kotoba日記                     小久保圭介

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図書館

2013年10月06日 | 生活
図書館の中を
歩いていた

夜のキンモクセイ
あれは暗がりの中の
どの方向からだったか
「キンモクセイ」
と言われるまで
知覚されなかっただろう

花の色や形状
葉の茂りざまは
定まらず
見ていたのは
夜の向こうの
青と赤
キンモクセイと
ジンチョウゲの違いが
未だに判らない

図書館の中を
歩いていた

手にする本は
何度か読んだ
お馴染みのもの

何度読んでも
飽くことなく
言葉の質量が
翌日になって
さらに増す
その不思議

あの
キンモクセイの匂いと
同じです

図書館は
本棚が並んで
記号と番号がある
案内板があり
一の世を
万の世にする

分類し
分類の中で
さらに分類され
読みたい本を手にとる
時に
「随筆」にあるだろう本が
「自然科学」にあったりする

図書館は
ソファがあり
窓があり
水飲み場もある
誰かと横に並んで
本を見ている

誰かが手に取った本は
見ないようにしている
移動する時は
その人の後ろを通るか
無理ならば
ささっと前を通りすぎ
結局
横並びのまま
斜め横から
本棚を見ることになる
動かぬ人ならば
手にとって
独り言でも言おうものなら
あとから
その場所に戻る

「ありがとうございました」
図書館員が言う
いつからだろう
礼を言われるようになったのは
「貸してもらっている」
という思いが
おそらく
ずっと続くのだろうから
礼はいりません
と思う

以前
図書館員は
強かった
しゃべる人がいれば
飛んできて
「静かに」
と言った
まだ
貸し出しカードが
本に付いていた頃
貸し出し日
返却日が
スタンプされていた
それが多ければ
人気がある本だと判った
あの黒いインク板に
あの青いインク板に
スタンプを「がしゃん」
と音を出して
カードに押す

カウンターの中にいる
図書館員は
無口で
たいてい本を読んでいた

図書館に勤める人は
本を読む人でもあったのだ
整然と並ぶ本や
静かな館内も
美しかった

けれど
本に目を落とす
図書館員が
美しかった

あれから
おそらく
習慣的に
どこに引っ越しても
必ず
ゆく
図書館

今日も歩いている
呼ばれるままに
本に近づき
手にとって
目次や
解説を
見る

みんな
本を抱え
歩いている