新橋のフェイバリットな立ち飲み屋をY澤さんと。図らずも立ち飲みの日が、このような評価を決する日になろうとは想像もしていなかったが、人に勧めたい立ち飲み屋という視点は自分にとっても新鮮な発見だった。
その1軒目「龍馬」を出て、次に思い浮かべた店は、ご存じ魚金グループの「活力金魚」だった。新鮮な魚貝を驚くべき価格で提供してくれる繁盛店。ここは絶対、Y澤さんは喜んでくれるだろうと踏んでいた。だが、残念ことに魚金グループは立ち飲みの日にエントリーをしていない。仕方なくこの日は店の前を通り過ぎることだけにしておいた。店の中を覗くと、案の定店は満員だった。
「龍馬」「活力金魚」はきれいな、いわゆる今風な店だが、わたしも、そして恐らくY澤さんも場末のディープな店が好みである。その好みに沿って考えた場合、ボクは新橋においてこの店をお勧めする。
立ち呑 こひなた」。
新橋駅前ビルの地下にある、新橋の底の底にあるような店だ。
闇市の視点で新橋ではニュー新橋ビルばかりが注目を集めるが、ボクは新橋駅前ビルもそれに勝るとも劣らないディープ空間であると思っている。
「こひなた」は2号館の地下、入口を入って、最も奥にある店だ。
大きな暖簾。黄ばんだ壁、そして酸いも甘いも経験してきただろうママさん。このシチュエーションに加え、訪れるお客もどこか脛に傷のあるような方(失礼)ばかりが集う。高度経済成長をイケイケで乗り切り、その惰性で今も生きているような、その余韻が感じられる。
チケットを出して、ボクらは「酎ハイ」と肴をもらった。
ボクは「かぼちゃ煮」、そしてY澤さんはたしかカウンターに盛られたおばんざいのうちの一品を頼んだ。
周囲の男どもは、大概がコップ酒を冷やであおっている。この店の客はまさに猛者だ。
肴は、煮物の他、「たてがみ」や「鯨刺し」といった珍味をそろえているところが、そこらの立ち飲み屋と違う。
昔は銀座で一旗揚げたと思しきママの他、以前はいなかった国籍不明の女性が甲斐甲斐しく働いている。
南アジアのアーリア系にも見えるが、中東の方にも見える。だが、一方では南米の方のようでもあり、国籍が不明だ。だが、一生懸命に働く姿に心打たれる。
Y澤さんも、「あの女性気になるね」とその彼女を目で追う。確かに気になるのだ。
「酎ハイ」をおかわりして、店を出た。
「ここ、いいね」とY澤さんも気に入ってくれた様子。
「龍馬」から「こひなた」へ、まるでジェットコースターのような新橋の立ち飲みの日はまだまだ続く。
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