山裾の休耕田で栽培している葉タバコが、ピンクのかわいらしい花を付けていた。
ペチュニアに似たきれいな花だが、葉を育てるため、開花前に摘み取られてしまうので、咲き揃った姿を目にすることは珍しい。
葉タバコの栽培は、JTと契約した農家に種子が配付され、収穫した葉タバコを選別し、乾燥して全量をJTに出荷する。
専売公社以来の、生産から製品にいたまでのるシステムは、なんら変わることなく、独占的に今も続けられている。
葉タバコ全体に、猛毒のニコチンが含まれているので、農家の生産過程でも様々な悪影響が出ているようだ。
収穫が終わった葉以外の屑にもニコチンが残り、それを堆肥にして育てた牧草を食べた牛の健康を損ねるとか、桑の木が弱り養蚕に被害をもたらしたなどの事実もあった。
タバコ農家や近隣住民に、呼吸や皮膚疾患など健康被害を及ぼしたり、他の生物への悪影響も報告されている。
誇りを持って作れないことに嫌気が差したのか、生産農家も減少して、この集落でもタバコ畑は1ヶ所しか残っていない。
唯一タバコの効用は、田畑に吸殻を撒いておけば、野生動物は嫌って出てこないし、マムシも逃げ出すといわれている。
ニコチンの毒を知っているのは、人より野生動物かもしれない。
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