A藤君にとって立飲スタンド(居酒屋放浪記NO.0152)は余程居心地が悪かったらしい。
三楽を出て、「笑笑で飲みなおそうゼ」とわたしが言うと、彼はホッとしたのか、だんまり決め込んださっきとはうって変わり、すこしずつ口をきくようになったからだ。
田端駅北口のすぐ傍の「笑笑」。
ご存知、手広く外食産業を営む㈱モンテローザが経営する居酒屋チェーン店は今更 説明する必要もなかろう。
都心はもちろん、地方に行ってもだいたいあの看板は見かける。
そして、当居酒屋ブログ始まって以来、居酒屋チェーン店の掲載だ。
「なんだそれ」と熱心な読者諸兄は思われるかもしれない。
だが、待ってほしい。
居酒屋チェーンは綿密なマーケティングのもとで様々なニーズを吸い上げている。
そこにあるのは現代の大衆の姿ではないか。そうした現代日本の酒場の方向性を見ずして、実は居酒屋は語れないのではないだろうか。
そう考え、今回当ブログにて居酒屋チェーンを掲載することにしたのである。
そして、「笑笑」に入ってみて、その考えがあながち的外れでなかったことに気づいたのだ。
薄暗がりの店内。BGMにはディキシーランド風のジャズが流れる。
天井を見上げると、古木の梁が連なる。造りは古民家風だ。
我々がテーブルにつくとすぐさま店員が現れ、かしずいて飲み物のオーダーを伺う。
あくまでも、その姿勢はCustomer Satisfaction優先の流れだ。
ラミネートされた分厚いメニューカードの飲み物欄を見て、驚いた。その飲み物の種類の多さに唖然とした。そして、更に驚いたことがある。
ビールとは別に「麒麟端麗生」がメニューにあるからだ。
今はだいぶ減ったとはいえ、ビールと表記して「発泡酒」を出す店が後を絶たない。それを考慮すれば、この姿勢は立派だ。
これは、あらゆる業界に言えることだが、ニューカマーと呼ばれる異業種参入組は「価格破壊」と呼ばれて糾弾されることが多い。だが、これは既得権益を持つ守旧派の常套句だ。価格の透明性が実際には正しいケースが少なくない。そして、それは居酒屋業界dめおやはり同じことがいえるような気がする。
我々3人は、揃ってその「麒麟端麗生」の中ジョッキを頼んだ。なんといっても、税込み305円である。
お通しは「貝のひもとおくら」の和え物である。これが、なかなかうまい。
つまみは、何にするか、と若手2人組はメニューの詮索に余念がない。一通り、彼らは選ぶと、メニュー表はわたしに回ってきた。パラパラめくってみたが、その豊富なメニューに頭がクラクラきた。そして、その値段の安さである。
例えば、「おぼろ豆腐」が210円、「たこわさび」が294円、「本場韓国慶尚道産キムチ」が294円といった具合に200円台のメニュ-も珍しくない。更に、メニューの横にはグラムあたりのカロリー表示までされている。とにかく、徹底的なCSなのである。「酒を飲む奴がカロリーなんか、気にするか!」と酒飲みは言うだろう。全ては、女性のための仕掛けなのだ。
「スパイシーポテトフライ」(294円)をT根川君に告げると、彼はおもむろにテーブル脇に立てかけられたPDAを手にして、メニューを打ち込んでいる。その存在は既に9月に行った「NIJYU-MARU」という居酒屋チェーンでも体験済みだったので、それほど驚かなかったが、今や居酒屋チェーンの最先端はオーダーがモバイルなのだ。
一方、少しだけがっかりしたことがある。
それは、食の安全の部分だ。
もっと、トレーサビリティがしっかりしていると思ったが、メニュー表には厳密な材料の生産場所が出ていなかった。居酒屋チェーン業界では、独自に農園を持っていて、材料の調達は清算履歴が明らかなところから仕入れていると聞いた。特にワタミのワタミファームは有名である。モンテローザでも「農場提携や独自ルートでの一括購入で、良質で新鮮な素材を確保。全国各地から安全で美味しい素材を調達しています」としっかりホームページ上で宣言をしている。だが、メニュー表にある各商品には、厳密にどこで生産されたものか明記されていなかった。どこかの頁にひっそりと書かれていたのかもしれないが、一見して分かりやすくなっていたかといえば、そうではなかったのである。
しかも最近、同社では、不祥事を起こしている。
同社が運営する、「白木屋」、「 月の宴」、「 かみふうせん」において、平成 16 年 からの2年間の間、馬肉の赤身をよくするため馬脂肪を注入した「馬脂肪注入馬刺し」をメニューやチラシに「とろ馬刺し」「霜降り馬刺し」などと記載していた事実である。
悪意があるものなのか、否かは分からないが、偽装であることに変わりはない。食の安全はいささか期待外れであった。
だが、そんじょそこらの居酒屋よりは大きなコストと努力を払っている。恐らく、ふっつうの安酒場では、平然と履歴の知れない食材を使っていたりするはずだ。
わたしが勤める職場の近所に、24時間スーパーの「ハナマサ」がある。よく、その店の前を通るのだが、一見して居酒屋の店主や店長と思しき人物が、安い中国産と思われる食材を購入している姿をよくみかける。
ハナマサも中国産も「悪い」と断ずる積もりはないが、安価なスーパーを仕入れとする居酒屋はお客を大切にしているとは思えないのである。
話しはおおいに脱線したが、それほどわたしはこの外食チェーンを牛耳る巨大企業に「食の安全」を期待していたのだ。
A藤君は、すっかり気をとりなおして、饒舌になっていた。
やはり、20歳代の若者は、古い居酒屋より、こうした居酒屋チェーンの方が気楽のようである。
「麒麟端麗生」を飲み干して、次なる飲み物を思案した。すると、メニュー表には芋焼酎セットなるものが掲載されていたのだ。
それは、「薩摩の藍」(さつま無双)「薩摩の大地」(濱田酒造)「薩摩 芋一進」(若松酒造)の3種類を「飲み比べセット」と称するものだった。これは、いいと早速それぞれをロックで頼んだ。
昔、よく行った地ビール巡りでは、各店舗で地ビールの「飲み比べセット」があって、重宝するメニューだった。それほど、多く量はいらないが、なるべく多くの種類を飲んでみたいときにはなかなか便利である。是非とも、こうしたサービスは普通の居酒屋さんでも試していただきたいサービスのひとつだ。
料理は各種、全般的に味付けが濃い。
血圧がやや高めのわたくしおっさんには少し刺激が強いようである。
メニュー表を見ていて、すこぶる気になるドリンクを見つけた。
「トマッピー」(410円)と「赤ぐびっホッピー」、そして「白ぐびっホッピー」である。
「トマッピー」は今流行のトマトを原料とした焼酎を、赤白のぐびっとはそれぞれのワインにホッピーで割ったものである。
これは、なかなか考えたなホッピー3代目社長!
さすが、5年で年商3倍、年30%の増益をたたき出す、石渡美奈氏のアイデアのなせる技か?
かつて、雑誌「酒とつまみ」でも様々な酒をホッピーで割らせた企画があったが、しかしワインとは恐れ入る。さすがに酔っ払ってきたので、泣く泣く同メニューには手をつけなかったが、怪鳥!これは是非我がホッピー研究会で試してみなくてはいけませんなぁ。
この後、若手に混じって頑張ってきたおっさんもどうやら力が尽きてしまったようだ。
後半戦はすっかり記憶が曖昧だからである。
確か、「とんこつ塩焼きそば」(473円)がテーブルに運ばれてきたところまでは覚えている。それをわたしが食したかどうか。今となっては、分からない。
そうそう、最後に覚えている映像は、トイレに立って、久しぶりに「親父の小言」を読んだ際の場面だ。そうして、わたしは何度か、その小言を反芻してみた。
「風吹きに遠出するな」。
「大酒は飲むな」
「朝きげんよくしろ」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
三楽を出て、「笑笑で飲みなおそうゼ」とわたしが言うと、彼はホッとしたのか、だんまり決め込んださっきとはうって変わり、すこしずつ口をきくようになったからだ。
田端駅北口のすぐ傍の「笑笑」。
ご存知、手広く外食産業を営む㈱モンテローザが経営する居酒屋チェーン店は今更 説明する必要もなかろう。
都心はもちろん、地方に行ってもだいたいあの看板は見かける。
そして、当居酒屋ブログ始まって以来、居酒屋チェーン店の掲載だ。
「なんだそれ」と熱心な読者諸兄は思われるかもしれない。
だが、待ってほしい。
居酒屋チェーンは綿密なマーケティングのもとで様々なニーズを吸い上げている。
そこにあるのは現代の大衆の姿ではないか。そうした現代日本の酒場の方向性を見ずして、実は居酒屋は語れないのではないだろうか。
そう考え、今回当ブログにて居酒屋チェーンを掲載することにしたのである。
そして、「笑笑」に入ってみて、その考えがあながち的外れでなかったことに気づいたのだ。
薄暗がりの店内。BGMにはディキシーランド風のジャズが流れる。
天井を見上げると、古木の梁が連なる。造りは古民家風だ。
我々がテーブルにつくとすぐさま店員が現れ、かしずいて飲み物のオーダーを伺う。
あくまでも、その姿勢はCustomer Satisfaction優先の流れだ。
ラミネートされた分厚いメニューカードの飲み物欄を見て、驚いた。その飲み物の種類の多さに唖然とした。そして、更に驚いたことがある。
ビールとは別に「麒麟端麗生」がメニューにあるからだ。
今はだいぶ減ったとはいえ、ビールと表記して「発泡酒」を出す店が後を絶たない。それを考慮すれば、この姿勢は立派だ。
これは、あらゆる業界に言えることだが、ニューカマーと呼ばれる異業種参入組は「価格破壊」と呼ばれて糾弾されることが多い。だが、これは既得権益を持つ守旧派の常套句だ。価格の透明性が実際には正しいケースが少なくない。そして、それは居酒屋業界dめおやはり同じことがいえるような気がする。
我々3人は、揃ってその「麒麟端麗生」の中ジョッキを頼んだ。なんといっても、税込み305円である。
お通しは「貝のひもとおくら」の和え物である。これが、なかなかうまい。
つまみは、何にするか、と若手2人組はメニューの詮索に余念がない。一通り、彼らは選ぶと、メニュー表はわたしに回ってきた。パラパラめくってみたが、その豊富なメニューに頭がクラクラきた。そして、その値段の安さである。
例えば、「おぼろ豆腐」が210円、「たこわさび」が294円、「本場韓国慶尚道産キムチ」が294円といった具合に200円台のメニュ-も珍しくない。更に、メニューの横にはグラムあたりのカロリー表示までされている。とにかく、徹底的なCSなのである。「酒を飲む奴がカロリーなんか、気にするか!」と酒飲みは言うだろう。全ては、女性のための仕掛けなのだ。
「スパイシーポテトフライ」(294円)をT根川君に告げると、彼はおもむろにテーブル脇に立てかけられたPDAを手にして、メニューを打ち込んでいる。その存在は既に9月に行った「NIJYU-MARU」という居酒屋チェーンでも体験済みだったので、それほど驚かなかったが、今や居酒屋チェーンの最先端はオーダーがモバイルなのだ。
一方、少しだけがっかりしたことがある。
それは、食の安全の部分だ。
もっと、トレーサビリティがしっかりしていると思ったが、メニュー表には厳密な材料の生産場所が出ていなかった。居酒屋チェーン業界では、独自に農園を持っていて、材料の調達は清算履歴が明らかなところから仕入れていると聞いた。特にワタミのワタミファームは有名である。モンテローザでも「農場提携や独自ルートでの一括購入で、良質で新鮮な素材を確保。全国各地から安全で美味しい素材を調達しています」としっかりホームページ上で宣言をしている。だが、メニュー表にある各商品には、厳密にどこで生産されたものか明記されていなかった。どこかの頁にひっそりと書かれていたのかもしれないが、一見して分かりやすくなっていたかといえば、そうではなかったのである。
しかも最近、同社では、不祥事を起こしている。
同社が運営する、「白木屋」、「 月の宴」、「 かみふうせん」において、平成 16 年 からの2年間の間、馬肉の赤身をよくするため馬脂肪を注入した「馬脂肪注入馬刺し」をメニューやチラシに「とろ馬刺し」「霜降り馬刺し」などと記載していた事実である。
悪意があるものなのか、否かは分からないが、偽装であることに変わりはない。食の安全はいささか期待外れであった。
だが、そんじょそこらの居酒屋よりは大きなコストと努力を払っている。恐らく、ふっつうの安酒場では、平然と履歴の知れない食材を使っていたりするはずだ。
わたしが勤める職場の近所に、24時間スーパーの「ハナマサ」がある。よく、その店の前を通るのだが、一見して居酒屋の店主や店長と思しき人物が、安い中国産と思われる食材を購入している姿をよくみかける。
ハナマサも中国産も「悪い」と断ずる積もりはないが、安価なスーパーを仕入れとする居酒屋はお客を大切にしているとは思えないのである。
話しはおおいに脱線したが、それほどわたしはこの外食チェーンを牛耳る巨大企業に「食の安全」を期待していたのだ。
A藤君は、すっかり気をとりなおして、饒舌になっていた。
やはり、20歳代の若者は、古い居酒屋より、こうした居酒屋チェーンの方が気楽のようである。
「麒麟端麗生」を飲み干して、次なる飲み物を思案した。すると、メニュー表には芋焼酎セットなるものが掲載されていたのだ。
それは、「薩摩の藍」(さつま無双)「薩摩の大地」(濱田酒造)「薩摩 芋一進」(若松酒造)の3種類を「飲み比べセット」と称するものだった。これは、いいと早速それぞれをロックで頼んだ。
昔、よく行った地ビール巡りでは、各店舗で地ビールの「飲み比べセット」があって、重宝するメニューだった。それほど、多く量はいらないが、なるべく多くの種類を飲んでみたいときにはなかなか便利である。是非とも、こうしたサービスは普通の居酒屋さんでも試していただきたいサービスのひとつだ。
料理は各種、全般的に味付けが濃い。
血圧がやや高めのわたくしおっさんには少し刺激が強いようである。
メニュー表を見ていて、すこぶる気になるドリンクを見つけた。
「トマッピー」(410円)と「赤ぐびっホッピー」、そして「白ぐびっホッピー」である。
「トマッピー」は今流行のトマトを原料とした焼酎を、赤白のぐびっとはそれぞれのワインにホッピーで割ったものである。
これは、なかなか考えたなホッピー3代目社長!
さすが、5年で年商3倍、年30%の増益をたたき出す、石渡美奈氏のアイデアのなせる技か?
かつて、雑誌「酒とつまみ」でも様々な酒をホッピーで割らせた企画があったが、しかしワインとは恐れ入る。さすがに酔っ払ってきたので、泣く泣く同メニューには手をつけなかったが、怪鳥!これは是非我がホッピー研究会で試してみなくてはいけませんなぁ。
この後、若手に混じって頑張ってきたおっさんもどうやら力が尽きてしまったようだ。
後半戦はすっかり記憶が曖昧だからである。
確か、「とんこつ塩焼きそば」(473円)がテーブルに運ばれてきたところまでは覚えている。それをわたしが食したかどうか。今となっては、分からない。
そうそう、最後に覚えている映像は、トイレに立って、久しぶりに「親父の小言」を読んだ際の場面だ。そうして、わたしは何度か、その小言を反芻してみた。
「風吹きに遠出するな」。
「大酒は飲むな」
「朝きげんよくしろ」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
ホッピー研究会の名の下に、ね。
「養老の瀧」にホッピーあるの?
養老も随分行ってない(多分15年くらい)かどうなのだろうか・・・・。今度調査しましょう!
やっぱ遠慮したいですね~。
マーケティングはしっかりやっているかもしれませんが、
本質がズレているというか。
KFCとビールとか、マックフライポテトとビールとか。居酒屋チェーンをジャンクと言っていいのか、わかりませんが、この存在も否定できるものではありません。
行くといろいろな趣向が施されて楽しいものですよ。
これから、あちこち試してみたいと思います。