
うどん屋を出たあとの記憶はあまりない。
ボクは彼女とのおしゃべりに夢中になっていたのだ。
人通りのない街を歩き、ボクはベンチに腰かけたり、ぽつんと光るラーメン屋の灯りの脇をすり抜けたり、気がつけば、ボクは真っ暗になった高知駅前の広場にいた。
ボクらはどうでもいいような話しばかりして、目の前のコンビニで売っているベルギーチョコのソフトクリームの話題になった時は、駅前の時計は日付をまたいでいた。
このままだと本当に夜明けまで話してしまいそうだった。
高松駅前は煌々と光るコンビニの灯と街灯の他にもう1軒、灯の点ったお店があった。
居酒屋の「若大将」という店だった。
電話を切るのを何度もためらいながら、ようやく「おやすみ」と言ってケータイをポケットにしまった後、ボクはこの店の暖簾をくぐった。
「まだいいですか?」と店頭から厨房に声をかけると、男性の声で「いいですよ」と返ってきた。
時刻は0時を30分も回った頃合いだった。
ボクは「チューハイ」と、讃岐名物「しょうゆ豆」を注文した。
ボクは喉が渇いていた。
「チューハイ」を何度もおかわりした。でも、酔うことはなかった。
このまま酔わなければいいなと思い、4杯目の「チューハイ」でやめ、〆にコーチン玉子という恐らく地鶏のものと思われる「月見ごはん」を食べて店を出た。
外はコンビニの灯だけが点り、寝静まっているようにみえた。
深まる秋に夜風は少し冷たい。
ホテルまでの帰り道をボクはゆっくりと歩いた。
ボクは眠りたくなかった。この夜がずっと続けばいいと心から願った。
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