内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

自己認識の方法としての異文化理解(七)

2015-01-14 06:32:42 | 随想

 異文化理解が自己認識の方法であるための手続きの一つとして、歴史の中に自分を「書き込む」という作業が要請される。この作業は、対象である異文化に対する自文化の時空の隔たりを自覚的に計測し、己の立ち位置を両文化との関係において限定することからなる。この自覚的限定作業を経てはじめて、異文化は、単に知的に理解されて終わる対象としてではなく、その構成要素が、歴史の中の現在において、己の立つ場所で、批判的に摂取・継承・展開させうるものとして受容される。
 したがって、歴史の中のこの自覚的限定作業は、それを行うものに自己変容をもたらさずにおかない。なぜなら、この作業を通じて、異文化の構成要素は、たとえそのごく一部であれ、自文化との時空の隔たりを超えて、歴史的関係性を有するものとして己に開かれ、時間的持続性の中で己において生きられるものとなるからである。
 この「歴史の中に自分を書き込む」という作業については、二〇一三年八月十七日十八日の記事でさらに詳しく述べているので、そちらを参照されたい。