「畑商店」を切り上げて、店を変えることにした。腹にたまる酒肴が欲しくなったから。
実は数年前から気になっていた店がある。他の新幹線駅と同じように、京都の南口も例に漏れず、さみしい。その住宅街の一角に突如現れる居酒屋。「二升五合」。多分、これで、「しょうばいはんじょう」と読ませるはずだ。
この店名、港区三田にある立ち飲みと同じ。
「居酒屋さすらい」は連載から1200回を越え、訪問させていただいた酒場は恐らく1000店以上になったと思う。実は意外なことに、「居酒屋さすらい」史上初めて、過去訪問店と同一店名店の店に訪れた。もちろん、多店舗展開する店は除いて。ちなみに、同じ読み方のお店はあった。「山田家」と「山田屋」。けれど、漢字も読み方も同じ店は初めてなのだった。
店の手前側がテーブル。奥の右側に厨房。左手は小上がりだった。ボクらは、小上がりに進み、靴を脱いで上がった。
店は鉄板焼主体の店。
ボクも師も「酎ハイ」を頼んだ。レモンスライスが浮かぶ「酎ハイ」。
これを飲んで、ようやく一心地がついた。
つまみは、「ちくわのしらすあえ」、「豚玉」。
実に素朴である。素朴すぎて、ここが本当に京都なのか疑ってしまう。京都駅の南側。門前町のはずなのに、門前町らしくもなく、京都駅から、ほどなく近いのに、京都の風情がない。これが、もう一つの京都。
「豚玉」は、無造作に焼かれ、形は悪い。でも、抜群にうまかった。出汁汁をつけて食べるのが、かろうじて京都風情。いや、刻まれたねぎがたんまりとかかっているのも、京都らしいといえば、そう見える。
値段だって、随分リーズナブル。京都価格なんかじゃない。
いや、そういえば、この日回った、「京極スタンド」も「畑商店」も、そして、この「二升五合」も、いずれも京都っぽくないじゃないか。もしかすると、京都っぽいというのは、必要以上にボクは権威付けしてきたんじゃないかと気づく。
いやはや、それにしても気分がいい。
誰も観光客のいない、京都の酒場で飲む痛快さ。うまい酒とうまい肴。そして、気の合う友。
今日は、全てうまい酒だった。
京風(笑)な京都は、ほぼ一部で、大多数はこの店みたいな京都らしさとかそんなに無い、普通の店だ。
俺も、祇園の老舗の料亭とかで飯食ったことなんか、お高くて近寄れないから一回もないからね。(苦笑)
例えば、「畑商店」も、とりわけ京都っぽくないけど、なんとなく京都で飲んでるっていう気持ちがある。うまく言えないんだけど。
多分、帰宅することとか、考えたりして、そんな気持ちになるのかもしれないんだけど。
でも、「二升五合」は、東京にいるような気分だった。不思議な雰囲気な店だよ。
ノリや芸風!?が違うもんなあ。大きく違うと言っても過言ではないかもしれないから、そこは大きいんじゃないかと思うよ。
ますますはんじょうが東京っぽかったのは、意外にお店の人が、喋りは別として芸風!?がこてこてじゃなかったからじゃないの?
もう一つ、付け加えておけば、京都の華やかさとは裏腹に、場末感が高かったというのも、特異な雰囲気を演出していたかもしれないね。