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考えてみれば、「居酒屋さすらい」に掲載した酒場のほとんどは駅近である。もっとも、集客は駅近であればあるほど、有利になるので、酒場はたいてい駅近にあるのが普通だ。だが、駅から遠い酒場もないわけではない。効率よく探せないだけで、世の中にはゴマンとある。
駅から遠いのに存在できる酒場は、いい酒場である。地元から愛されていることに他ならないからだ。ただ、問題はボクのような、さすらう一見には厳しい闘いが予想されることだ。だって、恐らく客のほとんどは常客なのだろう。
だから、今こそあえて、駅から遠い酒場探しを今後のテーマとしていこうと最近よく考える。
厨房の男性に瓶ビールを頼むと、店舗脇から外に出て、ビールを取ってきた。
サッポロの赤星である。
「やっぱ、この町中華、ただ者ではないな」。
客は土建屋風のニッカボッカを履いた男2人とボクの3人。彼らはひっきりなしに「ウーロン杯」を頼む。
ボクはまず、「ニラギョーザ」(400円)から。
あとはゆっくり考えよう。
だって、黒板にはびいしりとメニューが手書きされているのだ。
その中には明らかに中華以外のメニューが連なっている。
「もつ刺し」(500円)。
「カツオ刺し」(600)。
「アユ塩焼き」(550円)。
「アジフライ」(600円)。
「めかぶ納豆」(400円)
「ジャガチーズ」(450円)。
「ハムポテトサラダ」(350円)。
などなど。
小さな黒板に30から40品ものメニューがぎっしりだ。
このメニューの多さにまずはたじろいだが、これをひとりで果たして調理できるものなのだろうか。
すると、やがて「ニラギョーザ」が出てきた。
早い。早い。まるでプロミスだ。
すると、背後の土建屋らは、「イカフライ」(500円)を注文する。
ところが、その「イカフライ」も、厨房からじゅわっと油を揚げた音がすると、瞬く間にそれがテーブルに運ばれた。
とにかく、仕事が早く、ワンオペでも回っているのである。
さて、負けていられない。
肉汁がじゅわっとくる「ニラギョーザ」をビールで流し込んで、あっでもうまいうまい。
次の展開を考えようと、メニューを眺めるのだが、あまりの多さにあれこれと迷ってしまう。ここは中華なのだ。それ以外の居酒屋メニューを頼むのはちょっともったいないのではないだろうか。そう頭をもたげて、頼んだのは「目玉焼き」(350円)。
ボクはやっぱ、こういうのが大好きなんだ。
「目玉焼き」もしっかり焼きと蒸しができていて、おいしかった。目玉は半熟でもなく、固すぎず。
飲みものを「チューハイ」に変え、そして〆は「チャーハン」。
これが僅かに500円。
店のおやじは、愛想がないが、なにしろ仕事のスピードが速く、味も悪くない。
駅から遠い、町中華。いや、町中華の皮を被った絶品の居酒屋だ。
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