元日、昨年秋のアルザスでのシンポジウムでご一緒する機会に恵まれた文化人類学者のK先生から、年賀のメールを頂戴した。そこには、昨秋以来の近況と併せて、シンポジウムの際に私に送ると約束してくださったご著書を大晦日に私の勤務大学の研究グループ宛に発送したと記されてあった。帰国直後の体調不良や留守中に山積していた仕事の処理にもかかわらず、しかも諸学会での重責を果たされながら、シンポジウムで初めて会っただけの私へのご著書の発送、それも小包二つに分けたとあったから相当量の発送を忘れずにいてくださったことだけでも、本当に有難いことである。
ところが、そのメールには、ご自身の病気のことも触れられており、そのために正月早々から入院・手術されるとあり、驚くとともに、そのような健康状態にもかかわらず、入院前に約束を果すことを自分に課されるご自身に対する厳しさには胸を打たれた。この五月には、パリでの学会に発表者として参加されるという。八十歳を超えられているが、「まだまだやるべき仕事が山積している」とその学問的探究心は衰えを知らない。
そのメールは、「お元気で、良いお仕事をお続け下さい」と結ばれている。
御礼のメールには、「ご著書を読み、民族・地域・国家を巡る諸問題についてしっかりと勉強し直し、その成果を、感謝の徴として、一日も早くお手元に届けるべく、精進いたします」と書いたが、この新しい年の初めに、これまでの自分の考えをまとめるための研究課題を先生からいただいたような気持ちである。
ささやかではあっても、自分のこれまでの仕事の積み重ねを形にしていくことで、学恩に報いたい。