
JR王子駅を出て北へ向かう。
思えば、この旅に出たのは06年の晩秋。「北北西に進路を取れ」というケイリー・グラント主演、アルフレッド・ヒチコック監督の名画から頂戴した作戦名を引っ提げ、ライフワーク「立ち飲みラリー」の京浜東北線・南北線編をスタートさせたのである。
それから約1年8ヶ月、とうとう7月10日、最終地点である「王子神谷駅」を目指して王子駅を出発した。
北区に住居を移してはや3年足らず。何度、王子神谷駅と王子駅を往復したことだろう。残念ながら、この道のりに「立ち飲み屋」を探すことは未だにできていない。
それどころか、王子神谷駅周辺にも、そうしたスタイルの酒場は存在しない。わたしは、この3年間、けっこうくまなくこの界隈を歩いて回った。だが、1軒も「立ち飲み屋」はなかった。
数年前、娘が高熱を出した際、北区赤羽にある救急病院にタクシーを走らせた時、その車中でわたしは「立ち飲み屋」を見たような気がした。一瞬の出来事だったが、そこは確か立ち飲み屋だったと思う。
だが、娘の熱が40.9度という考えられない状況にあって、もはやそれどころではなかった。
後日、その近辺を散策したが、ついにその立ち飲み屋を発見することができなかったのである。
そんなわけで、王子神谷駅近辺に、立ち飲み屋はない。
最も、駅に近い立ち飲み屋を目指し歩いたのである。
そこは、JR東十条駅東口そば。
昼間は喫茶店。夜に立ち飲み屋に変身する、まるでプロントのような店。「立飲みタイム いーぐる」だ。
だが、実際の店はプロントのように洒落たところではない。
10坪に満たない客席は、やや埃っぽい。店舗には、焼き鳥を焼くコーナーが併設されており、持ち帰り用の焼き鳥も扱っているし、それらを店内で食べることも可能だ。
オレが店内に入ったのは、まだ時計の針が20時を指す少し前だったと思う。
システムがよく分からなかったので、カウンターに行って、とりあえず注文をした。
「生ビールと・・・」
とオレが言った瞬間、ものすごい速さで、店のおばちゃんは、「ビール売り切れました」と豪快な顔とその声で容赦なくもオレに告げるのだった。
「え?」
まだ8時前だぜ。
しかも、客はオレの他に2グループの計4人。この状況でビールが売り切れるとは到底思えない。
それとも、ものすごいビール好きの男がたらふく飲んでいってしまったのか。それとも、店側仕入れに手違いがあったのか。
しかし、まだ8時を回る前にビールが売り切れになる居酒屋なんて、聞いたこともない。
そこで仕方なく、オレは焼酎炭酸割りと注意書きが書かれた酎ハイ(250円)を貰うことにした。
一応、平然とオーダーをしたが、おおいに不満だった。まず、口を湿らせるのにビールが飲めないなんて、とんでもない!っていう感じだ。
お店の支払いシステムはチケット制。1,050円のチケットをまずはじめに購入する。チケットは100円券が10枚と50円券のつづりになっている。料金は1,050円きっかりだ。普通、1,000円で50円サービス、というケースが主流だが、ここかきっかりとられた。
カウンターで注文をし、その都度チケットを払う仕組み。飲み物はすぐ用意してくれるが、つまみなどは、用意出来次第、おばちゃんが声をかけてくれるようになっているようだ。
店内は荒涼としていた。どこか、埃っぽく何かテーブルがばっちぃような気がする。
昼間は喫茶店、夜に立ち飲みに様変わりする店は、始終お客が回転しているのだろう。タバコなどのヤニがべったりとくっついているようだった。
さて、つまみにはニンニク串とヤゲン串(2本で300円)をもらった。前者はニンニクともも肉、後者はなんこつともも肉である。
同店は焼き鳥がメインメニューであり、お手並み拝見といったところだったが、とりたてて、『これは!』というものでもなかった。
むしろ、この界隈の焼き鳥の相場から見てむしろ高いのではないかとすら感じる。
東十条商店街、神谷寄りの持ち帰り専門の焼き鳥屋は、10円~30円ほど安いし、少し離れているが、豊島の『スギショー』は大体の焼き鳥が100円だ。
「焼き鳥が出来上がりました」
という声でカウンターに行くと、若い女性がカウンターの向こうに座っていた。このお店の娘さんなのか、まだティーン(死語?)のように見える。恐らく、まだ遊びたい盛りなのだろう。彼女は店番中、ずっとケータイを握り締め、素早い指さばきでメールを打つのだった。
この店を唯一褒めるとすれば、ホッピーセットの安さだろう。
ホッピーセットが300円。中身はなんと100円という安さなのだ。
これは、我らがホッピー研究会が発足し、様々な居酒屋を歩き研究を重ねてきて以来、最安の中味ではないかと思われる。だが、ジョッキで注がれた中味なのにも関わらず、すぐ飲み干してしまう、ということは、やはりその分中身が少ないってことなのだろう。世の中にうまい話しなんて本当にないのかもしれない。
中味をお代わりしながら、最後に「たこやき5個入り」(200円)を貰うことにした。
「これもやけに安いナ」と思っていたら、注文後、カウンターの奥から電子レンジの動く音がしはじめた。
なんてことはない。
「チン」なのである。
しかし、久々にテレビのない立ち飲み屋に来た(久々と言っても、その3日前に行った「平澤かまぼこ」以来なんだけれど)。
BGMは、クロスオーバー。だが、店のおばちゃんの趣味で流しているとは到底思えないのだが、そのアンバランスが、また店を一団と荒野を思わせるのかもしれない。
この店の近くには演歌専門のレコード屋として有名な「ミュージックショップ ダン」があり、(アド街の11位)、できれば、それにあやかり演歌などを流すと、非常にムーディな立ち飲み屋になるのではないかと思った次第である。
さて、これで一連の「立ち飲みラリー・京浜東北線・南北線」が終了した。
最後は、ほとんど王子神谷のエリアでなく、苦しい結末を迎えたが、一応会社から自宅までの駅間を全て徒歩で踏破したのだ。
そして、また新たな旅立ちがどうやら待っているようだ。
戦士(誰が戦士やねん)に休息はないようである。
思えば、この旅に出たのは06年の晩秋。「北北西に進路を取れ」というケイリー・グラント主演、アルフレッド・ヒチコック監督の名画から頂戴した作戦名を引っ提げ、ライフワーク「立ち飲みラリー」の京浜東北線・南北線編をスタートさせたのである。
それから約1年8ヶ月、とうとう7月10日、最終地点である「王子神谷駅」を目指して王子駅を出発した。
北区に住居を移してはや3年足らず。何度、王子神谷駅と王子駅を往復したことだろう。残念ながら、この道のりに「立ち飲み屋」を探すことは未だにできていない。
それどころか、王子神谷駅周辺にも、そうしたスタイルの酒場は存在しない。わたしは、この3年間、けっこうくまなくこの界隈を歩いて回った。だが、1軒も「立ち飲み屋」はなかった。
数年前、娘が高熱を出した際、北区赤羽にある救急病院にタクシーを走らせた時、その車中でわたしは「立ち飲み屋」を見たような気がした。一瞬の出来事だったが、そこは確か立ち飲み屋だったと思う。
だが、娘の熱が40.9度という考えられない状況にあって、もはやそれどころではなかった。
後日、その近辺を散策したが、ついにその立ち飲み屋を発見することができなかったのである。
そんなわけで、王子神谷駅近辺に、立ち飲み屋はない。
最も、駅に近い立ち飲み屋を目指し歩いたのである。
そこは、JR東十条駅東口そば。
昼間は喫茶店。夜に立ち飲み屋に変身する、まるでプロントのような店。「立飲みタイム いーぐる」だ。
だが、実際の店はプロントのように洒落たところではない。
10坪に満たない客席は、やや埃っぽい。店舗には、焼き鳥を焼くコーナーが併設されており、持ち帰り用の焼き鳥も扱っているし、それらを店内で食べることも可能だ。
オレが店内に入ったのは、まだ時計の針が20時を指す少し前だったと思う。
システムがよく分からなかったので、カウンターに行って、とりあえず注文をした。
「生ビールと・・・」
とオレが言った瞬間、ものすごい速さで、店のおばちゃんは、「ビール売り切れました」と豪快な顔とその声で容赦なくもオレに告げるのだった。
「え?」
まだ8時前だぜ。
しかも、客はオレの他に2グループの計4人。この状況でビールが売り切れるとは到底思えない。
それとも、ものすごいビール好きの男がたらふく飲んでいってしまったのか。それとも、店側仕入れに手違いがあったのか。
しかし、まだ8時を回る前にビールが売り切れになる居酒屋なんて、聞いたこともない。
そこで仕方なく、オレは焼酎炭酸割りと注意書きが書かれた酎ハイ(250円)を貰うことにした。
一応、平然とオーダーをしたが、おおいに不満だった。まず、口を湿らせるのにビールが飲めないなんて、とんでもない!っていう感じだ。
お店の支払いシステムはチケット制。1,050円のチケットをまずはじめに購入する。チケットは100円券が10枚と50円券のつづりになっている。料金は1,050円きっかりだ。普通、1,000円で50円サービス、というケースが主流だが、ここかきっかりとられた。
カウンターで注文をし、その都度チケットを払う仕組み。飲み物はすぐ用意してくれるが、つまみなどは、用意出来次第、おばちゃんが声をかけてくれるようになっているようだ。
店内は荒涼としていた。どこか、埃っぽく何かテーブルがばっちぃような気がする。
昼間は喫茶店、夜に立ち飲みに様変わりする店は、始終お客が回転しているのだろう。タバコなどのヤニがべったりとくっついているようだった。
さて、つまみにはニンニク串とヤゲン串(2本で300円)をもらった。前者はニンニクともも肉、後者はなんこつともも肉である。
同店は焼き鳥がメインメニューであり、お手並み拝見といったところだったが、とりたてて、『これは!』というものでもなかった。
むしろ、この界隈の焼き鳥の相場から見てむしろ高いのではないかとすら感じる。
東十条商店街、神谷寄りの持ち帰り専門の焼き鳥屋は、10円~30円ほど安いし、少し離れているが、豊島の『スギショー』は大体の焼き鳥が100円だ。
「焼き鳥が出来上がりました」
という声でカウンターに行くと、若い女性がカウンターの向こうに座っていた。このお店の娘さんなのか、まだティーン(死語?)のように見える。恐らく、まだ遊びたい盛りなのだろう。彼女は店番中、ずっとケータイを握り締め、素早い指さばきでメールを打つのだった。
この店を唯一褒めるとすれば、ホッピーセットの安さだろう。
ホッピーセットが300円。中身はなんと100円という安さなのだ。
これは、我らがホッピー研究会が発足し、様々な居酒屋を歩き研究を重ねてきて以来、最安の中味ではないかと思われる。だが、ジョッキで注がれた中味なのにも関わらず、すぐ飲み干してしまう、ということは、やはりその分中身が少ないってことなのだろう。世の中にうまい話しなんて本当にないのかもしれない。
中味をお代わりしながら、最後に「たこやき5個入り」(200円)を貰うことにした。
「これもやけに安いナ」と思っていたら、注文後、カウンターの奥から電子レンジの動く音がしはじめた。
なんてことはない。
「チン」なのである。
しかし、久々にテレビのない立ち飲み屋に来た(久々と言っても、その3日前に行った「平澤かまぼこ」以来なんだけれど)。
BGMは、クロスオーバー。だが、店のおばちゃんの趣味で流しているとは到底思えないのだが、そのアンバランスが、また店を一団と荒野を思わせるのかもしれない。
この店の近くには演歌専門のレコード屋として有名な「ミュージックショップ ダン」があり、(アド街の11位)、できれば、それにあやかり演歌などを流すと、非常にムーディな立ち飲み屋になるのではないかと思った次第である。
さて、これで一連の「立ち飲みラリー・京浜東北線・南北線」が終了した。
最後は、ほとんど王子神谷のエリアでなく、苦しい結末を迎えたが、一応会社から自宅までの駅間を全て徒歩で踏破したのだ。
そして、また新たな旅立ちがどうやら待っているようだ。
戦士(誰が戦士やねん)に休息はないようである。
お店に入って、『ビールは売り切れました』って言われたら、どれだけがっかりするか。
北区の居酒屋は、何かとハプニングが起きています。
「売り切れたんじゃなくて、仕入れ忘れたんでしょ」
ってツッコみたいです。
そんな豪快に言われたら、こっちも強気に。
ケンカ売ってるワケじゃないけど、不満はもらしてナンボです!!
ユルセーン!!
でも、言わずにはいられないんです!
あぁ、健やかな気持ちで飲みたい。
そんな状況です。
でも、まき子さんからも同調して頂けたんで、少し憂さははれました。