「体調が悪ければ会社を休む」という行為が今、国を挙げて推奨されている。
新型コロナウイルス感染防止対策の一環である。
ウイルス感染者が発熱やせきなどの症状を「ただの風邪」と考えて出社すれば、社内で感染を広げる危険性があるからだ。
厚生労働省はQ&Aで「感染拡大の防止につながる大切な行為」と呼び掛けている。
しかし考えてみれば「病気のときに仕事を休む」というのは当たり前ではないか。
「他人に新型ウイルスを感染させるといけないから」と理由を付けるまでもなく、自分の健康のためにさっさと休むべきなのだ。
それができないところに、「働き方」を巡る日本の組織の悪弊がある。
「少々の病気では休まない」という「根性」を評価する。
またはそれが評価されると思い込む。
管理職も一般社員もそんな精神論にどっぷり漬かってきた。
そもそも新型ウイルスに限らず、風邪でもインフルエンザでも発症者が出勤して感染が広がれば会社が困る。
早めに休ませる方が合理的なはずなのだが。
時差出勤や在宅勤務、定着させてもいいのでは?
朝の通勤電車の混雑が2~3割がた減った気がする。
満員電車を避ける時差出勤、テレワークの在宅勤務などを採用する企業が増えているのだろう。
今後首尾よく感染が終息したとしても、「病気なら休む」に加え、時差出勤や在宅勤務など新たな労働慣行もそのまま定着させていいのではないか。
満員電車に乗らずに済むなら、それに越したことはない。
今回のウイルス禍が、日本社会の「働き方」の意識を深いところで変えるきっかけになってほしい。
現在の日本には「休みたくても休めない」人たちがたくさんいる。
日本の全就業者における非正規雇用は38・2%に上る(2019年、総務省調査)。
こうした非正規労働者の中には「休むとその分賃金が減る」雇用契約になっているケースも多い。
生活がギリギリで扶養すべき家族もいるなら「少々体調が悪くても仕事に行こう」と思うのも無理はない。
もちろん休むべきなのだが、もしこうした人が出勤して感染を広げたとしても当人を責められるだろうか。
セーフティーネットをきちんとつくらず、非正規雇用の増加を放置してきた政治のツケではないのか。
政府はウイルス対策で各種の支援策を検討しているが、非正規労働者については特に、休業補償の早期支給など目配りを利かせた対策を進めてほしい。
「病気のときは当たり前に休める」社会こそが、疫病に強い社会でもあるのだ。
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