久々に東京に戻ってきた熊猫。立ち飲みを駅毎に歩き繋いでいく企画「立ち飲みラリー」を再開した。
「立ち飲みラリー」山手線編は大崎を僅か1店で撃破し、いよいよ五反田に歩を進めた。
山手線の内側、まさに山の手を歩く。
整然としたきれいな道。まさに山の手の高級住宅地。それが目黒川を渡ると、街並みは変わっていく。急激に雑然となる。
この落差。やっぱ東京。
そして五反田。
五反田の立ち飲み。
「へそ」、「呑ん気」、「ファットバー」、そして「呑2」。多分、制覇している。
もはや五反田はスルーか。
と思いきや、実はもう1店舗、喉の奥にひっかかっているお店がある。
「加藤酒店」。
1年前くらいだったか、ケータイで五反田の立ち飲みを検索していると、引っかかった店がこの店だった。
地図を参考に歩いてみたが、結局それらしい店は発見できなかった。
この店名からすると、角打ちっぽい。
五反田をスルーする前に、この「加藤酒店」問題をすっきり解決する必要がある。そう思って、前回店を探した通りに出てみると、店はあっさりと見つかった。1年前、あれほど店を探したにも関わらず。
「加藤酒店」は案の定、角打ちだった。
時刻は17時を過ぎたばかり、店内に客はいない。なんとなく入りにくいし、角打ちは緊張する。
システムが店によってまちまちだから、様子をうかがう必要があるのだが、店に先客がいないと、その様子うかがいすらできやしない。
しかし、山手線沿線には手ごわい角打ちが多い。
御徒町の「まきしま酒店」、神田の「中屋酒店」、浜松町の「玉川屋酒店」、「河米 伊藤酒店」、「丸辰 有澤商店」、田町「内田屋 西山福之助商店」、品川「大平屋酒店」などなど強者ぞろいだ。
だが、この「加藤酒店」も予断を許さない。
店に入ると、いきなりレジだった。
うおぉ。冷蔵庫はどこだ。冷蔵庫があれば、時間稼ぎができる。ビールを探すふりをして、瞬時に店のシステムを探ることができるのに。
難しい「角打ちスプリクト」。
とりあえず、おじさんがたたずむレジでビールはどこにあるのか聞いた。するとおじさんは何がほしいかと尋ねてくる。咄嗟に出てきた言葉が「キリンラガーの瓶」。するとおじさんは奥に声をかけ、しばらくするとおばさんが大瓶のラガーと冷えたコップを携えて現れた。そしてレジの近くのビール箱を重ねて作ったテーブルに乗せる。
わたしはそこに移動して、ビールをコップに注ぎ、いきなりビールを飲みほした。「幸福の黄色いハンカチ」の健さんみたいに。
あぁうまい。
つまみは豊富。店の奥のほうに見える戸棚には缶詰からスナック菓子まで幅広く取り揃えている。
わたしはその中から魚肉「ソーセージ」(150円)と「ほていの焼き鳥」をチョイスした。
つまみなんて、こんなものでいい。だって、家飲みするときはたいていジャンクなもので酒を飲んでいる。
コンビニのコロッケやスパイシーチキンはそのなかでもかなりのごちそうである。
ビールを飲みほし、何を飲もうかと思案していると、焼酎グラス売り(80cc)という貼り紙が見えた。
黒霧島が130円。
いいちこ120円
紅乙女150円。
ここは「黒霧」で攻めたい。
おばさんに「ロックで飲む」と告げると、しばらくしてわたしのテーブルにはアイスペールが置かれた。
「こんなにいらないのに」。一人客のわたしには十分すぎる氷が置かれた。
アイスペールにごっそり入った氷は、僅か120円。安いとは思いながらもものすごいスケールに驚く。
それでも2杯くらい、「黒霧」をおかわりしただろうか。安いと思ってついついピッチが早くなる。
でも、やはり角打ちは落ち着かない。なんとなく、ゆっくりできないのだ。角打ちの一人客というのもあまりいない。いや、これが常連ならばいい。決まった面子がだいたいいるから。一見の一人客となると、角打ちはやっぱりつらいのだ。
時間が経つにつれ、少しずつ客が入ってきた。わたしの隣に立った青年に、「もしよかったら、この氷使ってください」と言い残し、わたしは店を出た。
「加藤酒店」も山手線の角打ちの伝統どおり、手強い店だった。
お店のおじさんとおばさんがだいぶ齢を重ねている。いつまで店の灯を保てるか。
伝統の角打ちという言い方が本当に相応しい店である。
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