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旅するランチ 007 - 汁なし担々麺 - 「中国家庭料理 揚 2号店」(豊島区西池袋)

2014-03-05 22:32:41 | 旅するランチ

ドラマ「孤独のグルメ」の井之頭五郎の食べっぷりを見て、ボクはこうしちゃいられないと思った。
「いいぞいいぞ」の掛け声とともに、するすると「汁なし坦坦麺」を口に入れていく、その見事な食べっぷりを見て。

松重豊さんの食べっぷりには一目を置いていた。
ドラマ「不毛地帯」で小出役を演じ、壱岐正に食事をたかるシーンでは、ステーキを一心不乱に食べ、喋りながら食べるシーンでは、かき込んだご飯のご飯粒を見事に飛ばすというはなれ技を演じた。あのご飯粒飛ばしでさえも、ボクは演技だったと確信している。

その五郎の食べ具合が痛快な「孤独のグルメ」の「汁なし担々麺」は、これはもう現場に行って、その舌で味わわないといけないと思ったのだ。

「中国家庭料理 揚」の「汁なし担々麺」。
なんとも、興味をそそる名称である。そもそも、スープがないタンタン麺が成立するのか。ボクらは密かに疑念を抱くだろう。

「辛いよ」。
ドラマでは、お店のお兄ちゃんが独特のイントネーションでお客に呟く。それは「覚悟しぃや」という警告だ。実際、お店ではそんなことは一言も言わなかったが。
辛いもの大好きな自分にとって、それは望である。
だが、眼前に現れたスパゲティのような担々麺は、まさに異次元の辛さだった。


麻辣と呼ばれる四川料理は、山椒をとことん使用するらしい。この「汁なし担々麺」もこれでもかと言わんばかりに山椒をぶち込む。
その山椒の辛さは、ボクらが平生経験する辛みではない。

それは、痺れである。

口の中が痺れ、喉が痺れ、そして内臓が痺れるのである。
試しにお冷を飲んでみればいい。全くお水の味が違う。完全にボクらの舌を麻痺させているといえる。
「うぉ~」。多くの者が心の中で、えもいわれぬ咆吼を繰り返すだろう。麺と具を絡めて絡めて、口の中に麺を放り込む度に。

そして、次第にボクは胃腸がこの山椒を受け付けない状況に陥った。
確かにうまい。この激痺れの「汁なし担々麺」。
だが、その至福の時間は一気に苦痛の時間に変わった。
汗が、顔面中から吹き出し、「胃から汗をかく」という達川光男さんの言葉を思い出し、あと3口で完食と心で念じ、ボクは一気に「汁なし担々麺」を平らげた。

不思議な食べ物である。
「うまい!」と喜び勇んで食べ進めると、一気に地獄へと突き落とされる。中国四千年の歴史が凝縮した天使と悪魔の囁き。そしてボクの場合、天国と地獄を同時に味わった。しかし、これだけの山椒が本当に必要なのだろうか。
フッと疑問がわき起こる。

この強烈な食べ物は、まさにクセになりそう。それは、怖いもの見たさによく似てる。
毎日は食べられないけれど、忘れた頃にやってきそうな痺れの記憶。たとえるならば、ケンシロウに秘孔をつかれた瞬間とでもいおうか。快楽と死という背中合わせの誘惑。「こわいな、こわいな」と稲川淳二の声が脳内に響く。
天使と悪魔が同居する「汁なし担々麺」である。

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4 コメント

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花椒 (ふらいんぐふりーまん)
2014-03-10 18:12:39

 中国の山椒「花椒」は、舌が麻痺するほどのしびれを伴う辛さが特徴だね。

 四川料理では、唐辛子と双璧をなす、辛さを加える為の調味料だけど、日本人はその強烈な辛さが合わないという人も多いと思う。

 俺は、脳天から汗が吹き出し、舌がしびれるあの感覚、好きだけど。だから自分で作る麻婆豆腐とかにもガンガン入れてる。ただ山椒系、少し古くなるとあっという間に辛さが消えていくんだよねえ・・・。

 さて、汁なし担々麺。日本は汁あり担々麺だけど、本来本場の担々麺は「汁なし」らしいんだよね。

 日本で担々麺といえば「汁あり」になった元々は、日本に来た四川料理の料理人 陳健民氏(料理の鉄人 陳建一氏のお父さん。)が、日本人の好みに合うようにアレンジしたことが最初らしいよ。

 と、偉そうに書いてるけど、汁なし担々麺、実は俺、食べたことないんだよね。

 師のこの文章を読んで無性に食べたくなったよ。

 和え麺だから無駄な粘りを出さないために、かん水なしの麺で作るのが正解らしいから、今度久々に自分で中華麺を打って自作してみようかと思ってるよ。

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Unknown (熊猫)
2014-03-10 22:58:55
山椒を使う機会は、鰻の蒲焼を食べる程度だから、山椒を軽視していたことは否めないよ。

中華は偉大だな。香りもご馳走のひとつと捉えているんだね。そして、痺れという感覚も、料理の一部であることを身をもって知ったよ。

最近、よく使う中華の店で昼から酒を飲んだりしているんだが、「砂肝の炒め物」にはクミンが大量に入れられているんだ。
この香りがまた絶品なんだよ。

やっぱり、自分にとって中華最強説はありだな。

師の「汁なし坦々麺」作りのレポート、期待しているよ。
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クミン (ふらいんぐふりーまん)
2014-03-11 14:44:55
 
 中国料理は、南や西の地方に行くに従って、唐辛子以外のスパイス使用量が多くなる気がするね。香菜も良く使ってたりする。

 俺がパラの大会で行った河南省の林州というところで食べた、日本の焼き鳥のように羊の肉を一口サイズに切って串にさし、炭火で焼いた奴も、大量のクミンが使ってあって、非常に独特な香りを放っていたけど、ビールと最高にあって美味かったよ。

 ただこの料理は中国料理というより、イスラム圏からウイグル地方へと伝わった料理が、中国全土に広がっていったもののようだけど。

 しかし中国料理、東は韓国から海を渡って日本。そして西はシルクロードを通って遥かイタリアにまで伝わり、麺料理がパスタになったり、餃子から派生したラビオリになったり、現代では華僑が多く進出した東南アジアにおいて各国の食文化に大きな影響を与えたりと、美味いがゆえに世界中の食文化に大きな影響を与えてると思う。

 そしてあまり手間をかけなくても、美味いものを短時間で、それも中華鍋一つで作れるから、そういう事もまた素晴らしいと思うよ。

 さて、話変わって山椒だけど、京都人は山椒が好きらしい。確かに、季節ごとに山椒の若芽である「木の芽」だきとか、山椒の実ができたらちりめん山椒とか作って食べる。

 それにうどん屋などでは七味だけではなく山椒も置いてあるところが結構あって、京都人は丼ものとかうどんとかも、七味ではなく山椒をかける人が多いらしいよ。

 俺は京都人だけど断然七味派だから、そういう情報を見聞きするまで、あまり意識したことはなかったけどね。
 
 けどそういうと、京都の老舗の七味は山椒含有率が高い気もする。それに七味派の俺も、山椒の辛さには、昔から比較的慣れていたような気もするよ。やっぱ食べる機会が結構あったからだろうね。

 なんか書いてたら、鬼のように花椒と唐辛子が効いた激辛麻婆豆腐が食べたくなってきたなあ。

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Unknown (熊猫)
2014-03-11 21:02:25
なるほど。
香辛料もわびさびなんだろうね。

香りと感覚。
味わう気持ち。
食は本来、そうあるべきだと思う。

化調ではなく、ボクらが本来持っている味覚を通して、味わうことが大切だね。
食は旅だよ。
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