トランプ米大統領がシリアからの米軍早期撤収構想を突然ぶち上げ、国内外に波紋を広げている。
重要公約の「米国第一」方針の下、国際紛争への関与からできるだけ手を引き、米国防衛に集中したい思惑がにじむ。
側近らの意見を聞きシリア駐留の当面継続を認めたが、早期撤収の意向は崩さず、中東では地域不安定化への懸念が高まる。
「部隊を戻し、米国再建を始めたい」。
トランプ氏は4月3日、記者団にこう説明した。
メキシコ国境からの不法移民流入を阻止するため軍を動員する構想にも言及。
米軍を他国でなく米国防衛に使いたいとの本音が出た。
中東関与に伴う米国の財政負担にも不満を示し「7兆ドル(約748兆円)もっぎこんでおいて、何も得ていない」と歴代米政権を酷評。
サウジアラビアなど地域各国が米軍にシリア駐留継続を望むなら財政負担を求める可能性も示唆し、損得勘定を重視するトランプ氏得意の「安全保障もカネ次第」の構えを見せた。
トランプ氏は最近、安全保障政策で意見が衝突したティラーソン国務長官らを排除し、ボルトン元国連大使ら自身の意向に従いそうな人物を登用。
周囲を「イエスマン」で固め米国第一を押し通そうとしているようだ。
3月下旬には支持者への演説で「私たちは間もなくシリアを出る」と胸を張り、拍手を浴びた。
ただ専門家の間では、早期撤収が中東で力の空白を生み、ロシアやイランの影響力が拡大するとの懸念が強い。
4月3日の国家安全保障会議(NSC)でトランプ氏は、米軍駐留継続を求める側近らの進言に同意しながらも気にくわない様子だった。
米軍が撤収を始めれば反体制派への心理的打撃は極めて大きい。
シリアのアサド政権軍の猛攻に追い詰められた反体制派「自由シリア軍」の司令官、アブマハルス中佐は電話取材に語った。
司令官は「自由と民主主義を求めて立ち上がった反体制派」を米政府が見限ったとの印象が強まり「国際社会の反体制派支援が一気に衰退する」ことを恐れている。
内戦全体の構図も一変する。
過激派「イスラム国」(IS)との戦いで米軍と共闘した少数民族クルド人勢力は孤立し、ロシア軍とアサド政権軍の攻勢に歯止めがかからなくなる。
イスラエル国境付近でのイランの活動も野放しになりかねず、アサド大統領とイラン、ロシアは祝杯をあげるだろう。
一方、米軍はシリア北部で10以上の基地を建設中とされ、現地では長期駐留が既定路線との見方が強い。
中東外交筋はトランプ氏に撤収の意思はないと分析。
イランと覇権を争うサウジに危機感を与え、米軍駐留経費をもぎ取るための駆け引きだと指摘した。
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