政府が人工多能性幹細胞(ⅰPS細胞)に由来する医薬品製造を巡り、細胞培養などの工程を全て自動化する技術開発の支援に乗り出すことが8月17日、関係者への取材で分かった。
ⅰPS細胞は作製工程が複雑で、手作業のため費用が高く、品質がばらつく課題があった。
ⅰPS細胞を使う再生医療の実用化を見据え、低価格で高品質な製品を安定供給できる体制の確立を目指す。
ⅰPS細胞を使う治療は、心臓病、パーキンソン病、脊髄損傷などで臨床研究が進んでおり、日本が世界をリードする分野と期待される。
研究から実用化までを「バトンをつなぐ」ように、国内で医薬品の製造まで連続的かつ円滑に進む技術を開発し、日本の優位性を強固にする狙いがある。
文部科学省はⅰPS細胞の作製を自動化できれば、1人当たり約4千万円の費用を約100万円にでき、作製数も大幅に増やせると試算する。
研究機関への財政支援など関連費用を2025年度予算案の概算要求に盛り込む方針。
経済産業省も細胞培養や品質分析に関わる機器の企業やソフトウエアメーカーが連携して技術開発する仕組みを整える方向で検討している。
文科省は人間の血液からⅰPS細胞を作製する工程の機械化を目指す。
公益財団法人「京都大学ⅰPS細胞研究財団」が既に着手している研究を支援し、細胞の特性を分析しながら自動で作製する装置などを開発する。
より受精卵に近く、幅広い細胞を作れる「次世代ⅰPS細胞」の研究にも取り組む。
経産省は医薬品が普及する段階を見据えた、製造工程の自動化を検討する。
民間企業が個別に開発している細胞培養装置や分析機器を連携させ、医薬品を製品化するまでの作業を一貫して機械が担う技術確立を目指す。
国内では医薬品の製造を担う医薬品開発製造受託企業(CDMO)の体制が不十分で、臨床試験を経て製造販売を始める最後の段階が円滑に進まない。
技術開発でけではなく、安定した品質と供給量を確保して患者に医療品を届ける体制整備も課題になる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます