昨夜降った雪は10センチを越し、朝方も降り続いていた。
それほどの量では無いので、散歩前の一仕事で雪またじは終わった。
風の無い朝は、雪だけがしんしんと降り、音も色も無い墨絵の世界が広がる。
朝の散歩は林道を上流へ向かって歩いているが、今朝は除雪していなかったので、家並みのある方へUターンした。
雪の朝は、集落は眠ったようで、人の気配はまったくしない。
窓に吊るされた寒干し大根や、春木(飛騨の方言で薪のこと)棚で、生活の匂いが感じられるだけだ。
飛騨作りの板倉は、数十年の風雪に耐えて、誇らしげに構えている。
その傍らでは、栗の大木が暗い空を背に、純白の花を咲かせていた。
雲を割って僅かに日が差し始めた頃、ごう音をとどろかせて除雪車がやって来た。
杉林の左手にわが田んぼがあるが、今は雪が深くて近づけない。
1時間ほどの散歩で家に戻ってきたら、青空が広がり、久しぶりの太陽が眩しかった。
これも束の間の青空で、再び鉛色の雲に覆われてしまった。
山里は、晴れたかと思うと雪が降り、春になったかと期待すると、すぐに冬に逆戻りする。
思いを寄せれば袖にされるので、密かにかなう日を待つことにしている。