十二日夜に帰国してから、その翌々日の一昨日が後期最初の講義「中古文学史」、昨日が教員会議、そして今日金曜日午前中が「近世文学史」と、息つく日まもなく、しかも時差ぼけで、午後に抗いがたい睡魔に襲われ、そのまま寝てしまって、午前零時前後に目が覚め、そこから寝ずに朝まで講義の準備を続けていたので、少ししんどかったが、この週末は何の予定もなく、休息が取れそうで、ホッとしている。今日の午後半日だけは、ただただ、ぼんやりしていたい。
朝から小雨が音もなく降っていて、それが一層辺りを静まり返らせている。枯れ葉が落ち尽くしてむき出しになった枝のみが重なり合っている樹々の向こう側の灰色の空を眺めながら、この記事を書いている。
水曜日の最初の講義の前に、教務事務に届いていた、人類学者のK先生が年末に日本から送ってくださった本を取りに行った。合計十八冊、その中には函入りの立派な装丁の本も何冊か含まれていて、その量と重さに驚いた。それらの本の内訳は、先生ご自身の単著が五冊、編著が十二冊、訳書が一冊であった。この三日間、それらを拾い読みしながら、先生がこれまで積み重ねてこられた業績の大きさ、広さ、そして深さに圧倒される思いである。
単著の中では、西アフリカ・フランス・日本での数十年に及ぶフィールドワークの経験と観察に裏打ちされた「文化の三角測量」という方法の適用とその成果を基礎に据えながら、先生ご自身の思想が人類学の枠を超えて様々のテーマを巡って縦横に展開されている。編著には、それぞれの分野で一流の多彩な執筆陣が並んでおり、先生がきわめて優れた共同研究企画者でもあることがそこからわかる。これらの本を一通り読むだけでも、どれだけ多くのことが学べることかと、ワクワクしている。
明日から、それらの本の中の何冊かを紹介しつつ、それらとの対話を通じて、私自身の考えも述べていきたい。