東京で最も美人率の高い街が恵比寿だと思っている。
朝の出勤時に恵比寿駅の周囲を歩いてみると恐らく多くの人が同意するだろう。
おしゃれな店も多く、立ち飲み屋に限っていえば早い時期からバル化したのは恵比寿が先駆けだったように感じる。
その中で異彩を放っているのが「梅暦酒店」と「縄のれん」であろう。おしゃれな街に似合わないディープスロートな店である。
前者の場所は分かりやすく、既に訪問済みだが、後者はなかなか探し出せなかった。何度か訪問を試みたが、結局店を発見できずに断念したことは1度や2度ではない。
SニーのO塚さんから店の場所を教えてもらい、ようやく来店にこぎつけたのだった。
実際、縄のれんは店頭にはかかっていない.素通しの引き戸の向こうには古典的な立ち飲みの姿が見渡せる。
他を寄せつけない威厳は、名店立ち飲みのそれだ。
数々の立ち飲みを経験してきたが、この威厳と風格のオーラは並の店ではなく、一瞬店の引き戸を引くのを躊躇させてくれる。
少しの躊躇いのあと、店に入り、右手のカウンターに陣取ると実感が湧いてきた。
「ようやくここに辿りついた」と。
間髪いれずに瓶ビールをオヤジに注文した。
だが、案の定オヤジの反応はない。
案の定というのは、この威厳と風格の基になっているのが、オヤジの人柄ではないかと思ったからである。
お店というのは大抵その人のなりが表れる。その人の性格や姿勢、或いはその人が持つ文化などである。それは、店頭にもにじみ出てくるものと考えている。
「縄のれん」の圧力も相当なものだった。
聞こえているのか、或いは聞こえないふりをしているのか、分からなかったが、今度は調理場の奥にいるオヤジの奥さんと思しき婦人に「瓶ビール」と声をかけてみた。
すると、このおばちゃんも愛想のない素振りで「あいよ」と応えるのみだった。
ビールはもちろんサッポロだが、ヱビスではない。頑なな黒ラベルといった風情である。
完全無欠のもつ焼き屋。
メニューはそれしかない。
だが、「ちれ」や「ハツ下」「てっぽう」といったネタが並ぶ姿はやはり只者ではないと思わせるのである。
その珍しい部位をすかさず頼んでみた。だが、案の定オヤジからのレスポンスはない。
だが、聞こえている風ではあった。
ボクのオーダーを焼き台に乗せ始めたからである。
なんか言えよ、と思った。オーダーが受理されたか分からないぞ。
このオヤジなら親子ゲンカが絶えないのも不思議ではないと思った。
この「縄のれん」のもうひとつの名物にオヤジと息子の親子ゲンカがある。常連によるとこれも大切な「アトラクション」であるという。
だがこの日、くだんの息子はいなかった。
オヤジは単なる口下手な無口な男ではなかった。
ボクの右横に陣取る推定30代の女性にはフランクに話しかける。
目前に控えたお盆休みの話題である。
焼かれてきた「ちれ」「ハツ下」は見事だった。
自慢のオリジナルタレとのハーモニー。
オヤジのプライドの結晶。
「うまいよオヤジ!」
ボクは心の中でつぶやいた。
自分がこのオヤジの息子の立場だったら、やっぱりこの父親とはうまくやっていけないかもしれないと思った。
オヤジは完全に職人だった。
自分のオヤジを見ているようだった。
親子の葛藤。
この「縄のれん」の小宇宙でそのカオスは決して小さくない。
その葛藤を乗り越えられるのだろうか。
新しく改装した店で。
「縄のれん」はこの6月に改装のため、一時的に店を閉めた。
早期の再開を待っています。
朝の出勤時に恵比寿駅の周囲を歩いてみると恐らく多くの人が同意するだろう。
おしゃれな店も多く、立ち飲み屋に限っていえば早い時期からバル化したのは恵比寿が先駆けだったように感じる。
その中で異彩を放っているのが「梅暦酒店」と「縄のれん」であろう。おしゃれな街に似合わないディープスロートな店である。
前者の場所は分かりやすく、既に訪問済みだが、後者はなかなか探し出せなかった。何度か訪問を試みたが、結局店を発見できずに断念したことは1度や2度ではない。
SニーのO塚さんから店の場所を教えてもらい、ようやく来店にこぎつけたのだった。
実際、縄のれんは店頭にはかかっていない.素通しの引き戸の向こうには古典的な立ち飲みの姿が見渡せる。
他を寄せつけない威厳は、名店立ち飲みのそれだ。
数々の立ち飲みを経験してきたが、この威厳と風格のオーラは並の店ではなく、一瞬店の引き戸を引くのを躊躇させてくれる。
少しの躊躇いのあと、店に入り、右手のカウンターに陣取ると実感が湧いてきた。
「ようやくここに辿りついた」と。
間髪いれずに瓶ビールをオヤジに注文した。
だが、案の定オヤジの反応はない。
案の定というのは、この威厳と風格の基になっているのが、オヤジの人柄ではないかと思ったからである。
お店というのは大抵その人のなりが表れる。その人の性格や姿勢、或いはその人が持つ文化などである。それは、店頭にもにじみ出てくるものと考えている。
「縄のれん」の圧力も相当なものだった。
聞こえているのか、或いは聞こえないふりをしているのか、分からなかったが、今度は調理場の奥にいるオヤジの奥さんと思しき婦人に「瓶ビール」と声をかけてみた。
すると、このおばちゃんも愛想のない素振りで「あいよ」と応えるのみだった。
ビールはもちろんサッポロだが、ヱビスではない。頑なな黒ラベルといった風情である。
完全無欠のもつ焼き屋。
メニューはそれしかない。
だが、「ちれ」や「ハツ下」「てっぽう」といったネタが並ぶ姿はやはり只者ではないと思わせるのである。
その珍しい部位をすかさず頼んでみた。だが、案の定オヤジからのレスポンスはない。
だが、聞こえている風ではあった。
ボクのオーダーを焼き台に乗せ始めたからである。
なんか言えよ、と思った。オーダーが受理されたか分からないぞ。
このオヤジなら親子ゲンカが絶えないのも不思議ではないと思った。
この「縄のれん」のもうひとつの名物にオヤジと息子の親子ゲンカがある。常連によるとこれも大切な「アトラクション」であるという。
だがこの日、くだんの息子はいなかった。
オヤジは単なる口下手な無口な男ではなかった。
ボクの右横に陣取る推定30代の女性にはフランクに話しかける。
目前に控えたお盆休みの話題である。
焼かれてきた「ちれ」「ハツ下」は見事だった。
自慢のオリジナルタレとのハーモニー。
オヤジのプライドの結晶。
「うまいよオヤジ!」
ボクは心の中でつぶやいた。
自分がこのオヤジの息子の立場だったら、やっぱりこの父親とはうまくやっていけないかもしれないと思った。
オヤジは完全に職人だった。
自分のオヤジを見ているようだった。
親子の葛藤。
この「縄のれん」の小宇宙でそのカオスは決して小さくない。
その葛藤を乗り越えられるのだろうか。
新しく改装した店で。
「縄のれん」はこの6月に改装のため、一時的に店を閉めた。
早期の再開を待っています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます