食品業者の経営は更に悪化することになる。
制裁措置のパッケージに水産物輸入禁止が含まれる可能性を受け、EU報道官は、現状と将来に関するいくつかの重要な点について説明を行った。
現状、ロシア産水産物をEUが輸入することは、以前の制裁により禁止されていた特定の甲殻類、キャビア、キャビア代替品を除き、引き続き合法であり、一方で、13.7%の標準関税が課せられている。
ロシア産水産物の輸入禁止を含む今後の制裁はEU理事会で決定され、全加盟国の全会一致の承認が必要になるが、その時期と詳細はまだ検討中となっている。
ノルウエーとフェロー諸島経由の輸入については、ロシア産として扱われ、既存の制限が適用される措置が講じられている。
これらの報道官の説明は、地政学的緊張が続く中で貿易関係を管理することの複雑さを強調し、EUの制裁政策の変更には慎重な検討が必要であることを浮き彫りにしている。
一方、このような状況下、2022年、ロシアとドイツを結ぶ海底の天然ガスパイプライン、ノルドストリームで起きた爆発について、ドイツの複数のメディアは、ウクライナ人の男が関与していたとして、検察当局が逮捕状を取ったと伝えている。
これまで、ロシアが関与した可能性を指摘する報道さえあった。
このタイミングでのノルドストリーム事件の展開が、ドイツの判断、ロシア産水産物の追加制裁措置の検討にどのような影響を与えるのか留意する必要がある。