道路
濡れている
サンダルを持って
出る
帰り道
寄らねばならぬ場所があり
土で汚れた靴だと
ちょっとまずい場所
茎ワカメの歌をみんなが歌う時
冬の晴天は
爽やかで
--- 『彼はいつも一人』 ---
彼はいつも一人
ケータイを見て
挨拶をしても
ただ
こっちを見るだけ
彼はいつも一人
朝一番に小屋にいて
夕方帰る
誰も彼に話しかけず
黙々と労働をし
手を抜くことを知らず
彼を呼ぶと
彼は来る
無言で
彼が自分で話しているところを
一度も見たことがなく
表情も変えない
ただ聞いて
動く
彼はいつも一人
怠けず
ただ言われたとおりにする
彼の声を誰が聞いただろう
おそらく誰も
彼はいつも一人
彼が一度だけ微笑んだことがある
まだ彼をあまり知らされない時に
彼はいつも一人
静かにしていて
誰とも交わらず
笑わず
話さない
ただ聞いている
話を
彼はいつも一人
彼の声はどこで出るのだろう
出ないのかもしれない
世の中は彼の目に
どう映っているのだろう
いろんなものを見ているはずだ
孤独だからこそ
よく見えるものがある
それはこころだ
彼はいつも一人
思いは
ぽとんと地面に落ちて
雨に流され消えてゆく
何かを記すことはなく
誰にも何も話さない
今も昔もこれからも
本当の一人というものを
彼は当たり前に受け入れ
欲しがることは何もない
ただ
淡々と
誰よりも早く起きて
誰よりも早く労働場にきて
誰よりも黙々と働き
夕暮れになると帰ってゆく
彼を小馬鹿にする人もいれば
そうでない人もいる
みんな彼に接して
あらためて自分が当たり前に持っているものを
知る
そして
瞬時に忘れ
馬鹿話に戻る
彼はいつも一人
眠り入る
夜の温かみに
丸く包まれ
自分の中に
美しい川が流れているのを知らず
清らかなせせらぎの音を鳴らしているのも
気づかずに