
自宅の転居の日が近づいてきた。
足掛け8年も住んだ浦安が今はただただ離れがたい。
初めての一人暮らしで浦安に越してきたのが20歳のとき。それから4年間を過ごし、再び31歳で浦安に戻ってきたのは、やはりこの街が好きだったから。
故郷といえるような場所がない自分だけに、最も故郷に近い気持ちをわたしは抱いていた。
だが、いつかはこんな日が来ることを内心覚悟していた。
浦安北栄の自宅は手狭で、妻の職場からは遠い。子供ができたら妻の職場に近いウチを探すことで夫婦ともども話し合っていたからだ。
しかし、実際浦安を離れるとなると、気持ちが滅入るくらいの寂しさがこみ上げてきた。
引越しの日は翌々日に迫っていた。
浦安を締めくくる居酒屋で飲んで有終を飾りたい。どこに行こうか、あれこれ思案した。
最後だから、お気に入りの居酒屋の暖簾をくぐるのがいいか。それとも、今まで空手形を出してきた懸案の店に行くのがいいか、わたしは考えあぐねた。
お気に入りの酒場なら、当ブログNO.0077、0078でうかがった「枡田屋」だ。一方、行こうと思いながら、なかなか足が向かなかった店には3店が候補にあがった。
ひとつは、作家常盤新平氏が足繁く通うという店、「ひげでん」。
以前、何度かお店の前を通り過ぎたのだが、夕方5時だというのに店内はいつもいっぱい。そのうえ、なんとなく常連で固められていそうな威圧感に幾度となく跳ね返されてきた。そんなお店を浦安の最後の夜にするのもいい。
また、ウチの近所にある「おでんDARO」に行ってないのも気がかりだった。
灯台下暗し。近所にある店には「いつでも行けるさ」という安心感があって、ついつい行きそびれている。終いに近所を制覇するのもすっきりしていいのではないか。
そして、最後の候補が浦安魚市場の前にある「おばさんの店 かとう」。
気になるのはその店名だ。
加藤さんというおばさんがやっている店なのか、ストレートにその思いのたけを屋号に表しているのがなんとも心憎い。どんな体裁の店なのかも分からないが、とにかく、ここ何年か気になりながら店の前を往来していた。
さて、このうちのどこの店で浦安の最後の晩を飾るか。
考えに考えた挙句、同じ町内にある「おでんDARO」に立ち寄ることにした。やはり、「近所のよしみ」を最優先としたのである。
この店は北栄に来たとき4年前から、すでにあった。
奇抜な店の形。入り口正面についたてがあって、外からは店内の様子は窺い知れない。だが、いつも店は賑わいを見せているのが分かった。そして、わたしの最大の疑問は「夏でもおでんを出すのか?」だった。こんな、住宅地にありながら、「おでん」だけで勝負をする。この姿勢はなかなかできたものではない。この店はけっこうスゴイんじゃないか、というのが、わたしの率直な気持ちだった。
かくして、引越し2日前の金曜日、時刻は18時半を少し回った頃、わたしは念願の「おでんDARO」の扉を開けたのである。
ぐるりと楕円を半分にした形のカウンターだけの店内。そのカウンターの中で女性の店員が客の注文を捌き、おでんを掬ったりしている。
女性店員は2人。ご両人ともまだ20代のよう。一見姉妹のようにも見える。
わたしは、まず「生ビール」を注文した。
興奮してるせいか、一気にジョッキの半分を飲み干した。
しかし、うまい。ビールがうまく感じる店は基本的にいい店だ。
店内は薄型テレビの大画面が夕方のニュースを流していた。
客はわたしのほかは計7人。まず、初老にさしかかかったひとり客とガラの悪そうなガテン系のおじさん2人。そして、近所のおばちゃん4人組だ。
店はこざっぱりとしていて、品がいい。
さて、いきなりクライマックスのおでんを頼んでみた。
おでんは全品157円。
実にさまざまな種が用意されている。
大根、がんもどきにじゃがいも、そして卵をそれぞれ注文してみた。
おつゆは透明な薄味系。関東煮と呼ばれるそれではない。だしは昆布だけではなさそう。はっきりしたことは言えないが、魚の風味も微妙に鼻をくすぐる。
手始めに大根から戴いた。これはうまい。
煮すぎてつゆが沁みこみすぎてるわけでもなく、ほどよくつゆは浸透している。
おでんに焼酎もどうかとも思ったが、店員のお姉さんに「お勧め」の芋焼酎を訊いてみた。
すると快活に「愛子」と返ってくる。
品書きには「少量醸造の幻の焼酎」などと書いてある。確かに、聞きなれない銘柄だ。屋久島の醸造所ということで、俄然興味がそそられた。降水量が多い、世界遺産の水はまさに銘酒の要素がぷんぷん匂う。果たしてお手並み拝見とロック(750円)で頼み、グラスに口をつけると、気品高い香りが口の中に広がった。
まるで、ロイヤルファミリー。
さて、その気高い芋焼酎をチビチビ飲りながら、これまた上品なおでんをもらう。暑い夏だが、それも決して悪くはない。
とにかく、酒も肴もうまいからだ。
そして、美人のお姉さんが2人できりもりしているとくれば、ぐうの字も出てこない。
もっと、早く店の門を叩いていればよかった。
引越しを2日後に控えて言うにはもはや後の祭りだ。
おっと、お腹がいっぱいになってきた。こりゃぁ、いけないいけない。
実は、「おでんDARO」に寄ることは、妻には秘密なのである。
足掛け8年も住んだ浦安が今はただただ離れがたい。
初めての一人暮らしで浦安に越してきたのが20歳のとき。それから4年間を過ごし、再び31歳で浦安に戻ってきたのは、やはりこの街が好きだったから。
故郷といえるような場所がない自分だけに、最も故郷に近い気持ちをわたしは抱いていた。
だが、いつかはこんな日が来ることを内心覚悟していた。
浦安北栄の自宅は手狭で、妻の職場からは遠い。子供ができたら妻の職場に近いウチを探すことで夫婦ともども話し合っていたからだ。
しかし、実際浦安を離れるとなると、気持ちが滅入るくらいの寂しさがこみ上げてきた。
引越しの日は翌々日に迫っていた。
浦安を締めくくる居酒屋で飲んで有終を飾りたい。どこに行こうか、あれこれ思案した。
最後だから、お気に入りの居酒屋の暖簾をくぐるのがいいか。それとも、今まで空手形を出してきた懸案の店に行くのがいいか、わたしは考えあぐねた。
お気に入りの酒場なら、当ブログNO.0077、0078でうかがった「枡田屋」だ。一方、行こうと思いながら、なかなか足が向かなかった店には3店が候補にあがった。
ひとつは、作家常盤新平氏が足繁く通うという店、「ひげでん」。
以前、何度かお店の前を通り過ぎたのだが、夕方5時だというのに店内はいつもいっぱい。そのうえ、なんとなく常連で固められていそうな威圧感に幾度となく跳ね返されてきた。そんなお店を浦安の最後の夜にするのもいい。
また、ウチの近所にある「おでんDARO」に行ってないのも気がかりだった。
灯台下暗し。近所にある店には「いつでも行けるさ」という安心感があって、ついつい行きそびれている。終いに近所を制覇するのもすっきりしていいのではないか。
そして、最後の候補が浦安魚市場の前にある「おばさんの店 かとう」。
気になるのはその店名だ。
加藤さんというおばさんがやっている店なのか、ストレートにその思いのたけを屋号に表しているのがなんとも心憎い。どんな体裁の店なのかも分からないが、とにかく、ここ何年か気になりながら店の前を往来していた。
さて、このうちのどこの店で浦安の最後の晩を飾るか。
考えに考えた挙句、同じ町内にある「おでんDARO」に立ち寄ることにした。やはり、「近所のよしみ」を最優先としたのである。
この店は北栄に来たとき4年前から、すでにあった。
奇抜な店の形。入り口正面についたてがあって、外からは店内の様子は窺い知れない。だが、いつも店は賑わいを見せているのが分かった。そして、わたしの最大の疑問は「夏でもおでんを出すのか?」だった。こんな、住宅地にありながら、「おでん」だけで勝負をする。この姿勢はなかなかできたものではない。この店はけっこうスゴイんじゃないか、というのが、わたしの率直な気持ちだった。
かくして、引越し2日前の金曜日、時刻は18時半を少し回った頃、わたしは念願の「おでんDARO」の扉を開けたのである。
ぐるりと楕円を半分にした形のカウンターだけの店内。そのカウンターの中で女性の店員が客の注文を捌き、おでんを掬ったりしている。
女性店員は2人。ご両人ともまだ20代のよう。一見姉妹のようにも見える。
わたしは、まず「生ビール」を注文した。
興奮してるせいか、一気にジョッキの半分を飲み干した。
しかし、うまい。ビールがうまく感じる店は基本的にいい店だ。
店内は薄型テレビの大画面が夕方のニュースを流していた。
客はわたしのほかは計7人。まず、初老にさしかかかったひとり客とガラの悪そうなガテン系のおじさん2人。そして、近所のおばちゃん4人組だ。
店はこざっぱりとしていて、品がいい。
さて、いきなりクライマックスのおでんを頼んでみた。
おでんは全品157円。
実にさまざまな種が用意されている。
大根、がんもどきにじゃがいも、そして卵をそれぞれ注文してみた。
おつゆは透明な薄味系。関東煮と呼ばれるそれではない。だしは昆布だけではなさそう。はっきりしたことは言えないが、魚の風味も微妙に鼻をくすぐる。
手始めに大根から戴いた。これはうまい。
煮すぎてつゆが沁みこみすぎてるわけでもなく、ほどよくつゆは浸透している。
おでんに焼酎もどうかとも思ったが、店員のお姉さんに「お勧め」の芋焼酎を訊いてみた。
すると快活に「愛子」と返ってくる。
品書きには「少量醸造の幻の焼酎」などと書いてある。確かに、聞きなれない銘柄だ。屋久島の醸造所ということで、俄然興味がそそられた。降水量が多い、世界遺産の水はまさに銘酒の要素がぷんぷん匂う。果たしてお手並み拝見とロック(750円)で頼み、グラスに口をつけると、気品高い香りが口の中に広がった。
まるで、ロイヤルファミリー。
さて、その気高い芋焼酎をチビチビ飲りながら、これまた上品なおでんをもらう。暑い夏だが、それも決して悪くはない。
とにかく、酒も肴もうまいからだ。
そして、美人のお姉さんが2人できりもりしているとくれば、ぐうの字も出てこない。
もっと、早く店の門を叩いていればよかった。
引越しを2日後に控えて言うにはもはや後の祭りだ。
おっと、お腹がいっぱいになってきた。こりゃぁ、いけないいけない。
実は、「おでんDARO」に寄ることは、妻には秘密なのである。
ほどほどに・・・(笑)。
とはいっても、飲んでくることがバレない程度で
家に帰るのは立派!です。
話は関係ないのですが、
blogのURLが変わりました~。
コメントにリンク貼ってあるのが新しいものです。
よろしくお願いします。
昨日、「まき子の酒」に行ったんですが、表示されませんでした。
更新しておきます。