kotoba日記                     小久保圭介

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人間の湯たんぽ

2013年11月11日 | 生活


昼の公園
「ほんとうに仏さまみたいですね」

わたしが言う
すると
「神さまですね」

わたしに言う
「仏さまと神さまが話していますね」

ゆっくりした口調で
笑って
言う

色づく木の葉

日暮れは早く
暗くなった道を
わたしたち
歩いてゆく

早く帰らないと
彼の布団を敷かないと
ご飯を炊かないと
そう思って
地下鉄に乗った

仏でも神でもない
人間のために
湯たんぽを用意する
夜の冷えは
人間を駄目にするので
湯たんぽを
布団にしのばせる
足先のあたりに
見当をつけて


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ひとりひとりのものがたり

2013年11月08日 | 生活
ホームの椅子で
地下鉄を待っている

っと思って
目を合わせ
知人と間近で出くわして
「あ」
「あ」
と互いにびっくりし
急な出会いの中で
その人は
まずわたしのことを訊き
自分のことを話した
地下鉄が来て
話の中にいるその人を
地下鉄の中まで持ち込んで
すでにその時は
まっしぐらに
その人は話し続けていた
ニコニコとして
短い時間の中で
たくさんのことを
話さなくちゃいけない
その焦りから
その人は話し続けた
わたしは聞いていた

その人のめまぐるしく変わる
表情を見ていた
その人が降りる駅に着いたので
知らせると
「ああ、ああ、じゃあまたあ」
と言って
その人は降りて
人の群に
入っていった

地下鉄に乗っていると
よく思う
ひとりひとりが
語るべき
物語を持っていることを

それを聞き取りたいと
耳を澄ませる
目で見る

あの人もまた
膨大な物語を持っていて
わたしは
その書記官
ただ書きとめる
わたしとは
関係のない人生を
ただ書きとめる

関係のない
と言った時点で
すでに
あの人の中に
わたしを探す
あなたの中に
わたしを探す



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西の空が明るめば

2013年11月07日 | 生活
昼の驟雨
土で汚れたカッパを
貸してもらった

天気予報は
くもりのち晴
と言っていたのだし
カッパも傘も
持ってはこなかった

坂道の勾配は急で
自転車が猛スピードで
駅まで降りてゆく

車が通るたび
足もとが揺れるので
暗渠の上にいるのだ
と判った

驟雨はやがてあがり
西の空が明るめば
それは
希望の空だ

希望とは
人の
生き方の
概念ではない

雨がやんで
空が青くなってゆくことを
希望と
いうのだ


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ミギちゃんは鳴る

2013年11月06日 | 生活


ミギちゃんは
目尻にしわを作って
よく笑う
それも声に出して

ミギちゃんと
坂をのぼって
坂をくだって
暗くなった道を
帰ってゆく
「歩くの速いね」
僕が言う
「これでも遅く歩いてる」
ミギちゃんは
目尻にしわを作って
声に出して
笑う
「ははは」

正確に発音するし
「ははは」

三回の「は」なのだ
それがミギちゃんの
笑い声であり
それ以外はない

ミギちゃんは
何かをしゃべり終え
「ははは」
と笑う
僕が何かをしゃべると
「ははは」
と笑う
目尻にしわを作って

笑うことが
息をするみたいに
当たり前になっている
本当に面白いのかな
と思うのだ
本当に
面白いのだろうと思う

そんなミギちゃんと
帰路を急ぐ
道案内の目印を
ふり返って
知らせてくれる


ここは山だった
僕らは
以前
この山に生息していただろう
動物たちのことを
想像さえできずにいる

冬になる前の
夜空の下を
ミギちゃんの
音声が鳴る
「ははは」
と三回
鳴る


昼間
亀と
水鳥を
見た
陽光が作る
たくさんの影も見た

僕たちは
みんな山の中にいた
小動物のように
あちこちに
散る

池のある公園
てんでばらばらに座り
石に座り
椅子に座り
木の根本に座る

ここは
良い場所

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公園にて

2013年11月05日 | 生活


芝生の公園
まだ言葉をたくさんしらない
子供が
モンキイチョウを
追っている
手をのばして
チョウをとらえようと
とことこ歩いて
母がその子を追っている
「子供が蝶々を追っていますね」
あらかわさんが
笑う

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藁(わら)に、もたれて

2013年11月04日 | 生活
雨あがりの朝
西の空に虹を探す
車窓から見えるものは
藁焼きの
白煙

稲を刈った田に
積まれた藁束
そこにもたれて
藁の匂う中で
陽光の中で
子供だったとき
何を思っていたのだろうか
あの藁の色

土壁に練られてもいた藁

この街にくると
彼を思い出す
彼はここに住んでいたので

彼の所作を思い出す
彼はこの道を
必ず通っていたはずだ

空を
見た

「どうしてみんなあんなに楽しそうなんだろう」
彼は横の僕に訊いた
僕は何も応えなかった
彼の寂しさは
彼だけのものだった

午後になると
凄い風 吹く


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ねむるの週末

2013年11月02日 | 生活


桜ヶ丘公園で
ねむるの週末

ねむる

昨日見た
大きな木
40年は生きているというので
「性(しょう)入っとおるけん切れん」
という

桜ヶ丘公園で
ねむるの週末

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