早朝、妹夫婦に渋谷まで車で送ってもらって、そこから羽田空港行のリムジンバスに乗った。七時前だったこともあり、首都高もよく流れていて、僅か三十分程で国際線ターミナルに着いた。先程搭乗手続きを終え、荷物も預け、搭乗ゲート前で十時五十分の出発を待っているところである。
滞在中は、母の病床の側でその生涯の最後の五日間を一緒に過ごせたことは、本当に幸いなことだった。そして、その死の前後に、母を見舞いに来てくださった方々、お別れを言いに来てくださった方々と親しく話す時間を恵まれたことは、私にとって掛け替えのない心の宝となっている。それらすべての方々に言葉に尽くせない感謝の気持ちを抱いている。
八時間の時差のお陰で、同日十二日夜にはストラスブールに帰りつける。翌日からは、待ったなしで仕事が始まる。