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幸いなことに叔母の容体は回復に向かっていた。
見舞いに行った帰り道、ボクは「やきとり倶楽部」に足を向けた。
S柳さんが「鳥樹」の次にうまい店として教えてくれたのが「焼き鳥倶楽部」だった。
その噂通り、やはりこの店もただものではなかった。
まず、ビールのラインナップにバスペールエールの樽生が用意されていた。
何故にバスペールなのか。
時々、焼鳥屋でみかけるホップの強いビールは、正直、焼鳥の味を打ち消しているとボクは常々思っていた。
焼き鳥にはコクが強くて、それでいてすっきりのビールが合うのだろうと。
日本のビールはだいたいクリアな味なのだが、コクはない。
クリアとコクは両立しないのだろうか。
だが、この店に来てみて、バスペールを頼み、その味わいに深い納得感を覚えた。
クリアとコクが見事に両立している。
上面発酵のおかげか、ライト系ではありながらもコクが見事である。
まさか、このテイストとの相性を考えて仕入れたのかそれは分からないが、多分焼き鳥にバスペールが合うと判断した賜物なのだろうと思う。
断然、焼き鳥にマッチしている。
素晴らしい。
しかも、そのバスペールだが、陶器のビアマグに入れられて出てきた。
陶器のビアマグは泡をおいしくさせるというから、これは最高のビールコンディションで出されたものだといっていい。
焼き鳥の素材もさることながら、塩、タレの味付けにも凝っている。
沖縄の海より産出された塩。加えて、焼き鳥にかけるガーリックパウダー、甘辛の味噌も完備しているという徹底ぶり。
焼き鳥に関するあらゆるいいことがぎっしりと詰め込まれている。
「ねぎま」が1本120円。
「豚バラ」が150円。
決して安くはないが、このセッティングの状況から鑑みれば、安価な部類に入るだろう。
店の雰囲気もいい。
若い店長の感性がそのまま客にダイレクトに伝わってくる。
ちょっと気取りすぎている感もあるが、それは決して嫌味ではない。
大衆性のテイストも感じさせており、老若男女に受け入れられているのが分かる。
もう少し、身が大きければいいのに。
個人的はそう思うが、このこだわりぶりはぎりぎりのところなのだろう。
「鳥樹」に行くか、それとも「やきとり倶楽部」に行くか。
ここは悩ましいことになってきた。
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